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プロローグ『集められた13人』
第1話『困惑』
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「おーい、桜子ー」
自分の名前を呼ばれた気がした。
「おい、起きろって」
次に何か揺さぶられた気がした。
目を開けると、光が視界を覆った。
真っ白だった光は、時間が経つにつれて消えていき、同時に光景が鮮明になってきた。
人の顔がある。しかも、私がよく知っている顔が。
「竜也・・・」
「おう、やっと目が覚めたか。死んじまったかと思ったよ」
彼、日下部竜也は歯を見せて笑った。
「そんなことより・・・」
私は竜也からまわりへ視線を移した。
鼠色の汚れた壁と天井、そして十数人の人間。その人たちの表情は、明らかに曇っていた。
「一体ここは・・・」
自分でも驚くほど声が掠れた。
「どうやら、変なところに閉じ込められちまったみたいだ」
と竜也が目を伏せて言った。
閉じ込められた―?どういうこと―?
私の心中の声が聞こえたのか、それに答えるように、
「全くよくわからないなぁ」
と竜也が頭をかきながら言う。
「あ、桜子ちゃん、目が覚めたんだね!」
起き上がった私の隣に、見覚えのある顔が現れた。
自分のクラスの学級委員、國重葵。
「あ、葵・・・。なんであなたが?」
「私だけじゃないわよ」
もう一度、みんなの顔を窺う。
全員、クラスメイト・・・!?
自分のクラスメイトがこの薄暗い部屋に集まっているのだ。
私は人数を数えた。
12人―。
私も合わせて13人・・・。なんで他の子はいないのだろう。
「一体、どこなんだここは・・・」
とクラス一の頭脳を持つ皇健市が言った。
もちろん、この質問に答えられる者などいなかった。
「何かとても気味が悪いです・・・」
クラスメイトで唯一敬語を使う小椋リンは、顔が若干こわばっていた。
手が小刻みに震えているのが確認できる。
「まさか、誰かのイタズラなのー?」
クラス一の天然、針谷里香の顔は笑顔ではないが、口調は能天気だった。
「それにしても、なんて薄暗い部屋なのかしら・・・」
私は改めて部屋を見渡した。
「まるで牢獄だな」
藤巻英樹が壁にすがって手を組んで、口を開いた。その口調に焦りや動揺はまるで感じられない。
「薄暗くて鼠色の壁と天井、小窓のような鉄格子、そしてこの鉄でできた扉。まさに牢獄だ」
彼は態勢を保ったまま、口を動かす。
「おいおい、牢獄って・・・」
色黒の黒元壮太郎は戸惑いを見せた。
でも、たしかにここは牢獄に見える。鉄格子と鉄扉が、この部屋の虚無感を作り出しているように思える。
そして冷静な人物はもうひとりいた。
大道寺紅未。彼女の表情もあまり変わっていなかった。やはり、藤巻同様焦っている様子は見られない。
この不可解な状況でも冷静でいられる2人はどういう神経をしているのだろう。
「嫌だよ・・・。はやく、帰りたい・・・」
と力の無い声で、刀根佐久人は言った。
普段も気弱なせいか、顔は既に青い。
「おい刀根君。そんなに、弱音を吐いてどうする」
礼儀の正しい辻信夫が強い口調で、刀根に声をかける。
そして辻の隣には、印牧江利亜がうつむいて座っている。
かなり空気の重い部屋だ。
私はため息をついた。
そのため息が終わった直後、突然それは響いた。
『全員目を覚ましたようだね』
その声は、極端に高かった。サスペンスに出てくるヘリウムガスを吸ったときの声に似ている。
「な、なんだ・・・」
黒元が焦る。
『これより君たちには・・・人狼ゲームをしてもらう』
スピーカーから発せられた言葉を、私は瞬時には理解できなかった。
「人狼ゲーム・・・だと?」
と皇はスピーカーを睨んで言った。
当然、スピーカーはひるむことなく、あの薄気味悪く高い声を発する。
『人狼ゲームのルールは、もちろん知っているよな?』
「人狼は知ってるけど、詳しいルールやら何やらは全く知らないね」
竜也は再び頭をかきむしる。
私も人狼ゲームというものに詳しくはない。もちろん、存在は知っているが。
「人狼ゲームだって!?ひぃぃ」
望月司が顔を真っ青にして言う。
「全く、人狼ゲームも知らないのか」
藤巻はそう言うと、部屋の中央へ足を運んだ。
「人狼ゲームってのはな・・・命をかけたデスゲームなんだよ」
語尾がとても強かった。
藤巻もかなりいら立っていることがわかる。
『クックック。藤巻君、簡潔な説明、感謝するよ』
「誰だか知らないが、お前に感謝される筋合いはねぇ」
藤巻とスピーカーは、私の目の前で睨みあっていた。無論、スピーカーが睨むわけないのだが。
『クックック。まぁ、いいだろう。これから人狼ゲームの説明をする。初めての奴は、ちゃんと耳をかっぽじって聞けよ』
気持ちの悪い笑いが部屋の中を覆う。
なんなのだろう。命をかけたデスゲームって・・・。
自分の名前を呼ばれた気がした。
「おい、起きろって」
次に何か揺さぶられた気がした。
目を開けると、光が視界を覆った。
真っ白だった光は、時間が経つにつれて消えていき、同時に光景が鮮明になってきた。
人の顔がある。しかも、私がよく知っている顔が。
「竜也・・・」
「おう、やっと目が覚めたか。死んじまったかと思ったよ」
彼、日下部竜也は歯を見せて笑った。
「そんなことより・・・」
私は竜也からまわりへ視線を移した。
鼠色の汚れた壁と天井、そして十数人の人間。その人たちの表情は、明らかに曇っていた。
「一体ここは・・・」
自分でも驚くほど声が掠れた。
「どうやら、変なところに閉じ込められちまったみたいだ」
と竜也が目を伏せて言った。
閉じ込められた―?どういうこと―?
私の心中の声が聞こえたのか、それに答えるように、
「全くよくわからないなぁ」
と竜也が頭をかきながら言う。
「あ、桜子ちゃん、目が覚めたんだね!」
起き上がった私の隣に、見覚えのある顔が現れた。
自分のクラスの学級委員、國重葵。
「あ、葵・・・。なんであなたが?」
「私だけじゃないわよ」
もう一度、みんなの顔を窺う。
全員、クラスメイト・・・!?
自分のクラスメイトがこの薄暗い部屋に集まっているのだ。
私は人数を数えた。
12人―。
私も合わせて13人・・・。なんで他の子はいないのだろう。
「一体、どこなんだここは・・・」
とクラス一の頭脳を持つ皇健市が言った。
もちろん、この質問に答えられる者などいなかった。
「何かとても気味が悪いです・・・」
クラスメイトで唯一敬語を使う小椋リンは、顔が若干こわばっていた。
手が小刻みに震えているのが確認できる。
「まさか、誰かのイタズラなのー?」
クラス一の天然、針谷里香の顔は笑顔ではないが、口調は能天気だった。
「それにしても、なんて薄暗い部屋なのかしら・・・」
私は改めて部屋を見渡した。
「まるで牢獄だな」
藤巻英樹が壁にすがって手を組んで、口を開いた。その口調に焦りや動揺はまるで感じられない。
「薄暗くて鼠色の壁と天井、小窓のような鉄格子、そしてこの鉄でできた扉。まさに牢獄だ」
彼は態勢を保ったまま、口を動かす。
「おいおい、牢獄って・・・」
色黒の黒元壮太郎は戸惑いを見せた。
でも、たしかにここは牢獄に見える。鉄格子と鉄扉が、この部屋の虚無感を作り出しているように思える。
そして冷静な人物はもうひとりいた。
大道寺紅未。彼女の表情もあまり変わっていなかった。やはり、藤巻同様焦っている様子は見られない。
この不可解な状況でも冷静でいられる2人はどういう神経をしているのだろう。
「嫌だよ・・・。はやく、帰りたい・・・」
と力の無い声で、刀根佐久人は言った。
普段も気弱なせいか、顔は既に青い。
「おい刀根君。そんなに、弱音を吐いてどうする」
礼儀の正しい辻信夫が強い口調で、刀根に声をかける。
そして辻の隣には、印牧江利亜がうつむいて座っている。
かなり空気の重い部屋だ。
私はため息をついた。
そのため息が終わった直後、突然それは響いた。
『全員目を覚ましたようだね』
その声は、極端に高かった。サスペンスに出てくるヘリウムガスを吸ったときの声に似ている。
「な、なんだ・・・」
黒元が焦る。
『これより君たちには・・・人狼ゲームをしてもらう』
スピーカーから発せられた言葉を、私は瞬時には理解できなかった。
「人狼ゲーム・・・だと?」
と皇はスピーカーを睨んで言った。
当然、スピーカーはひるむことなく、あの薄気味悪く高い声を発する。
『人狼ゲームのルールは、もちろん知っているよな?』
「人狼は知ってるけど、詳しいルールやら何やらは全く知らないね」
竜也は再び頭をかきむしる。
私も人狼ゲームというものに詳しくはない。もちろん、存在は知っているが。
「人狼ゲームだって!?ひぃぃ」
望月司が顔を真っ青にして言う。
「全く、人狼ゲームも知らないのか」
藤巻はそう言うと、部屋の中央へ足を運んだ。
「人狼ゲームってのはな・・・命をかけたデスゲームなんだよ」
語尾がとても強かった。
藤巻もかなりいら立っていることがわかる。
『クックック。藤巻君、簡潔な説明、感謝するよ』
「誰だか知らないが、お前に感謝される筋合いはねぇ」
藤巻とスピーカーは、私の目の前で睨みあっていた。無論、スピーカーが睨むわけないのだが。
『クックック。まぁ、いいだろう。これから人狼ゲームの説明をする。初めての奴は、ちゃんと耳をかっぽじって聞けよ』
気持ちの悪い笑いが部屋の中を覆う。
なんなのだろう。命をかけたデスゲームって・・・。
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