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プロローグ『集められた13人』

第3話『開幕』

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『やぁやぁみなさん』
突然どこからともなく、例の高い声が響いた。
私は足を止める。
「あ、あのスピーカーね」
葵が指さす。
指さされた先は、円形に並んだ椅子の中央にスピーカーが佇んでいた。
「おい、誰だか知らねぇけどよ。こんなことやめてくれ」
と皇が興奮しているのか大声で訴える。
『なんだ、死体を見て弱気になったか』
当然、訴えは意味を持たない。そして再び笑い声が聞こえてきた。
『いいだろう。ならば、処刑方法を変更しよう・・・。そうだな、君たちで実行してもらおう』
「ど、どういうことなんだよ」
望月が言った。過呼吸になっていて、既に疲労困憊なようだ。
『処刑は君たちがするということだよ』
・・・10秒ほど、まるで人がいなくなったかのように静寂に包まれた。
『まぁそういうことだ。もうすぐ夜だ。全員、自分の部屋に待機するんだ。朝になるまでに人狼はここに集まって顔合わせすること、以上』
そう言い残して、再び静かになった。
「今は、あいつの言うことに従うしかないんじゃないのか」
と竜也が戸惑いながらもみんなに呼びかける。
「そ、そうだよ!」
私も声をあげた。

ここが自分の個室か。
どうやらそれぞれの個室が用意されているらしい。
ホテルの一室のようだった。
何かの動物の皮が張られたランプと、西洋という言葉が似あう棚。ベージュの壁と天井。人が2人は入れるほどの大きいベッド。
一体、ゲームマスターはなぜここまでするのだろう。
私たちになぜ人狼ゲームをさせようとしているのか。
そもそもゲームマスターとは何者なのか。
何を思ったわけでもなく、扉の鍵を閉めようと思ったとき、私はあることに気付いた。
鍵が付いていない・・・。
つまり、他の個室には入り放題ということだ。そして、人狼も簡単に襲撃できる・・・。
とても安心できない。
安心はできないけど、でも・・・。
疲れ切っていたのか、私はベッドにダイブしていた・・・。

『朝だ。全員広間に集合し、日没までに人狼だと思う人間に投票をし、最も票が多かった人間を処刑しろ』
あの忌まわしき高い声・・・。
その高い声に、脳は敏感に反応した。
私はその声で目を覚ました。
意外と長時間眠っていたようだが、疲れが取れた感覚は一切無い。
広間―。昨日の椅子の場所か。
私は力なく、ベッドから腰を上げた。
重い足取りで扉を開け、廊下へ出た。
その廊下をまっすぐと広間の方向へ進む。
広間に着くと、既に数名の人物が集まっていた。
「あ、桜子ちゃん、おはよう」
明らかな作り笑いをしながら葵は私に向かって言った。
私も無理に笑顔を作って、
「おはよう」
と返した。無論、良い気分ではないが、何もないよりはましだろう。
「人狼同士は既に把握しあってるんだよな、これってよ」
と辻が確認するようにみんなに問いかけた。
「昨日の夜の時点で顔合わせしてるはずだからな」
相変わらず冷静な藤巻。やっぱり、この男の神経は理解できない。
その後、里香と刀根、竜也が広間に入ってきた。
「全員集合という感じだな」
藤巻は、みんなの顔をぐるりと見回した。
何とも言えない緊張感が胸の中を駆け巡る。
「正直に言ってくれ、誰が人狼だ?」
と藤巻が強い口調で言った。
誰も口を開かない。
藤巻は顎に手を当てて、
「まぁ出ないだろうな」
「こういうゲームって進行ってのがいるんだよね」
刀根が視線を床に落としたまま、誰の顔も見ずに言った。
「こんな疑心暗鬼な状況では、進行がいないとかなりきついでしょうね」
ゆっくりとリンが口を動かす。
そう、今は誰も信じられない。
この中に3人もの人狼がいる。
私は絶対にここから脱出してみせる・・・。
人狼を見つけ出して・・・。
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