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『法具店アマミ』再出発編 第十章 店主が背負い込んだもの
『法具店アマミ』の休暇の日 みなさーん、遠足ですよー
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『法具店アマミ』の休業日。
養子として受け入れられた子供達はその家族に付き添われ、そうではない子供達は普段通りに店の前に集まっている。しかしその時間はいつもよりも約一時間早い。
ウルヴェスは己の身に不可視の幻術をかけ、子供達の警護にまわる。
比較的魔力が低めの『風刃隊』は、テントや食料などの生活必需品の荷物持ち。周囲の観察能力の範囲が広い『クロムハード』のメンバーは移動中のこの集団の最後尾から監視担当。飛行能力や機動力が高いメンバーを有している『ホットライン』はその外側の左右に分かれ周囲を警戒。
集まった子供達も様々な種族があり、体力も移動速度もまちまち。
話を聞いて初めてやってくる子供達もいる。何度も来ている子供達の中には、店主が覚えられない者もいる。
十七人ほど集まったが、店主はその人数を把握していない。
それでもセレナ達からは店の前で集合する人数と一致していることを確認できた報告を受け、子供達を引き受けた家族達から見守られながら出発した。
「お前らなぁ、三列か四列になって移動しろっつったろ? なんで俺の周りに集まりたがるんだよ」
移動時の説明を何度もしたのだが、座学から屋外での勉強の実践をするというある意味の解放感で、店主をはじめとする保護者役の全員はなかなか子供達の統率がとれない。
しかし移動中であっても店主の周りから離れようとしない子供達を警護する役の者達にとっては比較的楽な仕事になった。はぐれる者がいないからである。
「移動速度が遅くなると、予定の時間通りに休憩場所に到着するのは難しいわよね」
「ウルヴェスさ……んに一喝してもらうとかは……」
「萎縮どころじゃすまなくなるわよ、それ……」
怖いもの知らずの子供達だが、法王が姿を現せばおそらくそれだけで子供達は混乱するだろう。
その姿を見ただけで親しくなりたいと誰もが思うだろうが、彼女の持つ力に恐れおののくことも想像がたやすい。
シエラの意見を否定するリメリアの気持ちも分かる。
それにしても、同行する冒険者にまとわりつく子供達は数えるほどしかいないのも、なんとなく納得がいかない者もいる。
「私達は爬虫類の獣人族だから爬虫類が嫌いって人には不人気だけどさ、セレナさんに寄り付く子、もっといてもいいと思うんだけどねぇ」
「キューリアさんだって、割と一般人の目を惹いたりするんだけどね」
「けどよぉ、子供達ってのは、キレイどころにも興味惹くけど、タフさ、頑丈さにも付きまとうもんだぜ? エンビーさんやブレイドさんだって関心持たれるタイプだと思うんだがなぁ」
そんな会話を交わしながら子供達と一緒に動く荷物持ちの『風刃隊』。
「でも、現場に到着して素材集め始めたら、人気は絶対テンシュさんからほかの人達に移ると思うんですよ。だってテンシュさんはテントの留守番するんですよね? 冒険者達の皆さんは警護しながらその作業でしょ? 見せ場絶対ありますよ」
「別に人気が欲しいってわけじゃありませんけどね」
「でも子供達の人気が斡旋所の依頼数の増加に繋がるかもしれないとか思うと、それはそれで侮れねぇな」
その会話にシエラが混ざり、さらに盛り上がるが
「足元にまとわりついて歩きづれぇんだよ! お前ら何とかしてもうちょっと引き離せや」
思わずその『風刃隊』に助けを求めた、さすがの店主もたじたじである。
予定の時間から少し遅れて休憩地点に到着。移動中に合流する子供達も現れる。
全員が揃ったと思われる子供達の前で、冒険者達から改めてきつく注意を受ける子供達。
「ナメられてんのかな、俺……」
「好かれてるのよ。悪いことじゃないと思うけどね」
自分の言うことよりも、あまり接したことのない者達からの注意には素直に反応する子供達を見てぼやく店主。
それを見て、『クロムハード』のニードルが店主に声をかける。
「とりあえず、遅れた時間取り戻せたらいいよね。そんなに遅れてないから大丈夫だと思うけど」
同僚のスリングが予定表と、彼女の持つ懐中時計で現在時刻を確認する。
子供達のおやつの時間でいくらか体力は回復される。そんな子供達の様子を見て、時間の遅れの懸念は解消されそうと店主は判断する。
「にしても、というか当たり前だが、魔物が現れないってのは楽な道中の警護だな。油断はするつもりはないが」
穏やかな雰囲気を持ちながらも冒険者として至極当然な心構えを常に持ちながらブレイドが混ざる。
冒険者一同その意思を統一させる。
しかし誰からも姿をみられることがないが故に、その警戒心も悟られることのないウルヴェスは一人、その子供達の集団に目を光らせていた。
養子として受け入れられた子供達はその家族に付き添われ、そうではない子供達は普段通りに店の前に集まっている。しかしその時間はいつもよりも約一時間早い。
ウルヴェスは己の身に不可視の幻術をかけ、子供達の警護にまわる。
比較的魔力が低めの『風刃隊』は、テントや食料などの生活必需品の荷物持ち。周囲の観察能力の範囲が広い『クロムハード』のメンバーは移動中のこの集団の最後尾から監視担当。飛行能力や機動力が高いメンバーを有している『ホットライン』はその外側の左右に分かれ周囲を警戒。
集まった子供達も様々な種族があり、体力も移動速度もまちまち。
話を聞いて初めてやってくる子供達もいる。何度も来ている子供達の中には、店主が覚えられない者もいる。
十七人ほど集まったが、店主はその人数を把握していない。
それでもセレナ達からは店の前で集合する人数と一致していることを確認できた報告を受け、子供達を引き受けた家族達から見守られながら出発した。
「お前らなぁ、三列か四列になって移動しろっつったろ? なんで俺の周りに集まりたがるんだよ」
移動時の説明を何度もしたのだが、座学から屋外での勉強の実践をするというある意味の解放感で、店主をはじめとする保護者役の全員はなかなか子供達の統率がとれない。
しかし移動中であっても店主の周りから離れようとしない子供達を警護する役の者達にとっては比較的楽な仕事になった。はぐれる者がいないからである。
「移動速度が遅くなると、予定の時間通りに休憩場所に到着するのは難しいわよね」
「ウルヴェスさ……んに一喝してもらうとかは……」
「萎縮どころじゃすまなくなるわよ、それ……」
怖いもの知らずの子供達だが、法王が姿を現せばおそらくそれだけで子供達は混乱するだろう。
その姿を見ただけで親しくなりたいと誰もが思うだろうが、彼女の持つ力に恐れおののくことも想像がたやすい。
シエラの意見を否定するリメリアの気持ちも分かる。
それにしても、同行する冒険者にまとわりつく子供達は数えるほどしかいないのも、なんとなく納得がいかない者もいる。
「私達は爬虫類の獣人族だから爬虫類が嫌いって人には不人気だけどさ、セレナさんに寄り付く子、もっといてもいいと思うんだけどねぇ」
「キューリアさんだって、割と一般人の目を惹いたりするんだけどね」
「けどよぉ、子供達ってのは、キレイどころにも興味惹くけど、タフさ、頑丈さにも付きまとうもんだぜ? エンビーさんやブレイドさんだって関心持たれるタイプだと思うんだがなぁ」
そんな会話を交わしながら子供達と一緒に動く荷物持ちの『風刃隊』。
「でも、現場に到着して素材集め始めたら、人気は絶対テンシュさんからほかの人達に移ると思うんですよ。だってテンシュさんはテントの留守番するんですよね? 冒険者達の皆さんは警護しながらその作業でしょ? 見せ場絶対ありますよ」
「別に人気が欲しいってわけじゃありませんけどね」
「でも子供達の人気が斡旋所の依頼数の増加に繋がるかもしれないとか思うと、それはそれで侮れねぇな」
その会話にシエラが混ざり、さらに盛り上がるが
「足元にまとわりついて歩きづれぇんだよ! お前ら何とかしてもうちょっと引き離せや」
思わずその『風刃隊』に助けを求めた、さすがの店主もたじたじである。
予定の時間から少し遅れて休憩地点に到着。移動中に合流する子供達も現れる。
全員が揃ったと思われる子供達の前で、冒険者達から改めてきつく注意を受ける子供達。
「ナメられてんのかな、俺……」
「好かれてるのよ。悪いことじゃないと思うけどね」
自分の言うことよりも、あまり接したことのない者達からの注意には素直に反応する子供達を見てぼやく店主。
それを見て、『クロムハード』のニードルが店主に声をかける。
「とりあえず、遅れた時間取り戻せたらいいよね。そんなに遅れてないから大丈夫だと思うけど」
同僚のスリングが予定表と、彼女の持つ懐中時計で現在時刻を確認する。
子供達のおやつの時間でいくらか体力は回復される。そんな子供達の様子を見て、時間の遅れの懸念は解消されそうと店主は判断する。
「にしても、というか当たり前だが、魔物が現れないってのは楽な道中の警護だな。油断はするつもりはないが」
穏やかな雰囲気を持ちながらも冒険者として至極当然な心構えを常に持ちながらブレイドが混ざる。
冒険者一同その意思を統一させる。
しかし誰からも姿をみられることがないが故に、その警戒心も悟られることのないウルヴェスは一人、その子供達の集団に目を光らせていた。
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