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王宮動乱編

王宮異変 その5

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「親友?」
「あぁ」

 いい年こいて、親友だと?
 しかもこいつら、何の臆面もなく……。
 恥ずかしくねぇのかよ?

「気を許せる唯一の存在、と言ったところか」
「権力欲も金銭欲も見苦しいほどあるわけじゃなく、言うことやること、みな筋が通っている。おそらくそこが、殿下が信を置かれたんだと思う。例えご自身が嫌われていると分かってても、な」

 ……気を許せる相手、か。
 反国王派からも裏切られ……って、それは不測の事態だからおいとくとして。
 大臣ってば、おそらく国王もしくは国王代理の指揮下だし、親衛隊だって配下もしくは部下だもんな。
 以前そんな風に想像したことはあったが、やはりその通りだったか。

「そっちの事情をよく知らず、こっちの我がままを聞いてもらってばかりで申し訳ない」
「ヨウミちゃん以外のみんなの姿は見えなかったようだが、やはり軍事統括大臣が?」

 察しがいいな。

「俺の場合は、したしてないはともかく、手配された経歴はある。だが、でっち上げられたら何ともならんが、あいつらには何の前科もないし、悪行もない。変に抵抗したら、是非問う以前にそんな風に受け止められる可能性がある。まっさらな経歴を保持させるために、連中のなすがままにさせたら檻に入れられて、そのまま連れ去られた」
「そんな……!」
「アラタも大変な状況で、俺達の……」
「気にすんな。目的地は一緒だ。逆に、こんなお誘いがタイミング良く来てくれたから、俺らに取っちゃ願ったり叶ったりだ」

 どうせまだ数時間かかる。
 これまでの経緯を話しても、まだ時間は余るだろ。

 ※※※※※ ※※※※※

「そういうことだったか」
「だがアラタの他に、そんな対応をされた者はいないだろ。アラタのような人間関係を持つ相手は他にいないしな。もしもいたなら、そっちにも駆けつける必要があるだろうからな」

 ふーん。
 ということは。

「奴には友達がいない、ということでいいんだな?」
「ちょっ、アラタ」
「言い方をもうちょっとだな」
「お前らが、お前はやっぱりボッチだったんだなって言っておこう。お前らからの報告でそう解釈できたってな」
「ちょっと待て」
「言ってねえぞ?! 俺はそんなこと言ってねえからな?!」

 あぁ、なんとさみしい人生か。
 けど俺は何ともしてやれん。
 解放された後も達者でな。

「だが……殿下やみんなが捕らえられている場所が地下牢ってのは」

 みんな?
 あ、ああ、親衛隊の他の五人のことか。
 けど、あいつ自身がそう言ってたからな。

「あいつ直々の言葉で、しかも嘘はなかった。あるんだろ? ルートまでは分からんが」
「あぁ。だがおそらく、ミシャーレ率いる兵士が城門前広場にいるんじゃないか? そこを越えたとしても、城門内も同じくらいの広場がある」
「入り口はその城壁の内側。つっても、壁とはいいながらそこら辺で見られるような薄いもんじゃない。長い建物が城を囲ってるようなもんだ」

 想像つかねぇな。

「いずれ、城門内外に……一度に五千人くらい整列できる広場があるってことだ。立錐の地がないほどへいがならぶってこたぁないが……こっちは三人だ。百人くらいなら……何とかなるかも分からんが……」
「城の内外、五百人くらい兵を揃えられてたら……流石の俺達も、それを突破して地下牢に向かうのは……」

 まず無理だろうな。
 それくらいは簡単に想像がつく。

「アラタ」
「ん?」
「そんな人数の中を抜け切る策は……」
「あるわきゃねぇだろ、そんなん」

 どんな知恵者だって、どんな軍師だって無理だろ。
 少ない人数で大軍勢を突破した戦争なんて……。
 桶狭間くらいか?
 あと忠臣蔵?
 世界史じゃ、ちと思い出せねぇな。

「済まなかった。アラタ」
「ん?」
「正直、アラタの仲間の魔物達の力もアテにしていた。お前の気も知らずに……」
「気も知らずも何も……ま、あいつらを早いうちに迎えに行かなきゃなんねぇよなって思ってたところだったから、一緒に王宮に行く誘いは有り難かったな」

 気も知らずも何も、そっちはこっちの状況の変化を知るどころじゃなかったろうし、知っておかなきゃならない立場でもない。
 それはしょうがないことだろ。

「……城の前までは行ける。だがその先は……流石のアラタにも思いつかないか」

 なんで俺の名前の前に「流石」ってつけるんだ。
 便利屋みたいな扱いしてんじゃねぇだろうな?

「俺達が強行突破して地下牢に進んで……」
「アラタを仲間達の所に送り届けて、か?」

 俺に何か手段を持っていることを知ってるのか?
 魔球はかなりの数はあったはず。
 一度に全部使って、王宮を破壊するようなことでもすれば、状況は打開できるだろうな。
 だが……。

「強行突破は止めとけ」
「え?」
「けどアラタ……」

 自分の父親を幽閉した時、夜遅い時間に部屋に押しかけたという。
 そして王宮の塔のてっぺんの部屋に幽閉。
 あの時、あいつがしきりに気にしてた。
 国民の生活を苦しめるわけにはいかない。国力を減らすわけにはいかない、と。
 自分の作戦を成功させることよりも、国民、そして国の力が衰えることを気にしていた。
 たとえ二人しかいなかったとしても、こいつらが兵士の軍勢の中に突っ込んでいったら……ある程度は国の兵力も減るだろう。
 そうなると、自分の事よりも国のことを気にしていたあいつの苦労が報われない。
 状況を見ながら、魔球を小出ししつつ進入していくしかないだろうよ。
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