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しおりを挟むゲームにもアニメにもドラマにも………
物語には必ず"悪役"がいる。
そんな悪役に自分がなってしまった時、皆さんならどうしますか!?
しかもその悪役の最後が"処刑エンド"だったらどうしますかぁあ~~~!?!?
これは前世でごくごく普通の中学生だった私が、ある日突然乙女ゲームの世界に転生し、
”悪役”アリス・レンゼットとして生きることになってしまった物語である………………!!!
───────
────
私アリス・レンゼットと王子の婚約が決まったのはなんと生まれた当日、つまり誕生日だ。
私の父であるレンゼット伯爵と王様は昔馴染みのお友達で………
"そんな2人の子供が同じ歳に、しかも同じ日に生まれてくるなんて運命だ!"
彼らはそう思ったらしく私と王子の誕生直後に、婚約を決めたのだ。
なんてアホな話なんだ、と思うけれどこの2人は至って真剣。
本気で結婚させようと画策している。
類友って恐ろしい……。
……………けれどその結婚絶対上手く行きません!!!
だって私、このままいけば18歳で首から上なくなっちゃうんだもん。
_________________
「やぁ、アリス」
「おはようございます、殿下」
彼の名前はリヒト・リュミルーメン、この国の第1王子。
彼を前にして私はいつも通り笑顔を浮かべるが内心は冷や汗ドロドロ。
なんでもって10歳の男の子にここまでビビらなきゃいけないんだろう。
……………こんな胃に穴があきそうなストレスをいつまでも抱えていちゃいけないんだ!
私は一刻も早く彼に婚約破棄を持ちかけなければ!!!
処刑エンドを回避するためにも………。
「あの!殿下、お話があるんですけど……!」
「話? ……あぁ、今日のお土産はミリシュローズのショートケーキだよ。 」
「………!!! なんですって!?!? 殿下は天才ですか!? 私の大好物を何故お知りに!?
しかもミリシュローズのケーキ…………凄い嬉しいです!!!」
彼が私に差し出して来た袋の中身を見て、私の心はパーティータイム。
脳内ディスコでウキウキだ。
ミリシュローズは王都にある菓子専門店。
どのお菓子も絶品だけれど、私の家からは少し距離があるためなかなか食べに行けないのだ。
「好きなブランドが当たったのはたまたまだな。でも、君がショートケーキを好むのはいつも見てるから勿論知ってるよ」
笑顔を浮かべてそう言った殿下に今日も私は見惚れてしまった。
…………既に美の化身と化している殿下は数年後、絶世の美男子に成長する。
こんなに近くで見れるなんて眼福すぎる………。
ゲームをしている時、1番の推しは彼だったんだ。
同じ世界にいられるなんて奇跡!!!
神に感謝しなくては………!!!
……………じゃない!殿下とケーキに心奪われている場合じゃない!
私には成さねばならないことがあるのだ……………!!!
「殿下! 殿下はこのままで良いと思ってるのですか!!」
「………………? "何が"か聞いても良いかな?」
「勿論、婚約のことです! お父様と陛下が勝手に決めた婚約なんて良くないと思います。
殿下は結婚をどのようなものだとお考えですか!?」
「うーん、"一生添い遂げたいと思える人と一緒になること"かな?」
「はい!10歳なのに100点満点の回答ですね!殿下!」
「………うん?つまり何が言いたいのかな?」
「殿下…………私達の間には愛というものがないじゃないですか!
これじゃダメです、私も殿下もきっと後悔しますわ!
今のうちに婚約は破棄しましょう!」
………よし!言った!
これは完璧にきまったわ!!
「ねぇ、僕らが生まれた日のことを詳しく聞いたことがある?」
「……………へ?」
「その日はね、300年ぶりにルブルムとジェアダという夫婦星が同じ空に帰ってきた日なんだって。
僕は天文学には詳しくないけど、父様と伯爵はそれもあって大きな運命を感じたらしいよ」
「……えぇ…と…?」
え、なに、ルブルム?ジェアダ?
……、なにそれ難しい。
天文学ってことはお星様ですか?
「僕らはまだ10歳なんだから、今は大人が作った道に少しは流されてもいいんじゃないかな。
これからいくつもの出会いがあるのは分かっているし、それでアリスが僕より好きな人を見つけるかもしれない。
でも僕とアリスの出会いも間違いなく大切なものだし、僕は君といるととても楽しい。
これからも婚約者として”特別”仲良くしたいよ」
「…………っ!!!」
「ダメ…………かな……………?」
……………あぁぁあ!!!
殿下は上目遣いで私を見つめていた。
その可愛さに私はもうキュン死しそうだった。
それに殿下の言うことにも一理ある。
私と殿下の出会いだって、それが例えゲームに設定されたストーリーだとしても大切なものには確かに変わりはない。
………それに……私、殿下のことは人として大好きだもの。
「ダメじゃないです!ぜひ仲良くしましょう!」
「うん、じゃあ今日は中庭でそのケーキを一緒に食べようか。
その後、アリスが育てている花を見に行ってもいいかな?」
「えぇ!是非!」
そう言って足取り軽く、中庭に向かった私は既に大事な"婚約破棄" の話題なんて忘れ去っていたのだった……………。
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