美女エルフの異世界道具屋で宝石職人してます

網野ホウ

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法王依頼編 第六章:異世界にも日本文化の対戦競技があるらしい

依頼・依頼人の壁 6

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 必要であれば好きなだけ持っていって構わないと言われても、ここに来るまではどんな物がいいかを具体的に決めていなかった二人。
 そもそもセレナは、皇居の宝物庫に行きたいという店主の希望すら聞いていなかった。

「……それにしても、よりも寄って宝物庫に行きたいって言うなんて、夢にも思わなかったわよ。何てこと口走るの、テンシュは!」

「お前に事前に行ったら絶対引き留められると思ったんでな。それにしても……まるで色の博物館だ。……台車持ってきてくれ。目星はついた」

 セレナはぶつくさ言いながら店主の言う通りに台車を持ってきた。
 すぐに箱ごと台車の上に乗せる店主。

「……なんか、盗みに働く盗賊って勢いよね」
「バカ言ってねぇで手伝え……って言っても、お前には何を持っていくか伝えてなかったな。まぁいいや。床に降ろした箱全部台車に乗せろ」

 高い棚の位置にある箱は、移動する階段を動かしてその棚の高さまで登り、下に降ろす。

「結構、量あるけど……余らない?」
「見た目だけで選んだ。内包している力のバランスを見てさらに候補を絞る。だがそれは個々でやるには時間がかかる。候補から外れたものはまた返しに来るさ。従者が待ってるっていってたな。後はそいつに一つ質問をして帰る」

 二人は秘宝庫を出て従者と会い、出口に案内してもらう。

「紋章? 国章のことですか?」
「まどろっこしいな。ウルヴェスを呼び出せ」

 法王を呼び捨てにする店主に驚く従者。
 二人の間柄が把握できない従者からの呼び出しを受けてすぐに目の前に現れる。

「一体何の……」
 妖女はややうんざりした顔。
 だが店主はそれにも構わない。

「紋章をつけたい。賞品につけなきゃ意味がねぇ。見本が欲しい」

 ウルヴェスも盲点だったらしい。ふむ、と頷く。
「確かに必要だな。後で使いの者に持っていかせよう。もう帰るのか?」

 店主が押している台車の荷を見る。

「あぁ。時間が惜しい。色合いを中心に選んだ。他の問題点はこっちでクリアする。店まで送ってくれるとありがたいんだが……あ?」

「……店だね」

 店主の最後の一言を聞いて即座に転移魔法を発動したらしい。

「台車、もらっていいのか?」
「いいわけないでしょ……」

 一時は仕事自体どうなるかと危ぶまれたが、碁盤本体の素材は、間違いなく依頼人が満足できる完成品が出来上がりそうな分は揃った。
 夜も更け、作業は依頼を受けた次の日から始めることになった。
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