450 / 493
シアンの婚約者編
フレイミーの独白の続き並びに素性4
しおりを挟む
陛下は私を、その男が営んでいる店に連れてくださいました。
陛下が私を連れてくださった目的は、ご自身の交友関係を私に知ってもらいたい、とのことから。
「……フレイミー様。元旗手とやらの店に行かれると聞きました。我々護衛隊も同行させていただきます」
と、隊長のアーズからの申し出からのやりとりもありましたが、それはひとまず置いといて。
しかし私は違いました。
その男とともにいる、希少種の魔物との交流。
そして私の屋敷に連れて帰ること。
いきなり二つ目の目的を果たすのは難しい、と我ながら思うけど、その下準備はしっかりと終わらせたい。
けれど、それができなかった。
……自分でも分かっていました。
その男の店の様子を知った時に、邪な思いが湧き出てきたのを。
その魔物達は、主であるその男に無理やり従わせている。
そうでなかったとしても、魔物達はその男に渋々従っている。
と思っていました。
けど現実は違い、あの男にじゃれつき、纏わりつき、時には怒り、叱り飛ばし、あげく、あの男が魔物達に蹴飛ばされたり叩かれたりしている。
なぜそんなにも、彼らはあの男にそこまで懐いているのでしょうか。
そして、その男と親し気に話をしている陛下のお顔を見た時に、醜い思いが湧き出てきたのを。
なぜ陛下は、あの男のことを話しているとき以上に、あの男と一緒にいる時にはこんなにも和やかなお顔をしているのでしょう?
……どうして私には、この男よりも知力も魔力も、おそらくは体力もはるかに上回る私には、この魔物達からは慕われないのでしょう?
……どうして私に、陛下はそのようなお顔を向けてくれないのでしょう?
そこで私は思いつきました。
そもそも私は、その魔物達を保護しようと考えてました。
その魔物達と会話していくうちに、彼の者の作るおにぎりが鍵であることを知りました。
ならば、この者を私の指揮下に入れればいい。
この者が欲しい物、求める物があれば与えればいい。
望むことがあれば叶えてやればいい。
その代わり、この店を私の管理下に置く。
そうすれば、この魔物達だって、より多くの人達との交流が持てるはず。
そうなれば、多くの人達が、彼らを理解するはず。
これこそが、この希少種の魔物を保護するだけでなく、国民にとっても、珍しい種族と交流することで生活の刺激となり、活力を生む娯楽となるはず。
なのに、この男……。
いや、この男の傍から離れないこの女……。
家族?
何を血迷ったことを口走っているのか!
※※※※※ ※※※※※
「か、家族? どういうこと?!」
何だよこの女。
急に声を荒げて首突っ込んできやがって。
「え? え、えぇ。というか、もう家族でしょ。ご飯一緒に食べるし、ンーゴはいつも地中で寝るけど、他のみんなはこの店の奥で、それぞれ自室で寝てるし。あ、ミアーノとテンちゃんは、時々別のところで寝るよね」
「おりゃあ時々、体調次第じゃ土の中の方が居心地いいときあるしなぁ」
体調というより、気分次第だろ?
俺とよりンーゴとの相性が良さそうだし、俺よりンーゴと一緒にいたがること多いしな。
「あたしはほら、誰かと一緒に寝たいときあるしね。そしたらあたしの部屋より、車庫の方が寝やすいでしょ?」
寝やすいも何も、無理やり眠りにつかせるくせに何を言うか。
……ところがこの女、この二人の発言の揚げ足を採りに来やがった。
面倒くせえったらありゃしねぇ。
「家族扱いする癖に、仲間外れにしてるってことね? 二人とも、かわいそうに……」
この女の頭ん中がうらやましいぜ!
このくそ寒い中でも、お花畑が健在ってことなんだからな!
気候が穏やかじゃねぇと、お花畑できねぇだろうしよ!
いいなぁ……頭ん中、暖かそうだなぁ……。
「あー……嬢ちゃん、あんた、頭大丈夫け?」
「ミアーノ、心配ないよ。あたしのお腹で眠らせてあげたら、一発で治るよ!」
待て待て。
テンちゃんのそれは、ある意味シャレにならん。
馬鹿は死ななきゃ治らない。
死ぬイコール永眠。
まさに永眠に向かって一直線じゃねぇか!
さすがにそれは、この女を守ってやらねぇといろいろと危ない。
「貴様らぁ! 黙って聞いておれば……。フレイミー様をどこまで愚弄するつもりだ!」
フレイミーから釘を刺されていた護衛兵がまた怒鳴りだした。
面倒事が起きると、すぐに収拾がつかなそうなくらいでかくなるよなぁ。
ところが。
「アーズ! 今は控えなさい!」
とフレイミーからの一喝。
それで静かになってくれるからちょっと助かる気はするが、そもそもそんな面倒な奴らを連れて来るなよ。
つか、問題抱えてここに来るなよ。
「とにかく! このお店とこの魔物達は、私の保護下に置きます!」
この国って、人権とかないのかね?
……いろいろとツッコミどころが満載だな。
「フレイミーさんよ、あんたがそうしなきゃいけない理由は何なんだ?」
まずそれを明確にしてから対応を考えるか。
可愛げのある理由で、みんなはそれに同意するなら受け入れてもいいかも分からん。
拒否するなら、穏やかに説得してお帰り頂く。
しかし物騒な理由なら……喧嘩上等、かなぁ。
「魔物達の生活の確保と同時に国民との交流を図り、この国の社会の力の源となっていただき、この国の繁栄を目指します」
国民と交流?
それができなかった現実を知らないのか?
それに、誰かから生活の保護を受けるってことは、その誰かがいなくなった後の生活の保障はできないってことだよな?
待てよ?
国民から受け入れられなかった者達の生活を守る。
受け入れなかった国民と交流を持つ……。いや、フレイミーの立場を考えると、持たせるってことだ。
それって……まさか……。
似たような環境の施設、あったよな。
もし、俺のこの想像が当てはまったなら……こいつらもこの国の住民として認めるなら、人権問題どころの騒ぎじゃねぇぞ?
「……こいつらに希望を聞くまでもない。答えは否。今の生活の方が、よほど国民のために活動していると断言できる」
みんなから注目されているのが分かる。
その心境は、見る者次第で様々だ。
「何? 私はお前がどう答えよう……」
フレイミーは何かを言ってるが、そんなことはどうだっていいし、みんなからどう見られても構わん。
なぜなら、それは……。
陛下が私を連れてくださった目的は、ご自身の交友関係を私に知ってもらいたい、とのことから。
「……フレイミー様。元旗手とやらの店に行かれると聞きました。我々護衛隊も同行させていただきます」
と、隊長のアーズからの申し出からのやりとりもありましたが、それはひとまず置いといて。
しかし私は違いました。
その男とともにいる、希少種の魔物との交流。
そして私の屋敷に連れて帰ること。
いきなり二つ目の目的を果たすのは難しい、と我ながら思うけど、その下準備はしっかりと終わらせたい。
けれど、それができなかった。
……自分でも分かっていました。
その男の店の様子を知った時に、邪な思いが湧き出てきたのを。
その魔物達は、主であるその男に無理やり従わせている。
そうでなかったとしても、魔物達はその男に渋々従っている。
と思っていました。
けど現実は違い、あの男にじゃれつき、纏わりつき、時には怒り、叱り飛ばし、あげく、あの男が魔物達に蹴飛ばされたり叩かれたりしている。
なぜそんなにも、彼らはあの男にそこまで懐いているのでしょうか。
そして、その男と親し気に話をしている陛下のお顔を見た時に、醜い思いが湧き出てきたのを。
なぜ陛下は、あの男のことを話しているとき以上に、あの男と一緒にいる時にはこんなにも和やかなお顔をしているのでしょう?
……どうして私には、この男よりも知力も魔力も、おそらくは体力もはるかに上回る私には、この魔物達からは慕われないのでしょう?
……どうして私に、陛下はそのようなお顔を向けてくれないのでしょう?
そこで私は思いつきました。
そもそも私は、その魔物達を保護しようと考えてました。
その魔物達と会話していくうちに、彼の者の作るおにぎりが鍵であることを知りました。
ならば、この者を私の指揮下に入れればいい。
この者が欲しい物、求める物があれば与えればいい。
望むことがあれば叶えてやればいい。
その代わり、この店を私の管理下に置く。
そうすれば、この魔物達だって、より多くの人達との交流が持てるはず。
そうなれば、多くの人達が、彼らを理解するはず。
これこそが、この希少種の魔物を保護するだけでなく、国民にとっても、珍しい種族と交流することで生活の刺激となり、活力を生む娯楽となるはず。
なのに、この男……。
いや、この男の傍から離れないこの女……。
家族?
何を血迷ったことを口走っているのか!
※※※※※ ※※※※※
「か、家族? どういうこと?!」
何だよこの女。
急に声を荒げて首突っ込んできやがって。
「え? え、えぇ。というか、もう家族でしょ。ご飯一緒に食べるし、ンーゴはいつも地中で寝るけど、他のみんなはこの店の奥で、それぞれ自室で寝てるし。あ、ミアーノとテンちゃんは、時々別のところで寝るよね」
「おりゃあ時々、体調次第じゃ土の中の方が居心地いいときあるしなぁ」
体調というより、気分次第だろ?
俺とよりンーゴとの相性が良さそうだし、俺よりンーゴと一緒にいたがること多いしな。
「あたしはほら、誰かと一緒に寝たいときあるしね。そしたらあたしの部屋より、車庫の方が寝やすいでしょ?」
寝やすいも何も、無理やり眠りにつかせるくせに何を言うか。
……ところがこの女、この二人の発言の揚げ足を採りに来やがった。
面倒くせえったらありゃしねぇ。
「家族扱いする癖に、仲間外れにしてるってことね? 二人とも、かわいそうに……」
この女の頭ん中がうらやましいぜ!
このくそ寒い中でも、お花畑が健在ってことなんだからな!
気候が穏やかじゃねぇと、お花畑できねぇだろうしよ!
いいなぁ……頭ん中、暖かそうだなぁ……。
「あー……嬢ちゃん、あんた、頭大丈夫け?」
「ミアーノ、心配ないよ。あたしのお腹で眠らせてあげたら、一発で治るよ!」
待て待て。
テンちゃんのそれは、ある意味シャレにならん。
馬鹿は死ななきゃ治らない。
死ぬイコール永眠。
まさに永眠に向かって一直線じゃねぇか!
さすがにそれは、この女を守ってやらねぇといろいろと危ない。
「貴様らぁ! 黙って聞いておれば……。フレイミー様をどこまで愚弄するつもりだ!」
フレイミーから釘を刺されていた護衛兵がまた怒鳴りだした。
面倒事が起きると、すぐに収拾がつかなそうなくらいでかくなるよなぁ。
ところが。
「アーズ! 今は控えなさい!」
とフレイミーからの一喝。
それで静かになってくれるからちょっと助かる気はするが、そもそもそんな面倒な奴らを連れて来るなよ。
つか、問題抱えてここに来るなよ。
「とにかく! このお店とこの魔物達は、私の保護下に置きます!」
この国って、人権とかないのかね?
……いろいろとツッコミどころが満載だな。
「フレイミーさんよ、あんたがそうしなきゃいけない理由は何なんだ?」
まずそれを明確にしてから対応を考えるか。
可愛げのある理由で、みんなはそれに同意するなら受け入れてもいいかも分からん。
拒否するなら、穏やかに説得してお帰り頂く。
しかし物騒な理由なら……喧嘩上等、かなぁ。
「魔物達の生活の確保と同時に国民との交流を図り、この国の社会の力の源となっていただき、この国の繁栄を目指します」
国民と交流?
それができなかった現実を知らないのか?
それに、誰かから生活の保護を受けるってことは、その誰かがいなくなった後の生活の保障はできないってことだよな?
待てよ?
国民から受け入れられなかった者達の生活を守る。
受け入れなかった国民と交流を持つ……。いや、フレイミーの立場を考えると、持たせるってことだ。
それって……まさか……。
似たような環境の施設、あったよな。
もし、俺のこの想像が当てはまったなら……こいつらもこの国の住民として認めるなら、人権問題どころの騒ぎじゃねぇぞ?
「……こいつらに希望を聞くまでもない。答えは否。今の生活の方が、よほど国民のために活動していると断言できる」
みんなから注目されているのが分かる。
その心境は、見る者次第で様々だ。
「何? 私はお前がどう答えよう……」
フレイミーは何かを言ってるが、そんなことはどうだっていいし、みんなからどう見られても構わん。
なぜなら、それは……。
0
お気に入りに追加
1,586
あなたにおすすめの小説
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
追放されたテイマー半年後に従魔が最強になったのでまた冒険する
Miiya
ファンタジー
「テイマーって面白そうだったから入れてたけど使えんから出ていって。」と言われ1ヶ月間いたパーティーを追放されてしまったトーマ=タグス。仕方なく田舎にある実家に戻りそこで農作業と副業をしてなんとか稼いでいた。そんな暮らしも半年が経った後、たまたま飼っていたスライムと小鳥が最強になりもう一度冒険をすることにした。そしてテイマーとして覚醒した彼と追放したパーティーが出会い彼の本当の実力を知ることになる。
異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた
甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。
降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。
森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。
その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。
協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる