「運命の交響曲:星空に描く未来」 "Fate's Baton Entrusted to the Stars

トンカツうどん

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**第5話前半: アルカナとホムンクルスと七の影**

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地下深くに存在する研究施設。その無機質なコンクリートの壁に囲まれた廊下を、アルカナ・ウィンターズは無言で歩いていた。彼の鋭い眼光は、どこか虚無的でありながら、内に秘めたる苛立ちがわずかに伺える。その苛立ちの原因は、今日の任務について彼に指示を下す者たち――それも、自らの創り出した贋作に過ぎないホムンクルスたちだった。

「紛い物が……俺に指示をするとは、笑止千万だ」

アルカナの口から漏れた呟きは、冷え切った空気の中に鋭く響いた。彼はSPECホルダーとして、研究施設の公認を受けているが、それでもこの現状には納得がいかない。ホムンクルスなど、所詮は人間が生み出した贋作に過ぎない。それが、まるで本物の人間であるかのように振る舞い、自分に命令するなどということは、アルカナにとって屈辱以外の何物でもなかった。

その時、廊下の先からゆっくりと近づいてくる影があった。ホムンクルスの一体だ。彼らは感情を持たず、ただ命令を遂行するためだけに存在する――それが、アルカナには不気味であり、同時に腹立たしかった。

「アルカナ・ウィンターズ、お前の任務がある」

無機質な声が響き渡る。ホムンクルスの一体が、アルカナに向かって言葉を投げかけた。その言葉には命令の響きが含まれていた。まるで、アルカナが自分よりも下位の存在であるかのように。

「誰が命令を下したのかは知らんが……紛い物風情が、俺に指示を出すとはな」

アルカナの口調は冷たいが、内に秘めた苛立ちは隠し切れない。ホムンクルスはその言葉に反応することなく、ただ淡々と命令を伝え続けた。

「七の影の監視、およびその動向の報告を命じられている。お前は直ちに指定された地点へ向かえ」

七の影――研究施設にとって特別な存在であり、危険視される異能力者たちの集団だ。彼らの能力は並外れたものであり、その力を利用しようとする者も少なくない。しかし、アルカナにとっては、七の影もまた忌々しい存在だった。自らの力に溺れ、他者を見下す存在など、彼にとっては軽蔑すべきものでしかなかった。

「……わかった。だが、俺が命令を受けるのは、あくまで研究施設の上層部だ。貴様ら紛い物の命令に従っているわけではないことを忘れるな」

アルカナは一歩、ホムンクルスに近づいた。彼の目は冷酷さを帯び、ホムンクルスを睨みつける。しかし、ホムンクルスは微動だにせず、まるでその威圧感を感じ取ることができないかのように無反応だった。

「指示は以上だ。指定された地点へと向かえ」

それだけを告げると、ホムンクルスは無言のまま背を向けて歩き去った。アルカナはその背中をしばらく睨みつけていたが、やがてため息をつき、手に持ったカーディナル・ロッドを握り直す。

「くだらん……だが、今は従うしかない」

アルカナは自分自身にそう言い聞かせるように、静かに歩き出した。研究施設内は無機質で冷たい空気が漂っており、彼の足音だけが響く。それは、彼の心の中の苛立ちをさらに募らせるようなものだった。

ホムンクルスたちが研究施設の一部として存在していること、それが彼の苛立ちの根源であった。紛い物に指示される屈辱――それを受け入れることは、アルカナにとって耐え難いものであった。しかし、今は従うしかないという現実が、彼をさらに苛立たせる。

アルカナは、研究施設の深部へと足を向けた。そこには、七の影と呼ばれる異能力者たちが待ち受けている。彼らの力を抑え込むために、彼は戦うことになるだろう。しかし、その戦いが彼にとって何の意味を持つのか――それは、彼自身にもまだわからなかった。

彼の苛立ちと共に、物語は次の局面へと動き出す。
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