20 / 43
20 婚姻祝い
しおりを挟む
アベル領に来てから早一年。
ある程度自給自足できるようになり、チラホラと新規住民が増えたことで商店街の店も増えた。
食料品店、雑貨店、飲食店、宿屋など立ち並ぶ中、ドンと中央を陣取るのはトニ婆の店『フォーレスト』だ。
それは古物商なのだが、つまるところ質屋であり金貸しである。
そして宝石や外貨を換金し、仕事や店舗の斡旋などもしているようだ。
今のところ店員はトニ婆一人だけなのだが、賢者が入り浸っていてたまに店番をしていたりする。
あの二人は本当に仲が良い。
魔物はもう出現しなくなったのだが、治安が良くないのでイチカ達『ファースト』のメンバーには残って貰い、警備をお願いしている。
アベル騎士団がもう少し立派になったら警備も任せられるようになるのだが、今はまだ少ない団員を育成中だ。
働き手が増えたので建物や道路を少しずつ整備していく。
領主としての仕事が増えたので、アルフレッドの担当していた畑は教会兼孤児院のイサム達に引き継いでもらった。
『どこでも異世界ドア』の中で子供達は安全に元気に伸び伸びと働いてくれているらしい。
そこで収穫した作物の何割かを給料として払っているのだが、それで作ったクッキーやパイなどを教会前通りで販売し、その金で日用品などを購入しているとのこと。
ニノはモーリス商会の活動拠点の一つとして此処に店を展開することにしたらしく、王都にあるような百貨店を建設中だ。
トニ婆とニノに続けと言わんばかりに私の魂の子達が続々とアベル領に出店する計画を立てているらしい。
そんな中、私を訊ねてきたのはシークエンド農園に嫁に行った子分身イリスだ。
寄り添うシークエンド伯爵の次男である彼女の夫ジェイクは、平民でありながらも大農園のオーナーであり貫禄がある。
久しぶりに会った彼女は健康的に日に焼けており、その腕に抱かれた息子は既に三歳になったのだという。
「姫様、遅くなりましたがご結婚おめでとうございます」
「そうね。めでたいのかどうかわからないけれど、有難う。落ち着いたら式を挙げようと思っているのだけれど」
この調子じゃいつになるかわからないわねと苦笑する。
イリスは「式には絶対に呼んでくださいね」と拳を握りしめた。
「イリスがとても大切にされている貴女に祝儀として何を贈ったら良いか、私達はとても悩んだのですが」
ジェイクがそう前置きをし、チラッとソファーの後ろに置いたソレに目をやる。
はい見えてました。
貴方達が到着した時からなんとなく察していました。
見覚えのあるそのドア。
「絶対に世に出すなと口を酸っぱくして言い聞かせたはずなんですけれど」
「姫様にサプライズのプレゼントを贈りたいのだとロクを説得しました。怒らないであげてください姫様」
イリスは三歳の息子に「ほら『お願い』は?」と耳打ちし、両手を合わせ上目遣いの「おねがぁい」攻撃を受ける。
ぐっ…可愛らしいですわ…!
「し、仕方ありませんわね。今回だけは」
私が容易く陥落したところで、「遅れてすまない」とアルフレッドが応接室に入って来た。
「アベル伯爵、お初にお目にかかる」
「いや、こちらこそ。いつも妻がお世話になっているようで」
夫同士挨拶を済ませソファーに腰かける瞬間、アルフレッドも「アレは」とドアに気付いたようだ。
「こちら婚姻祝いの『どこでも異空間ドア(牧場)』でございます」
「牧場…」
「最近は農場だけでなく牧場も始めましてね。ウチで育てている牛、豚、鶏を数匹ずつ飼育場と共にプレゼントです」
「いや、ジェイク殿には農場の方でも品種改良された苗などをいただいて、それだけでも充分」
「受け取っていただけないと?」
イリスが素早く息子に耳打ちし、アルフレッドは三歳児の「おねがぁい」攻撃を受ける。
「うっ…勿論、有難く頂戴する。それでは今後、また別の形で恩返しさせていただくことにしよう」
「良かった。管理の方はどうなさいます?事情を分かってる人に任せないといけないでしょうし」
「今回もイサムに任せようと思いますわ。子供達にも魔物肉以外の美味しいお肉を食べてもらいたいし」
我が領の食糧担当ね、と扇子の下でオホホと笑う。
最近忙しすぎて本業の盗賊が出来ていないらしが、子供達と一緒に過ごすイサムはとても楽しそうだしこちらの方が絶対性に合ってるだろう。
「滞在中にイサムの子供達にも会っていきましょうアナタ」
「そうだね。ウチの子と似たような年頃の子もいるだろうし、きっと楽しいね」
そんなこんなでアベル領は平和そのものだった。
彼女が襲来するまでは。
豪奢な馬車、そしてドレス。金の巻き髪、エメラルドの瞳。
侍女と護衛を一人ずつ連れて。
公爵令嬢ソフィーナが、台風の如くアベル領にやってきた。
「アルフレッド殿下は何処ですの?」
彼に会いに来たんですけれどと応接室のソファーに座るのは、アルフレッドの元婚約者ソフィーナ・ベリアだ。
流石公爵令嬢らしく、圧がある。
「先触れはございませんでしたが、どのようなご用件で?」
「それを貴女に話す必要があって?そもそも貴女は誰なんですの?」
「アベル伯爵夫人…ですが」
最初に名乗らなかったかしらと自己紹介する。
わかっていなかったのか、ソフィーナはポロリと手に持った扇子を落とした。
「ど、どうして生きているんですの?お父様の話では死んだと」
「え、クリストさんは公爵家に帰ったんですわよね?聞いておりませんの?」
「それは、でも嘘だと思いましたの!だってお父様の方が正しいって決まってますもの」
そんな、と酷くショックを受けたような顔をしている。
私が生きているとなにか不都合なことでもあるのだろうか。
「アルフレッドは今、領地を囲む城壁の視察に行っていますが」
「アルフレッド?…呼び捨て?」
「…?夫ですから」
「わたくしの元婚約者ですわよっ?」
話が嚙み合わない。
どうやらソフィーナは、婚約が解消されてもアルフレッドとの関係は変わっていないと思っている様子。
ふぅん?と顎に手をやり思案する。
あまりにも攻撃的ならと追い返そうかとも思ったが、これならアルフレッドに会わせてみても面白そうだ。
「行ってみます?視察しているアルフレッドの処へ」
「わたくしが行くんですの?呼び戻すのではなく?」
「折角いらしたんですから、街の様子も是非見ていってくださいまし」
さあさあと手を引くと渋々立ち上がる。
彼女の侍女と護衛が慌てたように跡をついてきた。
「おそらく南側の城壁ですわ。歩きで行きます?それとも」
「馬車で行きますわ!貴女、一緒に乗って案内なさい」
「でも四人も乗ったら狭くありませんこと?」
私が指摘するとソフィーナは「そうね」と考え込み、侍女に「クララは残りなさい」と告げた。
「そんな、お嬢様」
「ヤナギを連れていくから大丈夫よ。クララは此処に残って、今日わたくしが泊る部屋を整えておくのよ」
何も聞いていないが今日はこの邸に泊まるつもりらしい。
私がヨツイに目配せしたので、そちらは上手くやるだろう。
馬車を走らせると南の城壁まではあっという間だ。
城壁の前では結成したばかりのアベル騎士団が訓練しているところだった。
「ユーリじゃねぇか。どうした?差し入れか?」
「違いますわ、アルフレッドにお客様です。兄様、こちらベリア公爵令嬢ソフィーナ様ですわ」
紹介すると、トーマが私の兄だと察したソフィーナ嬢が綺麗にカーテシーをする。
トーマは無遠慮に「そうか、俺はユーリの兄のトーマだ」と言ってその頭に手を乗せて撫でた。
「…!?」
やると思った。
相手が公爵令嬢だろうと何だろうと、トーマはこういう男だ。
髪をグシャグシャにされ、ソフィーナ嬢は頭を下げたまま呆然としている。
「申し訳ありません、悪気はないのです」
「そ、そ、そうなのですね」
「クリストの妹…、そうかユーリと同い年の妹がいるって言ってたな!仲良くしてやってくれ、ウチの妹は友達いないから!」
くっ…このノンデリの筋肉ダルマめ!
気が付けば渾身の拳が鳩尾にめり込んでトーマが白目を剝いている。
「ぐ…はっ…!油断したぜ、猫かぶりモードの時にこんな攻撃をされるとは」
「まぁ、おほほほほ!嫌ですわ兄様ったら、そんな大袈裟に痛がって」
行きましょとソフィーナ嬢を先に促す。
城壁の中へと入り、私はソフィーナ嬢の乱れた髪を手早く直してあげた。
「…貴女、友達いないんですの?」
「うぐっ…、そこ、気になります?」
貴族の世界で一番身分が低いとされる男爵の令嬢。
貴族らしく振舞えば馬鹿にされないだろうと思って努力したが、それが余計に壁を作っていたらしい。
気付いた時にはもう手遅れで。
平民のようだと蔑まれることも立派な貴族令嬢だと褒められることもない中途半端な立場で、私は学園の三年間を過ごした。
「人付き合いは難しいですわ。私だけ努力すれば叶うものでもなくて」
「それは…わかりますわ」
共感することがあったのか、ソフィーナ嬢がしんみりと同意する。
「では、わたくしがお友達になってさしあげてもよろしくてよ」
「…はい?」
いかにも同情している風に聞こえるが、私にはわかる。
この子も友達が出来なかった同類なのだと。
「今日からわたくしが貴女のお友達ですわ!わたくしのことはソフィとお呼びなさい」
「あ、はい。では私のことはユーリと」
「わかりましたわ、ユーリ」
呼んで呼んでと期待の目を向けられ、私は戸惑いながら「ソフィ」と名を呼ぶ。
お友達と言って笑うソフィーナ嬢は、公爵令嬢の圧も何もないただの十八歳の女の子に見えた。
ある程度自給自足できるようになり、チラホラと新規住民が増えたことで商店街の店も増えた。
食料品店、雑貨店、飲食店、宿屋など立ち並ぶ中、ドンと中央を陣取るのはトニ婆の店『フォーレスト』だ。
それは古物商なのだが、つまるところ質屋であり金貸しである。
そして宝石や外貨を換金し、仕事や店舗の斡旋などもしているようだ。
今のところ店員はトニ婆一人だけなのだが、賢者が入り浸っていてたまに店番をしていたりする。
あの二人は本当に仲が良い。
魔物はもう出現しなくなったのだが、治安が良くないのでイチカ達『ファースト』のメンバーには残って貰い、警備をお願いしている。
アベル騎士団がもう少し立派になったら警備も任せられるようになるのだが、今はまだ少ない団員を育成中だ。
働き手が増えたので建物や道路を少しずつ整備していく。
領主としての仕事が増えたので、アルフレッドの担当していた畑は教会兼孤児院のイサム達に引き継いでもらった。
『どこでも異世界ドア』の中で子供達は安全に元気に伸び伸びと働いてくれているらしい。
そこで収穫した作物の何割かを給料として払っているのだが、それで作ったクッキーやパイなどを教会前通りで販売し、その金で日用品などを購入しているとのこと。
ニノはモーリス商会の活動拠点の一つとして此処に店を展開することにしたらしく、王都にあるような百貨店を建設中だ。
トニ婆とニノに続けと言わんばかりに私の魂の子達が続々とアベル領に出店する計画を立てているらしい。
そんな中、私を訊ねてきたのはシークエンド農園に嫁に行った子分身イリスだ。
寄り添うシークエンド伯爵の次男である彼女の夫ジェイクは、平民でありながらも大農園のオーナーであり貫禄がある。
久しぶりに会った彼女は健康的に日に焼けており、その腕に抱かれた息子は既に三歳になったのだという。
「姫様、遅くなりましたがご結婚おめでとうございます」
「そうね。めでたいのかどうかわからないけれど、有難う。落ち着いたら式を挙げようと思っているのだけれど」
この調子じゃいつになるかわからないわねと苦笑する。
イリスは「式には絶対に呼んでくださいね」と拳を握りしめた。
「イリスがとても大切にされている貴女に祝儀として何を贈ったら良いか、私達はとても悩んだのですが」
ジェイクがそう前置きをし、チラッとソファーの後ろに置いたソレに目をやる。
はい見えてました。
貴方達が到着した時からなんとなく察していました。
見覚えのあるそのドア。
「絶対に世に出すなと口を酸っぱくして言い聞かせたはずなんですけれど」
「姫様にサプライズのプレゼントを贈りたいのだとロクを説得しました。怒らないであげてください姫様」
イリスは三歳の息子に「ほら『お願い』は?」と耳打ちし、両手を合わせ上目遣いの「おねがぁい」攻撃を受ける。
ぐっ…可愛らしいですわ…!
「し、仕方ありませんわね。今回だけは」
私が容易く陥落したところで、「遅れてすまない」とアルフレッドが応接室に入って来た。
「アベル伯爵、お初にお目にかかる」
「いや、こちらこそ。いつも妻がお世話になっているようで」
夫同士挨拶を済ませソファーに腰かける瞬間、アルフレッドも「アレは」とドアに気付いたようだ。
「こちら婚姻祝いの『どこでも異空間ドア(牧場)』でございます」
「牧場…」
「最近は農場だけでなく牧場も始めましてね。ウチで育てている牛、豚、鶏を数匹ずつ飼育場と共にプレゼントです」
「いや、ジェイク殿には農場の方でも品種改良された苗などをいただいて、それだけでも充分」
「受け取っていただけないと?」
イリスが素早く息子に耳打ちし、アルフレッドは三歳児の「おねがぁい」攻撃を受ける。
「うっ…勿論、有難く頂戴する。それでは今後、また別の形で恩返しさせていただくことにしよう」
「良かった。管理の方はどうなさいます?事情を分かってる人に任せないといけないでしょうし」
「今回もイサムに任せようと思いますわ。子供達にも魔物肉以外の美味しいお肉を食べてもらいたいし」
我が領の食糧担当ね、と扇子の下でオホホと笑う。
最近忙しすぎて本業の盗賊が出来ていないらしが、子供達と一緒に過ごすイサムはとても楽しそうだしこちらの方が絶対性に合ってるだろう。
「滞在中にイサムの子供達にも会っていきましょうアナタ」
「そうだね。ウチの子と似たような年頃の子もいるだろうし、きっと楽しいね」
そんなこんなでアベル領は平和そのものだった。
彼女が襲来するまでは。
豪奢な馬車、そしてドレス。金の巻き髪、エメラルドの瞳。
侍女と護衛を一人ずつ連れて。
公爵令嬢ソフィーナが、台風の如くアベル領にやってきた。
「アルフレッド殿下は何処ですの?」
彼に会いに来たんですけれどと応接室のソファーに座るのは、アルフレッドの元婚約者ソフィーナ・ベリアだ。
流石公爵令嬢らしく、圧がある。
「先触れはございませんでしたが、どのようなご用件で?」
「それを貴女に話す必要があって?そもそも貴女は誰なんですの?」
「アベル伯爵夫人…ですが」
最初に名乗らなかったかしらと自己紹介する。
わかっていなかったのか、ソフィーナはポロリと手に持った扇子を落とした。
「ど、どうして生きているんですの?お父様の話では死んだと」
「え、クリストさんは公爵家に帰ったんですわよね?聞いておりませんの?」
「それは、でも嘘だと思いましたの!だってお父様の方が正しいって決まってますもの」
そんな、と酷くショックを受けたような顔をしている。
私が生きているとなにか不都合なことでもあるのだろうか。
「アルフレッドは今、領地を囲む城壁の視察に行っていますが」
「アルフレッド?…呼び捨て?」
「…?夫ですから」
「わたくしの元婚約者ですわよっ?」
話が嚙み合わない。
どうやらソフィーナは、婚約が解消されてもアルフレッドとの関係は変わっていないと思っている様子。
ふぅん?と顎に手をやり思案する。
あまりにも攻撃的ならと追い返そうかとも思ったが、これならアルフレッドに会わせてみても面白そうだ。
「行ってみます?視察しているアルフレッドの処へ」
「わたくしが行くんですの?呼び戻すのではなく?」
「折角いらしたんですから、街の様子も是非見ていってくださいまし」
さあさあと手を引くと渋々立ち上がる。
彼女の侍女と護衛が慌てたように跡をついてきた。
「おそらく南側の城壁ですわ。歩きで行きます?それとも」
「馬車で行きますわ!貴女、一緒に乗って案内なさい」
「でも四人も乗ったら狭くありませんこと?」
私が指摘するとソフィーナは「そうね」と考え込み、侍女に「クララは残りなさい」と告げた。
「そんな、お嬢様」
「ヤナギを連れていくから大丈夫よ。クララは此処に残って、今日わたくしが泊る部屋を整えておくのよ」
何も聞いていないが今日はこの邸に泊まるつもりらしい。
私がヨツイに目配せしたので、そちらは上手くやるだろう。
馬車を走らせると南の城壁まではあっという間だ。
城壁の前では結成したばかりのアベル騎士団が訓練しているところだった。
「ユーリじゃねぇか。どうした?差し入れか?」
「違いますわ、アルフレッドにお客様です。兄様、こちらベリア公爵令嬢ソフィーナ様ですわ」
紹介すると、トーマが私の兄だと察したソフィーナ嬢が綺麗にカーテシーをする。
トーマは無遠慮に「そうか、俺はユーリの兄のトーマだ」と言ってその頭に手を乗せて撫でた。
「…!?」
やると思った。
相手が公爵令嬢だろうと何だろうと、トーマはこういう男だ。
髪をグシャグシャにされ、ソフィーナ嬢は頭を下げたまま呆然としている。
「申し訳ありません、悪気はないのです」
「そ、そ、そうなのですね」
「クリストの妹…、そうかユーリと同い年の妹がいるって言ってたな!仲良くしてやってくれ、ウチの妹は友達いないから!」
くっ…このノンデリの筋肉ダルマめ!
気が付けば渾身の拳が鳩尾にめり込んでトーマが白目を剝いている。
「ぐ…はっ…!油断したぜ、猫かぶりモードの時にこんな攻撃をされるとは」
「まぁ、おほほほほ!嫌ですわ兄様ったら、そんな大袈裟に痛がって」
行きましょとソフィーナ嬢を先に促す。
城壁の中へと入り、私はソフィーナ嬢の乱れた髪を手早く直してあげた。
「…貴女、友達いないんですの?」
「うぐっ…、そこ、気になります?」
貴族の世界で一番身分が低いとされる男爵の令嬢。
貴族らしく振舞えば馬鹿にされないだろうと思って努力したが、それが余計に壁を作っていたらしい。
気付いた時にはもう手遅れで。
平民のようだと蔑まれることも立派な貴族令嬢だと褒められることもない中途半端な立場で、私は学園の三年間を過ごした。
「人付き合いは難しいですわ。私だけ努力すれば叶うものでもなくて」
「それは…わかりますわ」
共感することがあったのか、ソフィーナ嬢がしんみりと同意する。
「では、わたくしがお友達になってさしあげてもよろしくてよ」
「…はい?」
いかにも同情している風に聞こえるが、私にはわかる。
この子も友達が出来なかった同類なのだと。
「今日からわたくしが貴女のお友達ですわ!わたくしのことはソフィとお呼びなさい」
「あ、はい。では私のことはユーリと」
「わかりましたわ、ユーリ」
呼んで呼んでと期待の目を向けられ、私は戸惑いながら「ソフィ」と名を呼ぶ。
お友達と言って笑うソフィーナ嬢は、公爵令嬢の圧も何もないただの十八歳の女の子に見えた。
10
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~
ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。
異世界転生しちゃいました。
そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど
チート無いみたいだけど?
おばあちゃんよく分かんないわぁ。
頭は老人 体は子供
乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。
当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。
訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。
おばあちゃん奮闘記です。
果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか?
[第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。
第二章 学園編 始まりました。
いよいよゲームスタートです!
[1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。
話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。
おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので)
初投稿です
不慣れですが宜しくお願いします。
最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。
申し訳ございません。
少しづつ修正して纏めていこうと思います。
異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』
アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた
【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。
カクヨム版の
分割投稿となりますので
一話が長かったり短かったりしています。
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
みんなで転生〜チートな従魔と普通の私でほのぼの異世界生活〜
ノデミチ
ファンタジー
西門 愛衣楽、19歳。花の短大生。
年明けの誕生日も近いのに、未だ就活中。
そんな彼女の癒しは3匹のペット達。
シベリアンハスキーのコロ。
カナリアのカナ。
キバラガメのキィ。
犬と小鳥は、元は父のペットだったけど、母が出て行ってから父は変わってしまった…。
ペットの世話もせず、それどころか働く意欲も失い酒に溺れて…。
挙句に無理心中しようとして家に火を付けて焼け死んで。
アイラもペット達も焼け死んでしまう。
それを不憫に思った異世界の神が、自らの世界へ招き入れる。せっかくだからとペット達も一緒に。
何故かペット達がチートな力を持って…。
アイラは只の幼女になって…。
そんな彼女達のほのぼの異世界生活。
テイマー物 第3弾。
カクヨムでも公開中。
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ
トール
恋愛
会社帰り、駅までの道程を歩いていたはずの北野 雅(36)は、いつの間にか森の中に佇んでいた。困惑して家に帰りたいと願った雅の前に現れたのはなんと実家を模した家で!?
自身が願った事が現実になる能力を手に入れた雅が望んだのは冒険ではなく、“森に引きこもって生きる! ”だった。
果たして雅は独りで生きていけるのか!?
実は神様になっていたズボラ女と、それに巻き込まれる人々(神々)とのドタバタラブ? コメディ。
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる