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第20話
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勤め始めた頃は、渡された仕事をこなすのが精一杯だった。
学校や、それ以外の場所でそれなりに技術を磨き、知識もあると思っていたが、実際に仕事を始めたらそんなモノは基礎の基礎でしかない事を思い知らされた。
研修を終えて、とりあえず「足手まとい」にならない程度にはなったが、まだまだ学ぶべき部分は多い。
そうした意味でも、神巫的には先輩諸氏の作ったプログラムをつぶさに見たいと思っている。
そのテクニックを見る事で技術を盗み取り、1歩でも多く近づきたいと思うからだ。
別にそれらのプログラムは絶対秘になっていて、平素閲覧出来ない…とか言う事は無いが。
しかし、やはり仕事としてチェックをしている時と、ただ閲覧をしているだけの時では、気合いの入り方もおのずと違ってくる。
だが、駆け出しの神巫には動作確認の仕事など滅多に回っては来ない。
検品作業である動作確認は、バグが外部に漏れ出さないように水際で食い止める最後のボーダーラインであるから、やはり「経験の浅い新人」になど滅多に回してもらえない仕事…というワケなのだ。
反面、それを回して貰えるようになれば、それなりに信頼度が上がった証拠にもなるのだが。
だからこそ、今回(全権を任されなかったものの)リメイクの仕事でメインプログラマーになれた事は、神巫にとって無上の喜びだと言っていい。
神巫にとっては人生を変えたと言っても過言ではないゲームのプログラムを隅々まで検証しながら、リメイクの為にそれを構築し直す作業は、苦労を感じる筈もない。
プログラムのひとつひとつを丹念に辿り、新システムへの書き換えを続けながら、神巫は柊一の才能に感嘆していた。
ふと隣席に目をやると、柊一は真剣な眼差しでディスプレイを見つめている。
ものすごい集中力から生まれる、他人を寄せ付けない厳しい横顔。
時折チラッと手元を見やるが、基本的にはディスプレイに視線を注いだまま、キーボードを叩いている。
仕事をしている時の柊一は、とても美しいと神巫はいつも思っていた。
それは柊一の相貌が美麗である…と言うのは別に、仕事に取り組む熱意から生まれる情熱の美しさ。
神巫は柊一に告白した通り、ゲームのエンディングで見た『Shuichi Sinonome』という名前に憧れてこの業界に入り、心に決めた通りこの会社に就職を決めた。
配属された当初は、青山の言う通りあまりの「ワーカホリック」ぶりに愕然となったが、それがなければあのプログラムは生まれなかったのだとひたすら関心もした。
しかし……。
実のところ柊一のワーカホリックが、柊一の特殊な体質に起因している事に最近になって気付いた。
確かに熱烈なプログラミングへの情熱が、柊一を仕事にのめり込ませているのは確かだが。
己の身体を、己の存在すらも否定するような。
一種の「投げ遣り」じみた行動の一端を、無茶な残業が担っているような。
そんな印象を持ったのだ。
学校や、それ以外の場所でそれなりに技術を磨き、知識もあると思っていたが、実際に仕事を始めたらそんなモノは基礎の基礎でしかない事を思い知らされた。
研修を終えて、とりあえず「足手まとい」にならない程度にはなったが、まだまだ学ぶべき部分は多い。
そうした意味でも、神巫的には先輩諸氏の作ったプログラムをつぶさに見たいと思っている。
そのテクニックを見る事で技術を盗み取り、1歩でも多く近づきたいと思うからだ。
別にそれらのプログラムは絶対秘になっていて、平素閲覧出来ない…とか言う事は無いが。
しかし、やはり仕事としてチェックをしている時と、ただ閲覧をしているだけの時では、気合いの入り方もおのずと違ってくる。
だが、駆け出しの神巫には動作確認の仕事など滅多に回っては来ない。
検品作業である動作確認は、バグが外部に漏れ出さないように水際で食い止める最後のボーダーラインであるから、やはり「経験の浅い新人」になど滅多に回してもらえない仕事…というワケなのだ。
反面、それを回して貰えるようになれば、それなりに信頼度が上がった証拠にもなるのだが。
だからこそ、今回(全権を任されなかったものの)リメイクの仕事でメインプログラマーになれた事は、神巫にとって無上の喜びだと言っていい。
神巫にとっては人生を変えたと言っても過言ではないゲームのプログラムを隅々まで検証しながら、リメイクの為にそれを構築し直す作業は、苦労を感じる筈もない。
プログラムのひとつひとつを丹念に辿り、新システムへの書き換えを続けながら、神巫は柊一の才能に感嘆していた。
ふと隣席に目をやると、柊一は真剣な眼差しでディスプレイを見つめている。
ものすごい集中力から生まれる、他人を寄せ付けない厳しい横顔。
時折チラッと手元を見やるが、基本的にはディスプレイに視線を注いだまま、キーボードを叩いている。
仕事をしている時の柊一は、とても美しいと神巫はいつも思っていた。
それは柊一の相貌が美麗である…と言うのは別に、仕事に取り組む熱意から生まれる情熱の美しさ。
神巫は柊一に告白した通り、ゲームのエンディングで見た『Shuichi Sinonome』という名前に憧れてこの業界に入り、心に決めた通りこの会社に就職を決めた。
配属された当初は、青山の言う通りあまりの「ワーカホリック」ぶりに愕然となったが、それがなければあのプログラムは生まれなかったのだとひたすら関心もした。
しかし……。
実のところ柊一のワーカホリックが、柊一の特殊な体質に起因している事に最近になって気付いた。
確かに熱烈なプログラミングへの情熱が、柊一を仕事にのめり込ませているのは確かだが。
己の身体を、己の存在すらも否定するような。
一種の「投げ遣り」じみた行動の一端を、無茶な残業が担っているような。
そんな印象を持ったのだ。
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