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法王依頼編 第六章:異世界にも日本文化の対戦競技があるらしい
依頼・素材探しの壁 2
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「……ここを掘るために何か手続きのようなものは必要だったりするのか?」
「え? えぇ、そりゃもちろんです。国を挙げての巨塊討伐だったでしょ? そのための作戦の一つだったんですから、国に手続き申請出さないと。それに好き放題掘ってたら落盤事故だっておきちゃいますもんね」
「採掘作業は三日間だって。こんなにみんなで掘りまくってるんだから期間短くしないと、順番待ちも長くなっちゃうもんね」
ミールも話に加わる。店主は彼らに反応を示さず、セレナの方を向く。
「今の店になる前はお前一人で切り盛りしてたんだよな? お前はどこで宝石を集めてたんだ?」
「え? 私? そりゃ依頼を受けて、その仕事の最中に目につくものを拾い集めただけ」
セレナの返事に店主は頭を抱える。
「ちょ、ちょっと、どうしたの?」
「何か、深刻な悩みでも? 我々で良ければ話は聞きますよ?」
「……今更水くせぇよ。俺達ひよっこの頃から世話になってたんだし。力になるぜ?」
『風刃隊』のメンバーから慰めの声をかけられるが、店主は一掃する。
「貸しは作ってやってもいいが、借りは作る気はねぇ。その相手なしに生活できなくなっちゃ困るからな」
店主はうずくまりながらこもった声で答えた。
「借りじゃないのに……。誰からも相手にされなかったんだぜ? 俺達。初めて相手してもらって、ホンット感謝してんですって」
ギースからの感謝の言葉は店主の耳には入らない。
「何か訳ありね。テンシュ、今日一日しかないけどもしよかったら一緒に宝石採掘しない? 順番待ちの冒険者達と一緒に掘るってのはそんなに珍しくないし、掘る場所さえ間違わなければテンシュ達はあたし達と別に掘ったらいいよ。それなら貸し借りはないんじゃない? どうせあたし達も二日間でかなりいい物採れたし。横取りとかそんなんじゃないしね」
「掘る道具なら貸し出しもしてるし、採れる物にこだわりがないならすぐに採れるよ」
店主は双子から無理矢理道具を持たされる。
ギースから背中を押され、坑道の奥に向かって進み、セレナはその後についていく。
───────────
「リーダー。ちょっと掘らせたってー」
ギースが大声でワイアットを呼ぶ。
ツルハシを一生懸命振るっているワイアットが振り向く。
「……ねじり鉢巻きかよ。鉢巻きも日本独自のような気がする」
「いきなり会って何言ってんのテンシュ。で、掘るなら赤いロープで貼ってる所で掘って。でないと俺怒られるから」
入り口から百メートルほど進んだ辺りの壁に、大体直径五メートルほどの半円の形でロープが張られている。
「奥行きならどこまででも掘っていいって。こっちの壁なら隣の坑道まで壁が分厚いからだって」
店主は壁を見て呆然としている。
確かに魅力あふれる力を有している宝石の壁である。
しかし様々な色があり、輝きを持つ部分やただの色の宝石などいろいろと混ざりあって壁となっている。
玉石混淆と言う言葉がある。有する力の優劣は見られるものの、壁のどの部分を見ても力を持つ石として見ると、どの部分を採り出しても外れはない。さしずめ珠玉混合といったところ。
セレナの救出時も目には入ったが、時間との勝負と言うときにそこまで気を向けてはいられなかった。
初めてまじまじと坑道の壁を見つめる店主。
「縦、五十センチ。横、四十五センチ、高さが二十七センチ、だったな。削ることも考えて大体十センチ大きめになるくらいに採り出すか……」
力なくツルハシを振るう店主。
六つほどの塊を採り出すがどれも色がまだら模様。盤として使えるかどうかも分からない。
「テンシュ、盤だけじゃなくて石も必要よね?」
セレナからの質問に、店主の顔はさらに青くなる。
色がまちまちの石では、どちらがどの色の石を持って対局するのか分からない。
「……店に出す道具の素材としては文句はねぇが……なんてやっかいな依頼持ってきやがったんだ……。木材の方がまだマシだ」
傍にいる『風刃隊』の五人は、店主の呟きを聞いて首をかしげる。
だが店主は一呼吸おくと、さらに厳しい顔つきでその塊を手にする。
「お前ら、俺はこれだけあれば十分だ。悪いな」
「待ったテンシュ。何か問題抱えてんだろ。そこに転がってるやつで気に入ったもんがありゃ交換してもいいぜ? いいのありそうか?」
帰ろうとする店主にワイアットが助け舟を出す。しかし外見はどれも変わらない。
「好意は有り難いが、これとそんなに変わらねぇな。気遣ってもらって悪かったな」
「テンシュ……まともに返事してる……。何か悪いもの食べた?」
雰囲気をぶち壊すミール。
「あぁ、くそ意地の悪ぃジジィと昼飯をな。じゃ、帰るわ」
店主はそれなりにまともに返し、セレナを促して採掘現場を後にした。
「え? えぇ、そりゃもちろんです。国を挙げての巨塊討伐だったでしょ? そのための作戦の一つだったんですから、国に手続き申請出さないと。それに好き放題掘ってたら落盤事故だっておきちゃいますもんね」
「採掘作業は三日間だって。こんなにみんなで掘りまくってるんだから期間短くしないと、順番待ちも長くなっちゃうもんね」
ミールも話に加わる。店主は彼らに反応を示さず、セレナの方を向く。
「今の店になる前はお前一人で切り盛りしてたんだよな? お前はどこで宝石を集めてたんだ?」
「え? 私? そりゃ依頼を受けて、その仕事の最中に目につくものを拾い集めただけ」
セレナの返事に店主は頭を抱える。
「ちょ、ちょっと、どうしたの?」
「何か、深刻な悩みでも? 我々で良ければ話は聞きますよ?」
「……今更水くせぇよ。俺達ひよっこの頃から世話になってたんだし。力になるぜ?」
『風刃隊』のメンバーから慰めの声をかけられるが、店主は一掃する。
「貸しは作ってやってもいいが、借りは作る気はねぇ。その相手なしに生活できなくなっちゃ困るからな」
店主はうずくまりながらこもった声で答えた。
「借りじゃないのに……。誰からも相手にされなかったんだぜ? 俺達。初めて相手してもらって、ホンット感謝してんですって」
ギースからの感謝の言葉は店主の耳には入らない。
「何か訳ありね。テンシュ、今日一日しかないけどもしよかったら一緒に宝石採掘しない? 順番待ちの冒険者達と一緒に掘るってのはそんなに珍しくないし、掘る場所さえ間違わなければテンシュ達はあたし達と別に掘ったらいいよ。それなら貸し借りはないんじゃない? どうせあたし達も二日間でかなりいい物採れたし。横取りとかそんなんじゃないしね」
「掘る道具なら貸し出しもしてるし、採れる物にこだわりがないならすぐに採れるよ」
店主は双子から無理矢理道具を持たされる。
ギースから背中を押され、坑道の奥に向かって進み、セレナはその後についていく。
───────────
「リーダー。ちょっと掘らせたってー」
ギースが大声でワイアットを呼ぶ。
ツルハシを一生懸命振るっているワイアットが振り向く。
「……ねじり鉢巻きかよ。鉢巻きも日本独自のような気がする」
「いきなり会って何言ってんのテンシュ。で、掘るなら赤いロープで貼ってる所で掘って。でないと俺怒られるから」
入り口から百メートルほど進んだ辺りの壁に、大体直径五メートルほどの半円の形でロープが張られている。
「奥行きならどこまででも掘っていいって。こっちの壁なら隣の坑道まで壁が分厚いからだって」
店主は壁を見て呆然としている。
確かに魅力あふれる力を有している宝石の壁である。
しかし様々な色があり、輝きを持つ部分やただの色の宝石などいろいろと混ざりあって壁となっている。
玉石混淆と言う言葉がある。有する力の優劣は見られるものの、壁のどの部分を見ても力を持つ石として見ると、どの部分を採り出しても外れはない。さしずめ珠玉混合といったところ。
セレナの救出時も目には入ったが、時間との勝負と言うときにそこまで気を向けてはいられなかった。
初めてまじまじと坑道の壁を見つめる店主。
「縦、五十センチ。横、四十五センチ、高さが二十七センチ、だったな。削ることも考えて大体十センチ大きめになるくらいに採り出すか……」
力なくツルハシを振るう店主。
六つほどの塊を採り出すがどれも色がまだら模様。盤として使えるかどうかも分からない。
「テンシュ、盤だけじゃなくて石も必要よね?」
セレナからの質問に、店主の顔はさらに青くなる。
色がまちまちの石では、どちらがどの色の石を持って対局するのか分からない。
「……店に出す道具の素材としては文句はねぇが……なんてやっかいな依頼持ってきやがったんだ……。木材の方がまだマシだ」
傍にいる『風刃隊』の五人は、店主の呟きを聞いて首をかしげる。
だが店主は一呼吸おくと、さらに厳しい顔つきでその塊を手にする。
「お前ら、俺はこれだけあれば十分だ。悪いな」
「待ったテンシュ。何か問題抱えてんだろ。そこに転がってるやつで気に入ったもんがありゃ交換してもいいぜ? いいのありそうか?」
帰ろうとする店主にワイアットが助け舟を出す。しかし外見はどれも変わらない。
「好意は有り難いが、これとそんなに変わらねぇな。気遣ってもらって悪かったな」
「テンシュ……まともに返事してる……。何か悪いもの食べた?」
雰囲気をぶち壊すミール。
「あぁ、くそ意地の悪ぃジジィと昼飯をな。じゃ、帰るわ」
店主はそれなりにまともに返し、セレナを促して採掘現場を後にした。
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