魂が百個あるお姫様

雨野千潤

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35 バッドエンド ギルバードside

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気付けば僕の周りには誰もいなくなっていた。
父上も母上も兄上も、側近も婚約者も。

僕は晴れて国王になれたが、こんな結末は望んじゃいなかった。

ベリアが各地の領を引き連れて独立し、聖大陸最大の国だったオルタはゼノスやガノルと変わらないくらいの国になってしまった。

王都には沢山の人や店が溢れかえっているが、それを支える農地がない。
神殿も塔も農作業をするような者ではないし、これからどうやって生活していけば良いのか。

困って愛し子を召喚することを思いついたが、召喚された愛し子は国の為に奉仕するなんて夢にも思わなさそうな我儘で世間知らずの小娘だった。
能力も無いと言い張るので腹が立って地下牢に閉じ込めてある。

何もかもが上手くいかない。
こんなはずじゃなかった。

こんなことなら王になんて、王太子になんて、ならなければ良かった。

「兄上…」

辺境に追いやった兄上はいつの間にかベリア国の公爵になっていた。

どうしてだろう。
気が弱くて平和主義で、父上の言いなりになっていた兄上が幸せになっているなんて。

僕の方が賢くて何でも上手くこなせるはずだったのに。

ねぇ、助けてくれよ兄上。

頼んだらまた譲ってくれないかなぁ。

その地位、その妻、その部下、その領地。
今度こそ上手くやるから、僕にくれよ。


この国王の座をあげるから、ねぇ兄上?

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