ワーカホリックな彼の秘密

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第34話

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「そんな上目遣いで許して欲しそうに俺を見ないの」

 苦情を述べようと顔を上げ掛けると、髪を梳いていた神巫の手に不意に力が込められる。

「……うぅ!」
「ダ~メ。…柊一サンがやるって言いだしたんだから、最後まで面倒見てくださいね」

 神巫はニッコリと悪魔チックな笑みを浮かべて見せた。

「さぁ、頑張ってください。歯を立てないように、もっと喉の奥まで迎え入れて……」

 呼吸が上手く出来ずに、苦しさで自然と涙が滲んだ。

「どうしよう、柊一サン。……俺、アナタのそういう顔みると、ものすごくムショーにコーフンしちゃうんですよね」

 目を眇め、神巫はうっとりと涙ぐんでいる柊一の顔を眺め降ろした。
 そして言葉通り、柊一の髪を掴んで口腔内を犯し始める。

「…んぐ………」
「そうそう、その調子で…」

 どうあっても勘弁してくれる気はないらしい神巫の様子を窺い見て、柊一は覚悟を決めた。
 口腔内の神巫は、ジワジワとその質量を増しますます呼吸は苦しくなる。

「柊一サン……その顔スゴクそそりますね」

 一体どんな顔でそんな譫言のような台詞が吐けるのかと、柊一が目線を上げ掛けた時。
 再び神巫の手に、柊一の動きを遮るような力が込められた。

「………っ!」

 いきなり喉の奥に注ぎ込まれた液体に、柊一は噎せ返る。

「ば………かっ……やろ………っ!」
「ええ? イケマセンでした?」
「当たり前だっ!」
「だって、自分から俺に奉仕してくれようとしたぐらいなんだから、判っててやってたんじゃないんです?」

 ニイッと笑う神巫は、完全に確信犯の顔でペロッとそんな事を言う。
 柊一は言葉に詰まって、神巫の顔を睨みつけた。

「……突然やられたら、噎せるだろ……」
「だって、警告したら振りほどかれちゃうでしょ?」
「そう思うなら、やるな!」
「だって俺、柊一サンに飲んで欲しかったんだもん」
「不衛生だろ!」
「大丈夫ですよ。俺、ちゃんと医者に行って検査受けてますから」
「そういう問題じゃない!」

 なおも食い下がる柊一に、神巫は両腕を伸ばすと柊一の身体を強引に抱き上げて、そのまま一緒にベッドに倒れ込む。

「どうしましょう? 柊一サン。俺、柊一サンの怒ってる顔と困ってる顔が1番そそられるかもしれない」
「バカなコト言ってないでどけっ! 重い!」
「ダ~メ。だって、夜はこれからだもん」

 神巫はテーブルの上に放り出してあった蛍光灯のリモコンを手に取ると、部屋の灯りを消し去った。

「嵐の夜に、2人で抱き合ってるなんて。スッゲーロマンチックじゃないですか?」
「………オマエみたいな脳天気、俺は今まで見た事もない」

 溜息混じりにそう答えたけれど。
 しかし、この神巫の明るさに今夜は助けられたな…と柊一は思った。
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