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第14話
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「おいっ! よせってっ!」
「イヤです。俺、やっぱり東雲サンと付き合いたいですッ!」
「だから、俺は…」
「だってそれは、東雲サンの都合でしょう? なら、俺の都合ともバッチリ合うから、是非とも俺を側に置いてくださいっ!」
「神巫の都合?」
「はいっ!」
神巫は柊一をベッドの縁に座らせると、自分もその隣に腰を降ろした。
「俺、ホントのコト言うと東雲サンにずっと憧れてたんです」
「ずっと?」
「学校を出た時、就職するならココって決めてました。俺、ずっと東雲サンに逢いたかったんです」
「は?」
「東雲サンがあの会社を立ち上げて、初めて出したゲームソフト。今リメイクする為に俺がプログラムを見せて頂いているアレをプレイした時、俺まだガキでしたけどスッゴイ感動しました。だから俺、大人になったら絶対このソフトを作ったヒトに逢って、それで俺も一緒になってゲーム作ろうって決めたンす」
「オマエ、それ変だぞ? 大体、ゲームに感動したんなら憧れるのは俺じゃなくて、レンにじゃないのか?」
「はい、最初は多聞サンのシナリオに感動したんだって、思ってたンすケド。少し考えたら、そうじゃないってコトに気付きました。確かに多聞サンのシナリオは素晴らしかったです。でもあのシナリオに感動出来たのはしっかり作り込まれているシステムの成果の方が大きいと俺は思うんです。だから俺は『Syuichi Shinonome』ってクレジットの名前のヒトを、ずっと尊敬して敬愛してました」
「なんかそれ、違うと思うが……」
「違いませんよ! レベルが上がるタイミングや、ダンジョンまでの距離とか、何回プレイしても飽きが来ないしやりこみたくなるし。それに今回プログラムを見せて頂いて改めてその凄さを実感しました! 俺、入社する時に製作部志望して。最初に東雲サンに逢った時、すっごく嬉しかったけど、でもあんまり綺麗なヒトが出てきたんでビックリして。……あの時、たぶん俺は一目惚れしました」
「言ってるコト、メチャクチャだよオマエ……」
「なにがメチャクチャなモンですか。俺、ホントに一目惚れしちゃって、今誰も付き合っている相手がいないのは、東雲サンの所為なんですよ?」
「そ…れは、悪かったな…」
勢いに押されて思わず謝ってしまったが、しかし少し考えたら謝る筋もない。
「東雲サンが謝る必要はありませんってば」
思っていた事をあろう事か神巫に指摘されて、柊一は思わず顔を赤らめる。
その柊一の様子に、神巫は酷く嬉しそうに笑った。
「ホントに東雲サンって可愛いヒトですね。…仕事している時と、プライベートの時と、あんまりギャップがあるんで最初はスッゴク戸惑いましたけど……。でもそれが全部スゴク魅力的で、俺、ますます東雲サンに夢中になっちゃいました」
顔を寄せられくちづけを求められた瞬間、咄嗟に顔を背けて拒む。
しかし一瞬の後に神巫を傷つけてしまったかとハッとなって慌てて振り返ると、神巫はただ少し寂しそうに笑っていただけだった。
「俺……やっぱり秘密を共有させてもらえませんか?」
「違う。オマエが良いとか悪いとかじゃなくて、そんな風に言われても俺は困るんだ。………アレは、先刻も言ったように発作みたいなモノで、要するに一種の治りようがない病気みたいなモノだから、そんなコトに他人を付き合わせるようなワケにはいかないし、させたくないんだ」
「じゃあ俺は、東雲サンのストーカーになって、発作の機会を狙い続けます」
「なんだって?」
「だって、東雲サンは病気だ異常だって言うけど、性的な欲求なんて誰にでもあるでしょう? それが強いか弱いかの差しかないんだし。東雲サンみたいに自分の中の衝動を常に抑え込んでたら、どっかで歪みが出るの当たり前じゃないですか。人間だって動物なんだし、性欲が全く無いヒトなんていないンだから」
神巫の言葉に、柊一にはもう申し出を断る為の言葉が出てこなかった。
溜息を吐いて目を伏せた柊一に対して、神巫は勝利を勝ち取った笑みを浮かべる。
「あんなに魅力的な発作なら、俺はいつでもお付き合いしたいですから。あ、それじゃこうしましょうよ。とりあえず俺と付き合ってみて、東雲サンが納得出来なかったらリコールするっての。どうですか?」
「リコール?」
「リコールがダメなら、研修期間でも良いです。お試しでしばらく様子見て、俺と付き合う事で東雲サンの抑圧が少しでも軽減するならそれに越したコト無いじゃないですか。逆にストレスが増した…って言うなら、俺は未練たらたらですけど仕方ないですから」
「…好きにしろ…」
「後悔させませんよ」
微笑みを浮かべ、神巫は柊一のこめかみに口唇を押し当てた。
「イヤです。俺、やっぱり東雲サンと付き合いたいですッ!」
「だから、俺は…」
「だってそれは、東雲サンの都合でしょう? なら、俺の都合ともバッチリ合うから、是非とも俺を側に置いてくださいっ!」
「神巫の都合?」
「はいっ!」
神巫は柊一をベッドの縁に座らせると、自分もその隣に腰を降ろした。
「俺、ホントのコト言うと東雲サンにずっと憧れてたんです」
「ずっと?」
「学校を出た時、就職するならココって決めてました。俺、ずっと東雲サンに逢いたかったんです」
「は?」
「東雲サンがあの会社を立ち上げて、初めて出したゲームソフト。今リメイクする為に俺がプログラムを見せて頂いているアレをプレイした時、俺まだガキでしたけどスッゴイ感動しました。だから俺、大人になったら絶対このソフトを作ったヒトに逢って、それで俺も一緒になってゲーム作ろうって決めたンす」
「オマエ、それ変だぞ? 大体、ゲームに感動したんなら憧れるのは俺じゃなくて、レンにじゃないのか?」
「はい、最初は多聞サンのシナリオに感動したんだって、思ってたンすケド。少し考えたら、そうじゃないってコトに気付きました。確かに多聞サンのシナリオは素晴らしかったです。でもあのシナリオに感動出来たのはしっかり作り込まれているシステムの成果の方が大きいと俺は思うんです。だから俺は『Syuichi Shinonome』ってクレジットの名前のヒトを、ずっと尊敬して敬愛してました」
「なんかそれ、違うと思うが……」
「違いませんよ! レベルが上がるタイミングや、ダンジョンまでの距離とか、何回プレイしても飽きが来ないしやりこみたくなるし。それに今回プログラムを見せて頂いて改めてその凄さを実感しました! 俺、入社する時に製作部志望して。最初に東雲サンに逢った時、すっごく嬉しかったけど、でもあんまり綺麗なヒトが出てきたんでビックリして。……あの時、たぶん俺は一目惚れしました」
「言ってるコト、メチャクチャだよオマエ……」
「なにがメチャクチャなモンですか。俺、ホントに一目惚れしちゃって、今誰も付き合っている相手がいないのは、東雲サンの所為なんですよ?」
「そ…れは、悪かったな…」
勢いに押されて思わず謝ってしまったが、しかし少し考えたら謝る筋もない。
「東雲サンが謝る必要はありませんってば」
思っていた事をあろう事か神巫に指摘されて、柊一は思わず顔を赤らめる。
その柊一の様子に、神巫は酷く嬉しそうに笑った。
「ホントに東雲サンって可愛いヒトですね。…仕事している時と、プライベートの時と、あんまりギャップがあるんで最初はスッゴク戸惑いましたけど……。でもそれが全部スゴク魅力的で、俺、ますます東雲サンに夢中になっちゃいました」
顔を寄せられくちづけを求められた瞬間、咄嗟に顔を背けて拒む。
しかし一瞬の後に神巫を傷つけてしまったかとハッとなって慌てて振り返ると、神巫はただ少し寂しそうに笑っていただけだった。
「俺……やっぱり秘密を共有させてもらえませんか?」
「違う。オマエが良いとか悪いとかじゃなくて、そんな風に言われても俺は困るんだ。………アレは、先刻も言ったように発作みたいなモノで、要するに一種の治りようがない病気みたいなモノだから、そんなコトに他人を付き合わせるようなワケにはいかないし、させたくないんだ」
「じゃあ俺は、東雲サンのストーカーになって、発作の機会を狙い続けます」
「なんだって?」
「だって、東雲サンは病気だ異常だって言うけど、性的な欲求なんて誰にでもあるでしょう? それが強いか弱いかの差しかないんだし。東雲サンみたいに自分の中の衝動を常に抑え込んでたら、どっかで歪みが出るの当たり前じゃないですか。人間だって動物なんだし、性欲が全く無いヒトなんていないンだから」
神巫の言葉に、柊一にはもう申し出を断る為の言葉が出てこなかった。
溜息を吐いて目を伏せた柊一に対して、神巫は勝利を勝ち取った笑みを浮かべる。
「あんなに魅力的な発作なら、俺はいつでもお付き合いしたいですから。あ、それじゃこうしましょうよ。とりあえず俺と付き合ってみて、東雲サンが納得出来なかったらリコールするっての。どうですか?」
「リコール?」
「リコールがダメなら、研修期間でも良いです。お試しでしばらく様子見て、俺と付き合う事で東雲サンの抑圧が少しでも軽減するならそれに越したコト無いじゃないですか。逆にストレスが増した…って言うなら、俺は未練たらたらですけど仕方ないですから」
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「後悔させませんよ」
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