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巨塊討伐編 第三章:セレナの役目、店主の役目
バイトにて、ミールの災難 2
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バイト先の『法具店アマミ』で、一日の最後の仕事として夕食後『ホットライン』への伝言を店主から頼まれたミール。
彼らの拠点がある斡旋所の付近で、苦手意識を持つキューリアと偶然に会った。
「そ……そっか……。ヘンなこと言っちゃってごめんね……。バイト続いてたんだ。でもテンシュの店でバイトなんて大変そうだね。気難しいんじゃない? で、バイトでここまでお出かけってことは、ミールちゃんも買い出し?」
「い、いえ。『ホットライン』の皆さんから依頼されてた道具の作製が終わったので、そのことを伝えに行けと……」
キューリアの顔が明るくなる。
「ホント?! みんなの分完成させたの? じゃあ一緒に行こっか。私もう帰るとこだから」
両手に持っていた荷物を片手にまとめ、空いた手でミールの片手を掴んで引っ張る。
「みんな喜ぶよ~。ミールちゃんから早くみんなに伝えないと」
「え? あ、いや、キューリアさんから皆さんに伝え……」
何でもいいから理由をつけてキューリアから離れたいミール。
そこまで苦手意識を持っていたが、キューリアはと言うと。
「あなたがテンシュさんから言われてきたんでしょ? ってことは、あなたから直接みんなに言わなきゃダメよ。それがあなたの仕事なんだから。それに一人で行くのもつまんないしっ。ほらほら、ボーっとしないっ。すぐそこなの知ってるでしょ? 一緒に行きましょっ」
喜びながらミールを無理やり引っ張るキューリア。
何度か『風刃隊』のメンバーと来たことがある『ホットライン』の拠点。
道案内されるまでもない。
仕事についてなら、確かにキューリアの言う通り。人任せにして、雇い主の言われた通りにならなかったら、その人の失敗ではあるが自分のミスになる。確実に仕事をやり遂げるなら自分から動いて役目を果たすのが当然である。
すぐそこなら一人で行くのがつまらないなんて思うヒマもないよねぇ?
そんな質問をすることも出来ず、ミールは泣きそうな顔のまま力づくで引っ張られていく。
「じゃあちょっと待っててね。ブレイク呼んでくるから」
拠点の建物の入り口に一人取り残されるミール。
冒険者チームの拠点の中には、無関係な者を滅多に入れることはない。
入れるとしたらせいぜい客間まで。襲撃された時に、建物の内部を知られているとすぐにその急所を突かれてしまうためだ。
覗き窓はある。しかし外から中の様子は見ることは出来ない。
それでもなかなか外に出てこない『ホットライン』のメンバー。
早く用件を済ませて帰りたい。
そんな思いが強くなるミール。
中の様子を覗いたところで、誰かがやって来る時間が早まるわけではない。
が、待つのももどかしい。
「何やってんだろ。まだ来ないかなぁ……」
つい除き窓に目を近づけた。
「出来たって?!」
ガンッ!
まさかのタイミングだった。
鼻っ柱を強く打ち、その衝撃で後ろに尻餅をつく。
道具完成の報告を受けたブレイドが興奮して急いでドアを開ける。
勢いよく開いたドアの角にミールの鼻があった。
「あ……」
「あ……。な、なぁにやってんのよ、ブレイク! ご、ごめんね、ミールちゃん。痛く……ないわけないよね。お薬つけたげる。中に入って。ほら、ブレイド! お薬用意してっ!」
「あ……あぁ……。ご、ごめんな、ミー」
「いいから薬っ! 早く出せっ!」
キューリアに怒鳴られたブレイドは、小さくなりながら薬を取りに戻る。
早く帰りたかったミールは、帰る時間がさらに遅れることになる。
彼らの拠点がある斡旋所の付近で、苦手意識を持つキューリアと偶然に会った。
「そ……そっか……。ヘンなこと言っちゃってごめんね……。バイト続いてたんだ。でもテンシュの店でバイトなんて大変そうだね。気難しいんじゃない? で、バイトでここまでお出かけってことは、ミールちゃんも買い出し?」
「い、いえ。『ホットライン』の皆さんから依頼されてた道具の作製が終わったので、そのことを伝えに行けと……」
キューリアの顔が明るくなる。
「ホント?! みんなの分完成させたの? じゃあ一緒に行こっか。私もう帰るとこだから」
両手に持っていた荷物を片手にまとめ、空いた手でミールの片手を掴んで引っ張る。
「みんな喜ぶよ~。ミールちゃんから早くみんなに伝えないと」
「え? あ、いや、キューリアさんから皆さんに伝え……」
何でもいいから理由をつけてキューリアから離れたいミール。
そこまで苦手意識を持っていたが、キューリアはと言うと。
「あなたがテンシュさんから言われてきたんでしょ? ってことは、あなたから直接みんなに言わなきゃダメよ。それがあなたの仕事なんだから。それに一人で行くのもつまんないしっ。ほらほら、ボーっとしないっ。すぐそこなの知ってるでしょ? 一緒に行きましょっ」
喜びながらミールを無理やり引っ張るキューリア。
何度か『風刃隊』のメンバーと来たことがある『ホットライン』の拠点。
道案内されるまでもない。
仕事についてなら、確かにキューリアの言う通り。人任せにして、雇い主の言われた通りにならなかったら、その人の失敗ではあるが自分のミスになる。確実に仕事をやり遂げるなら自分から動いて役目を果たすのが当然である。
すぐそこなら一人で行くのがつまらないなんて思うヒマもないよねぇ?
そんな質問をすることも出来ず、ミールは泣きそうな顔のまま力づくで引っ張られていく。
「じゃあちょっと待っててね。ブレイク呼んでくるから」
拠点の建物の入り口に一人取り残されるミール。
冒険者チームの拠点の中には、無関係な者を滅多に入れることはない。
入れるとしたらせいぜい客間まで。襲撃された時に、建物の内部を知られているとすぐにその急所を突かれてしまうためだ。
覗き窓はある。しかし外から中の様子は見ることは出来ない。
それでもなかなか外に出てこない『ホットライン』のメンバー。
早く用件を済ませて帰りたい。
そんな思いが強くなるミール。
中の様子を覗いたところで、誰かがやって来る時間が早まるわけではない。
が、待つのももどかしい。
「何やってんだろ。まだ来ないかなぁ……」
つい除き窓に目を近づけた。
「出来たって?!」
ガンッ!
まさかのタイミングだった。
鼻っ柱を強く打ち、その衝撃で後ろに尻餅をつく。
道具完成の報告を受けたブレイドが興奮して急いでドアを開ける。
勢いよく開いたドアの角にミールの鼻があった。
「あ……」
「あ……。な、なぁにやってんのよ、ブレイク! ご、ごめんね、ミールちゃん。痛く……ないわけないよね。お薬つけたげる。中に入って。ほら、ブレイド! お薬用意してっ!」
「あ……あぁ……。ご、ごめんな、ミー」
「いいから薬っ! 早く出せっ!」
キューリアに怒鳴られたブレイドは、小さくなりながら薬を取りに戻る。
早く帰りたかったミールは、帰る時間がさらに遅れることになる。
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