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(6)体育祭
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連日の不安定な天気が嘘のように空は晴れていた。夜中にほんの数時間だけ降った雨が地面を湿らせてはいたけれど競技を行うのに支障はなかった。むしろ空気が洗われたことで心地よい風が吹き、絶好の体育祭日和だった。
日差しの眩しさに目を細める余裕も、この場にいない朝見のことを話題にすることもプログラムが進むにつれ、なくなっていった。グラウンドにいる全員が目の前の競技に集中し、高まっていく空気に飲み込まれていく。
何もかも忘れて俺もその熱の中に入ってしまえたなら、どんなによかっただろう。
クラスメイトと同じように声を出していても、エントリーしている競技をいくつこなしても朝見の不在を意識せずにはいられない。「見に行くね」なんて一言も言われてはいないのに。いつの間にか当たり前に、見に来るのだと思っていた。俺が「イヤだ」と言っても「来るな」と言っても「遼平が走るのに? コーチの僕が見に行かないでどうするの?」とあっさり笑って返してくるのだと、そう思っていた。
――どうして、ここに朝見はいないのだろう?
自分から口にすることはできない。できないからこそ胸の奥で燻り続けてしまう。ほんの一か月前まではいないことが当たり前だったはずなのに。出会うことなんか一生ないはずだったのに。突然なんの前触れもなく現れておきながら、ひとの中にズカズカと入り込んでおきながらこんなふうにあっさりと姿を見せなくなるなんて。
俺のことを庇ったりしなければよかったのに。放っておけばよかったのに。会いになんてこなければ――。
わぁ、と観客席から聞こえた声に一瞬にして意識が引き戻される。
振り返った視界の中、わずかな差をつけながら各チームの前走者が迫ってくる。駆け込んでくる選手たちに合わせて、横に並んでいた体が視界から消えていく。追いかけなければ、と焦る心が全身へと広がっていき、何度と繰り返した練習よりも強く前に引き寄せられる。傾きだした上半身が足を地面から剥がし、加速を意識せずにはいられなくなる。
それでも――視線をギリギリまで後方へと残すことは忘れなかった。自分へと向けられるその顔にわずかに冷静さが戻ってくる。
今はここまで繋がれてきたバトンを受け取ることの方が重要だ。繋ぎ託されてきた想いが手渡されるその瞬間まで必死に心を留め置く。
「瀬永っ!」
呼ばれた名前に反応した腕が後ろへと伸びる。ほんの一瞬だけ繋がった視線。手の中に押し付けられた固い感触。バトンをぎゅっと握り締め、さらに強く加速を意識する。前方に並ぶふたつの背中を視界に入れ、直前まで浮かんでいた想いを振り払う。
――今の俺がすべきことは目の前のふたりを抜かすことだけだ。
体育祭の最後を締めくくるチーム対抗リレーは一チーム十二名で一周400mのトラックを五周、計2000mを繋ぐ。女子六名で600mを、男子五名で1000mを、最後のひとり――アンカーだけが400mを走る。
同じ距離でも、部活の走り込みと実際のレースは違う。頭の中も、体の中も。呼吸ひとつでさえ全然違う。自分の記録だけを相手にしているのと生身の人間を相手に走るのとでは異なって当然だった。緊張感がわずかな強張りを生み、心臓をいつも以上に跳ね上げる。重なる足音が体に覚えさせたはずのリズムを掻き消そうとしてくる。考えるよりも先に「勝ちたい」という気持ちが前に出る。限界を忘れて加速しようと体よりも心が反応する。これは記録会でも大会でもない。ただの体育祭なのだから多少無茶をしても、それで失敗しても、それも思い出として片づけられる程度のものだ。それなら――と思わなくもなかったが。
「どんな距離でもペース配分は忘れないこと」
バトンを受け取ったその瞬間から、俺の中には朝見の言葉が響いていた。
カーブに沿ってかかる力に引きずられないよう視線を先へと持っていく。大事なのはここを抜けた後の直線。今はただそこに向かっていくだけ。内側へと傾けられていた軸が徐々に戻っていく。カーブが直線へと変わるにつれ遠心力から解放された体が前へと向かうエネルギーで満たされていく。
「重要なのはどれだけスピードを維持できるかだよ」
頭の中で再生される朝見の声に合わせて体が反応する。加速したスピードを維持できるよう力を抜き、風だけを意識する。地面から返ってくる力に押し出され、前へ前へと足は自然に進んでいく。下り坂を走り抜けるイメージで動き続ければ、遠かったはずの背中が大きくなる。自分が思っている以上に加速できたらしい。二つ目のカーブ手前で先にあったふたつの背中はひとつになった。
ゴールまでの距離は残り200m。カーブに入ったところで見えていた背中がぐんと近づく。俺のスピードが上がったというよりは相手のスピードが落ちたのだろう。400mという距離は決して短くない。短距離走ではあるが、勢いだけでどうにかなる距離ではない。前走者と同じようにスタートから飛ばせば途中で体力が尽きるのは必至だった。――わかっていても、本番では吹っ飛んでしまうことの方が多い。僅差で競り合い、結果がそのままチームの優勝に結び付くという場面ならなおさら。
最初のカーブとは違う。二度目のカーブでかかる力は倍にも感じられた。明らかに削られていく体力。一瞬でも気を緩めれば簡単に円の外側へと弾き飛ばされる。外へと持っていかれそうになる体を体幹で支え、視線は前へと持っていく。気づけば視界を覆っていた背中は隣に並んでいた。
相手の息遣いさえ触れる距離でも、感じるのは自分の呼吸と足音だけだった。風が体の中を巡っていく。嗅ぎなれたグラウンドの砂の匂いも今だけは感じられない。高まっていくたくさんの声もスピーカーから流れる音楽もテントの下から発せられる実況も気にしている余裕なんてない。
――目の前のレースだけがすべてだった。
「……っ」
右手に握り締めたバトンの感触も今はもう意識の外にある。
声援も音楽もすべてを意識の外に置いているのに。朝見の声だけは再生されていく。
「走り込みはどんな種目にもどんな競技にも繋がるよ。体力をつけるという意味でも、自分の呼吸やリズムを掴むという意味でも。迷っているならまずは基礎となる走力から上げていこう」
走高跳以外なら、と専念する種目をなかなか決められなかった俺に朝見はまっすぐ向き合ってくれた。
中途半端にしかできない、本気になることを怖がったままの俺を朝見は一度も怒らなかった。早く決めるべきだと急かすことさえしなかった。それどころか少しでもタイムが伸びれば、こっちが恥ずかしくなるくらい全力で喜んでくれた。
――あの頃からもう朝見は気づいていたのだろうか。
誰にも見せないようにと心の奥底に沈めた想いに。諦めることも捨てることもできず目を背けただけの願いに。こんなにいい加減で、俺自身ですら好きになれない今の俺を、それでも朝見は――。
残り100m。視界が一気に開ける。最後の直線。一番苦しい区間。だからこそ、声は鮮やかに蘇る。
「遼平は自分が思っているよりも負けず嫌いなんだよ。『これくらいでいい』って自分で線を引いても最後は自分から超えていくから。だから信じるだけでいい。遼平は自分の力を信じるだけでいいんだよ」
体力は走ることだけで削られるのではない。緊張感、強張り、力み、いつも以上に加速してしまった消耗分が、前半では気づけなくてもゴールを目前にすれば意識させられる。あと少し、という思いがこれまで走ってきた分を体に思い出させる。
――最後は自分で超えていくから。
重かったはずの足が地面からの力を捉える。
――だから信じるだけでいい。
肌に触れていた風が強さを増す。
――遼平は自分の力を信じるだけでいいんだよ。
残していた力が体の中でしっかりと消費され、わずかな加速を生む。並んでいた肩がほんの少し前に出る。それでも完全に突き放すほどにはならない。負けたくないという想いがお互いに痛いほど伝わってくる。
「本気で走れよ」
スタート直前。今まさに隣で競り合っている古賀部長にかけられた言葉を思い出す。
走者の順番は各チームで自由に決められるが、アンカーは三年生に任せるのが通例だった。速さだけでなく走りきるための体力も、最後の勝負への想いも重要になるからだ。ほかの二チームは当然のように三年生、それも同じ陸上部の先輩が走ることになっていた。
うちには200mを専門にする副部長の樫木先輩がいる。チームの誰もが当たり前に樫木先輩がアンカーを務めるのだと思っていた。
それなのに、順番についての話し合いの場で樫木先輩は言ったのだ。
「俺は専門が200だから、アンカーは瀬永に任せたい」
まさか一年の、自分の名前が呼ばれると思っていなかった俺は、驚きのあまりすぐには反応できなかった。
「いいのか? 最後の体育祭の、本当に最後だぞ。あっちはきっと古賀が走るだろ?」
三年生の別の先輩がトラックの反対側で話し合っているもうひとつのチームに視線を向ける。古賀先輩は陸上部の部長であり、400mを専門にしている選手だ。前半に相当リードを作っておかなければ競い合うことすら難しい相手と言える。
「だからこそ、だな。俺だと古賀には勝てない。専門も違うし。一緒にやってきたからわかる。だけど、瀬永なら望みがなくもない」
にやりと口元は笑っていたが、向けられた視線はまっすぐで一ミリも揺れてはいなかった。樫木先輩の言葉にほかのメンバーも俺を振り返る。
「やってくれるよな? 瀬永」
この状況で「断る」という選択肢はないに等しい。
「……はい」
半信半疑の表情を見せながらもパチパチと拍手の音は重なった。
どうして樫木先輩が俺を推してくれたのか、俺自身が一番わからなかった。
朝見が来てから変わり始めた部内の空気に俺は馴染めていない。馴染むことを拒み続けている。そのことに先輩は気づいているはずだ。種目ひとつまともに決められないくせに朝見の寵愛を受け続けるズルいやつだって気づいていたはずなのに。
――そんな俺でも認めてくれているのだろうか?
任せられた役目に、かけられた言葉に少しでも応えたいという想いが自然と湧き上がる。
「くっ……」
零れた声はあっという間に風に攫われる。
残り10m。俺と古賀部長はまだ競り合っていた。本当にこれは400mの最後なのだろうか。体力はとっくに限界を超え、スピードも落ちている。フォームだってもうどうなっているのかわからない。それでも……削られる体力とは反対に体の中に吹き続けた風が、前へ、前へと走らせる。自分の向かうべき場所へと風を掴む感覚。それは忘れたはずの記憶を蘇らせる。
――遼平は跳べるよ。
あの日、掴むことのできなかった風が。踏み切ることのできなかった地面が。見ることのできなかった景色が。まっすぐに引かれた白いテープの先にある気がした。
ぐん、と体が引き寄せられる。
憧れ続けた背中。手を伸ばし続けた世界。焦がれ続けた光。――それらは確かに自分の中に存在していた。
声、というよりは熱。空気、というよりは風。膨らみ続けた声援が、熱気がグラウンドを包み込んだまま破裂した。
勝った? 負けた?
結果を確認するよりも先に体が限界を迎える。膝の先から一気に力が抜けバランスを保てなくなる。
――あ、やばい。
暗くなっていく視界の先で空が見えたのは、地面ではない温かな感触に触れたのは、甘く柔らかな香りの中に「遼平」と呼ぶ声が聞こえたのは、全部気のせいだろうか――。
***
その香りは「ジャスミン」という花の香りなのだと、母さんが言っていた。
吸い込んでも、吸い込んでも消えることのない甘さが体の隅々まで広がっていく。
学校帰りの寄り道は禁止されていたけれど、少しだけなら大丈夫だろうとランドセルを背にしたまま公園へと入った。濃さを増した香りをたどり、いくつもの白い花が絡み付いたフェンスの前へと歩いていく。ブランコや滑り台といった遊具が並ぶこちらとは違い、フェンスの先にあるグラウンドは広々としている。いつも年上のひとたちで溢れている場所はとても静かで、ボールを蹴るひともキャッチボールをするひともいなかった。みんなまだ学校なのだろう。
誰もいないのなら、と心が揺らぐ。カシャン、と触れた手の先から音が鳴り、ジャスミンの花が揺れる。行ってみたいという思いと怒られるかもしれないという不安がぐるぐると回り出す。
――もう少し大きくなったらね。
母さんはその言葉ばかりを繰り返した。
小学生になったら「大きくなった」ことになるのだと思っていたけれど、母さんが言っていたのは体の大きさのことだったらしい。一か月前に行われた入学式で自分がとても小さい方なのだと思い知らされ、近くなるのだと思っていたグラウンドは遠くなってしまった。
あとどれくらい待てば、あっちへ行けるのだろうか?
吸い込んだ香りは先ほどよりも強い甘さを放ち、胸の奥を余計に苦しくさせる。はあ、とため息をついた――ハズだった。けれど実際に息を吐き出したのは自分ではなかった。
「え」
聞こえた方へと顔を向けると、すぐそばのベンチにひとがいた。
小さい子供を遊ばせているお母さんたちではなく、ちょっと休憩に来た近所のおじいさんでもない。制服を着ているのでおそらく中学生か高校生。普段ならこちら側にはいない、あちら側のひと。ベンチから転がり落ちるのではないかと心配になるほど前へと折られた体。俯けられた顔は見えず、日差しに透ける柔らかな髪が風に揺れていた。
「大丈夫?」
声をかけずにはいられなかった。縮こまるようにしまわれていた肩がびくりと震え、ゆっくりと顔が上げられる。細い髪の隙間から覗いた二つの瞳がまっすぐこちらへと向けられる。その瞬間――、自然と声は転がり落ちた。
「……そ、ら?」
「え?」
たった一音、たった一瞬。言葉にすらなっていない声が耳に触れ、胸の中で弾けた。
***
「り……」
わずかに漏れた自分の声で目が覚めた。
「起きた?」
見ていたはずの夢は遠ざかり、現実の景色が俺を包み込む。白い天井。薄く香る薬品の匂い。体を包み込む布団の柔らかな感触。窓の向こうから聞こえる微かなざわめき。
「……保健室?」
「うん。帰りは僕が送っていくからまだ寝ていて大丈夫だよ」
柔らかな声が耳に触れ、ぼやけていた意識が鮮明になる。
「え、なんでっ」
驚きのあまり上半身を勢いよく起こしてしまい、頭痛とともにぐらりと体が揺れた。
「おっと。急に起きたらあぶないよ」
カタン、と椅子の足が床を擦る音が響き、立ち上がった朝見がベッドから落ちかけた俺を抱きとめた。ふわりと受けとめるだけの力加減。甘い香りは近づいても息苦しくはなくて。シャツの冷たく心地よい温度が肌に触れる。
「遼平?」
いつもなら、突き飛ばすように逃げていた。
「……」
何するんだよって、離せって言って布団の中に戻っていた。
でも、今は――。
この優しすぎるほどの力がもどかしくてたまらなかった。ここにいるのだと、触れても消えないのだという実感が欲しかった。冷たい布地の奥にある確かな感触と体温をもっと感じたかった。
気づけば俺は流れ込む力の倍の強さで朝見を抱きしめ返していた。
ピクッと腕の中で小さな振動が伝わってきたが、構うことなく背中へと回した手でぎゅっとシャツを掴む。近くなった心臓の音、真上から被せられる呼吸の温かさ。そこには確かに朝見がいた。画面越しではない、触れても消えることのない、実体としての『朝見凛』が確かにいた。
「遼平……?」
「……な、んで」
――なんで、ここにいるのか。
――なんで、朝になっても戻ってこなかったのか。
「なんで、なんで」
――なんで、俺は今こんなにもホッとしているのだろうか。
――なんで、俺はあんなにも寂しさを感じていたのだろうか。
言いたいことも訊きたいこともいっぱいあるのにどれもうまく形にできない。同じ言葉を繰り返すことしかできない。
強くなる俺の力とは反対に朝見の力はゆっくりと抜けていく。同じだけ返ってこないのが悔しいのに、近づいた距離を手放したくなくて、腕を緩めることができない。
「なんで……」
――なんで、こんな俺を見捨てないのか。
胸の中にある気持ちひとつまともに吐き出せないのに、両目に集まった熱は簡単に溢れ出した。熱くて、痛くて、苦しくて。どうして自分が泣いているのかさえ理解できないのに、この胸の鼓動が、体温が、香りがどうしようもなく俺の心を解いていく。
「遅くなってごめんね」
「……っ」
「いい走りだったよ」
ふわりと頭に載せられた大きな手。静かに落とされた優しい言葉。そっと顔を上げれば、変わることのない澄んだ青色の瞳がゆっくりと細められる。
ここ、だった。
どこにいても馴染めなくて、何をしていても本気になれなくて。諦めたフリをするしかなくて。忘れたフリをするしかなくて。それなのに――。
あの日、手を伸ばすことさえできなかった空が。見失ってしまった自分の居場所が。しまい込んだはずの憧れが。俺の目の前に、腕の中に、胸の奥に――確かな光となって存在していた。
日差しの眩しさに目を細める余裕も、この場にいない朝見のことを話題にすることもプログラムが進むにつれ、なくなっていった。グラウンドにいる全員が目の前の競技に集中し、高まっていく空気に飲み込まれていく。
何もかも忘れて俺もその熱の中に入ってしまえたなら、どんなによかっただろう。
クラスメイトと同じように声を出していても、エントリーしている競技をいくつこなしても朝見の不在を意識せずにはいられない。「見に行くね」なんて一言も言われてはいないのに。いつの間にか当たり前に、見に来るのだと思っていた。俺が「イヤだ」と言っても「来るな」と言っても「遼平が走るのに? コーチの僕が見に行かないでどうするの?」とあっさり笑って返してくるのだと、そう思っていた。
――どうして、ここに朝見はいないのだろう?
自分から口にすることはできない。できないからこそ胸の奥で燻り続けてしまう。ほんの一か月前まではいないことが当たり前だったはずなのに。出会うことなんか一生ないはずだったのに。突然なんの前触れもなく現れておきながら、ひとの中にズカズカと入り込んでおきながらこんなふうにあっさりと姿を見せなくなるなんて。
俺のことを庇ったりしなければよかったのに。放っておけばよかったのに。会いになんてこなければ――。
わぁ、と観客席から聞こえた声に一瞬にして意識が引き戻される。
振り返った視界の中、わずかな差をつけながら各チームの前走者が迫ってくる。駆け込んでくる選手たちに合わせて、横に並んでいた体が視界から消えていく。追いかけなければ、と焦る心が全身へと広がっていき、何度と繰り返した練習よりも強く前に引き寄せられる。傾きだした上半身が足を地面から剥がし、加速を意識せずにはいられなくなる。
それでも――視線をギリギリまで後方へと残すことは忘れなかった。自分へと向けられるその顔にわずかに冷静さが戻ってくる。
今はここまで繋がれてきたバトンを受け取ることの方が重要だ。繋ぎ託されてきた想いが手渡されるその瞬間まで必死に心を留め置く。
「瀬永っ!」
呼ばれた名前に反応した腕が後ろへと伸びる。ほんの一瞬だけ繋がった視線。手の中に押し付けられた固い感触。バトンをぎゅっと握り締め、さらに強く加速を意識する。前方に並ぶふたつの背中を視界に入れ、直前まで浮かんでいた想いを振り払う。
――今の俺がすべきことは目の前のふたりを抜かすことだけだ。
体育祭の最後を締めくくるチーム対抗リレーは一チーム十二名で一周400mのトラックを五周、計2000mを繋ぐ。女子六名で600mを、男子五名で1000mを、最後のひとり――アンカーだけが400mを走る。
同じ距離でも、部活の走り込みと実際のレースは違う。頭の中も、体の中も。呼吸ひとつでさえ全然違う。自分の記録だけを相手にしているのと生身の人間を相手に走るのとでは異なって当然だった。緊張感がわずかな強張りを生み、心臓をいつも以上に跳ね上げる。重なる足音が体に覚えさせたはずのリズムを掻き消そうとしてくる。考えるよりも先に「勝ちたい」という気持ちが前に出る。限界を忘れて加速しようと体よりも心が反応する。これは記録会でも大会でもない。ただの体育祭なのだから多少無茶をしても、それで失敗しても、それも思い出として片づけられる程度のものだ。それなら――と思わなくもなかったが。
「どんな距離でもペース配分は忘れないこと」
バトンを受け取ったその瞬間から、俺の中には朝見の言葉が響いていた。
カーブに沿ってかかる力に引きずられないよう視線を先へと持っていく。大事なのはここを抜けた後の直線。今はただそこに向かっていくだけ。内側へと傾けられていた軸が徐々に戻っていく。カーブが直線へと変わるにつれ遠心力から解放された体が前へと向かうエネルギーで満たされていく。
「重要なのはどれだけスピードを維持できるかだよ」
頭の中で再生される朝見の声に合わせて体が反応する。加速したスピードを維持できるよう力を抜き、風だけを意識する。地面から返ってくる力に押し出され、前へ前へと足は自然に進んでいく。下り坂を走り抜けるイメージで動き続ければ、遠かったはずの背中が大きくなる。自分が思っている以上に加速できたらしい。二つ目のカーブ手前で先にあったふたつの背中はひとつになった。
ゴールまでの距離は残り200m。カーブに入ったところで見えていた背中がぐんと近づく。俺のスピードが上がったというよりは相手のスピードが落ちたのだろう。400mという距離は決して短くない。短距離走ではあるが、勢いだけでどうにかなる距離ではない。前走者と同じようにスタートから飛ばせば途中で体力が尽きるのは必至だった。――わかっていても、本番では吹っ飛んでしまうことの方が多い。僅差で競り合い、結果がそのままチームの優勝に結び付くという場面ならなおさら。
最初のカーブとは違う。二度目のカーブでかかる力は倍にも感じられた。明らかに削られていく体力。一瞬でも気を緩めれば簡単に円の外側へと弾き飛ばされる。外へと持っていかれそうになる体を体幹で支え、視線は前へと持っていく。気づけば視界を覆っていた背中は隣に並んでいた。
相手の息遣いさえ触れる距離でも、感じるのは自分の呼吸と足音だけだった。風が体の中を巡っていく。嗅ぎなれたグラウンドの砂の匂いも今だけは感じられない。高まっていくたくさんの声もスピーカーから流れる音楽もテントの下から発せられる実況も気にしている余裕なんてない。
――目の前のレースだけがすべてだった。
「……っ」
右手に握り締めたバトンの感触も今はもう意識の外にある。
声援も音楽もすべてを意識の外に置いているのに。朝見の声だけは再生されていく。
「走り込みはどんな種目にもどんな競技にも繋がるよ。体力をつけるという意味でも、自分の呼吸やリズムを掴むという意味でも。迷っているならまずは基礎となる走力から上げていこう」
走高跳以外なら、と専念する種目をなかなか決められなかった俺に朝見はまっすぐ向き合ってくれた。
中途半端にしかできない、本気になることを怖がったままの俺を朝見は一度も怒らなかった。早く決めるべきだと急かすことさえしなかった。それどころか少しでもタイムが伸びれば、こっちが恥ずかしくなるくらい全力で喜んでくれた。
――あの頃からもう朝見は気づいていたのだろうか。
誰にも見せないようにと心の奥底に沈めた想いに。諦めることも捨てることもできず目を背けただけの願いに。こんなにいい加減で、俺自身ですら好きになれない今の俺を、それでも朝見は――。
残り100m。視界が一気に開ける。最後の直線。一番苦しい区間。だからこそ、声は鮮やかに蘇る。
「遼平は自分が思っているよりも負けず嫌いなんだよ。『これくらいでいい』って自分で線を引いても最後は自分から超えていくから。だから信じるだけでいい。遼平は自分の力を信じるだけでいいんだよ」
体力は走ることだけで削られるのではない。緊張感、強張り、力み、いつも以上に加速してしまった消耗分が、前半では気づけなくてもゴールを目前にすれば意識させられる。あと少し、という思いがこれまで走ってきた分を体に思い出させる。
――最後は自分で超えていくから。
重かったはずの足が地面からの力を捉える。
――だから信じるだけでいい。
肌に触れていた風が強さを増す。
――遼平は自分の力を信じるだけでいいんだよ。
残していた力が体の中でしっかりと消費され、わずかな加速を生む。並んでいた肩がほんの少し前に出る。それでも完全に突き放すほどにはならない。負けたくないという想いがお互いに痛いほど伝わってくる。
「本気で走れよ」
スタート直前。今まさに隣で競り合っている古賀部長にかけられた言葉を思い出す。
走者の順番は各チームで自由に決められるが、アンカーは三年生に任せるのが通例だった。速さだけでなく走りきるための体力も、最後の勝負への想いも重要になるからだ。ほかの二チームは当然のように三年生、それも同じ陸上部の先輩が走ることになっていた。
うちには200mを専門にする副部長の樫木先輩がいる。チームの誰もが当たり前に樫木先輩がアンカーを務めるのだと思っていた。
それなのに、順番についての話し合いの場で樫木先輩は言ったのだ。
「俺は専門が200だから、アンカーは瀬永に任せたい」
まさか一年の、自分の名前が呼ばれると思っていなかった俺は、驚きのあまりすぐには反応できなかった。
「いいのか? 最後の体育祭の、本当に最後だぞ。あっちはきっと古賀が走るだろ?」
三年生の別の先輩がトラックの反対側で話し合っているもうひとつのチームに視線を向ける。古賀先輩は陸上部の部長であり、400mを専門にしている選手だ。前半に相当リードを作っておかなければ競い合うことすら難しい相手と言える。
「だからこそ、だな。俺だと古賀には勝てない。専門も違うし。一緒にやってきたからわかる。だけど、瀬永なら望みがなくもない」
にやりと口元は笑っていたが、向けられた視線はまっすぐで一ミリも揺れてはいなかった。樫木先輩の言葉にほかのメンバーも俺を振り返る。
「やってくれるよな? 瀬永」
この状況で「断る」という選択肢はないに等しい。
「……はい」
半信半疑の表情を見せながらもパチパチと拍手の音は重なった。
どうして樫木先輩が俺を推してくれたのか、俺自身が一番わからなかった。
朝見が来てから変わり始めた部内の空気に俺は馴染めていない。馴染むことを拒み続けている。そのことに先輩は気づいているはずだ。種目ひとつまともに決められないくせに朝見の寵愛を受け続けるズルいやつだって気づいていたはずなのに。
――そんな俺でも認めてくれているのだろうか?
任せられた役目に、かけられた言葉に少しでも応えたいという想いが自然と湧き上がる。
「くっ……」
零れた声はあっという間に風に攫われる。
残り10m。俺と古賀部長はまだ競り合っていた。本当にこれは400mの最後なのだろうか。体力はとっくに限界を超え、スピードも落ちている。フォームだってもうどうなっているのかわからない。それでも……削られる体力とは反対に体の中に吹き続けた風が、前へ、前へと走らせる。自分の向かうべき場所へと風を掴む感覚。それは忘れたはずの記憶を蘇らせる。
――遼平は跳べるよ。
あの日、掴むことのできなかった風が。踏み切ることのできなかった地面が。見ることのできなかった景色が。まっすぐに引かれた白いテープの先にある気がした。
ぐん、と体が引き寄せられる。
憧れ続けた背中。手を伸ばし続けた世界。焦がれ続けた光。――それらは確かに自分の中に存在していた。
声、というよりは熱。空気、というよりは風。膨らみ続けた声援が、熱気がグラウンドを包み込んだまま破裂した。
勝った? 負けた?
結果を確認するよりも先に体が限界を迎える。膝の先から一気に力が抜けバランスを保てなくなる。
――あ、やばい。
暗くなっていく視界の先で空が見えたのは、地面ではない温かな感触に触れたのは、甘く柔らかな香りの中に「遼平」と呼ぶ声が聞こえたのは、全部気のせいだろうか――。
***
その香りは「ジャスミン」という花の香りなのだと、母さんが言っていた。
吸い込んでも、吸い込んでも消えることのない甘さが体の隅々まで広がっていく。
学校帰りの寄り道は禁止されていたけれど、少しだけなら大丈夫だろうとランドセルを背にしたまま公園へと入った。濃さを増した香りをたどり、いくつもの白い花が絡み付いたフェンスの前へと歩いていく。ブランコや滑り台といった遊具が並ぶこちらとは違い、フェンスの先にあるグラウンドは広々としている。いつも年上のひとたちで溢れている場所はとても静かで、ボールを蹴るひともキャッチボールをするひともいなかった。みんなまだ学校なのだろう。
誰もいないのなら、と心が揺らぐ。カシャン、と触れた手の先から音が鳴り、ジャスミンの花が揺れる。行ってみたいという思いと怒られるかもしれないという不安がぐるぐると回り出す。
――もう少し大きくなったらね。
母さんはその言葉ばかりを繰り返した。
小学生になったら「大きくなった」ことになるのだと思っていたけれど、母さんが言っていたのは体の大きさのことだったらしい。一か月前に行われた入学式で自分がとても小さい方なのだと思い知らされ、近くなるのだと思っていたグラウンドは遠くなってしまった。
あとどれくらい待てば、あっちへ行けるのだろうか?
吸い込んだ香りは先ほどよりも強い甘さを放ち、胸の奥を余計に苦しくさせる。はあ、とため息をついた――ハズだった。けれど実際に息を吐き出したのは自分ではなかった。
「え」
聞こえた方へと顔を向けると、すぐそばのベンチにひとがいた。
小さい子供を遊ばせているお母さんたちではなく、ちょっと休憩に来た近所のおじいさんでもない。制服を着ているのでおそらく中学生か高校生。普段ならこちら側にはいない、あちら側のひと。ベンチから転がり落ちるのではないかと心配になるほど前へと折られた体。俯けられた顔は見えず、日差しに透ける柔らかな髪が風に揺れていた。
「大丈夫?」
声をかけずにはいられなかった。縮こまるようにしまわれていた肩がびくりと震え、ゆっくりと顔が上げられる。細い髪の隙間から覗いた二つの瞳がまっすぐこちらへと向けられる。その瞬間――、自然と声は転がり落ちた。
「……そ、ら?」
「え?」
たった一音、たった一瞬。言葉にすらなっていない声が耳に触れ、胸の中で弾けた。
***
「り……」
わずかに漏れた自分の声で目が覚めた。
「起きた?」
見ていたはずの夢は遠ざかり、現実の景色が俺を包み込む。白い天井。薄く香る薬品の匂い。体を包み込む布団の柔らかな感触。窓の向こうから聞こえる微かなざわめき。
「……保健室?」
「うん。帰りは僕が送っていくからまだ寝ていて大丈夫だよ」
柔らかな声が耳に触れ、ぼやけていた意識が鮮明になる。
「え、なんでっ」
驚きのあまり上半身を勢いよく起こしてしまい、頭痛とともにぐらりと体が揺れた。
「おっと。急に起きたらあぶないよ」
カタン、と椅子の足が床を擦る音が響き、立ち上がった朝見がベッドから落ちかけた俺を抱きとめた。ふわりと受けとめるだけの力加減。甘い香りは近づいても息苦しくはなくて。シャツの冷たく心地よい温度が肌に触れる。
「遼平?」
いつもなら、突き飛ばすように逃げていた。
「……」
何するんだよって、離せって言って布団の中に戻っていた。
でも、今は――。
この優しすぎるほどの力がもどかしくてたまらなかった。ここにいるのだと、触れても消えないのだという実感が欲しかった。冷たい布地の奥にある確かな感触と体温をもっと感じたかった。
気づけば俺は流れ込む力の倍の強さで朝見を抱きしめ返していた。
ピクッと腕の中で小さな振動が伝わってきたが、構うことなく背中へと回した手でぎゅっとシャツを掴む。近くなった心臓の音、真上から被せられる呼吸の温かさ。そこには確かに朝見がいた。画面越しではない、触れても消えることのない、実体としての『朝見凛』が確かにいた。
「遼平……?」
「……な、んで」
――なんで、ここにいるのか。
――なんで、朝になっても戻ってこなかったのか。
「なんで、なんで」
――なんで、俺は今こんなにもホッとしているのだろうか。
――なんで、俺はあんなにも寂しさを感じていたのだろうか。
言いたいことも訊きたいこともいっぱいあるのにどれもうまく形にできない。同じ言葉を繰り返すことしかできない。
強くなる俺の力とは反対に朝見の力はゆっくりと抜けていく。同じだけ返ってこないのが悔しいのに、近づいた距離を手放したくなくて、腕を緩めることができない。
「なんで……」
――なんで、こんな俺を見捨てないのか。
胸の中にある気持ちひとつまともに吐き出せないのに、両目に集まった熱は簡単に溢れ出した。熱くて、痛くて、苦しくて。どうして自分が泣いているのかさえ理解できないのに、この胸の鼓動が、体温が、香りがどうしようもなく俺の心を解いていく。
「遅くなってごめんね」
「……っ」
「いい走りだったよ」
ふわりと頭に載せられた大きな手。静かに落とされた優しい言葉。そっと顔を上げれば、変わることのない澄んだ青色の瞳がゆっくりと細められる。
ここ、だった。
どこにいても馴染めなくて、何をしていても本気になれなくて。諦めたフリをするしかなくて。忘れたフリをするしかなくて。それなのに――。
あの日、手を伸ばすことさえできなかった空が。見失ってしまった自分の居場所が。しまい込んだはずの憧れが。俺の目の前に、腕の中に、胸の奥に――確かな光となって存在していた。
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