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店の日常編

仲間達の新たな活動 10

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「お祝い金?」
「……料金は、それを差し引いた差額でいいんじゃないのか? アラタ」

 そんな意見が返ってきた。
 だが、差し引いた金額と、受け取れる金額の意義は違うはずだ。

 ※※※※※ ※※※※※

 冒険者の養成所がある、と聞いた。
 入所して座学、実戦などの授業を受け、ある程度経験を積んで卒業。
 そして冒険者の職に就くんだとか。
 だが、入所するのにある程度の費用は必要だし、学費も必要らしい。
 殆どの卒業生は、一文無しに近い状態になるんだと。
 養成所で使っていた装備はその職ではほとんど役に立たず、卒業したら最初にすべきことはそれらをすべて買い替えること。
 打がすべてを買い替えることができる奴はそのほぼ一部。
 一番劣化した装備の身を買い替えるのが精一杯がほとんど。
 養成所から巣立つ卒業生にお祝いの一つでも買い与えりゃいいのに、なんてこともチラッと思うんだが。
 それはともかく、だから適した仕事を見つけても、装備に不安がありゃ尻込みするだろうし、その装備でも問題のない仕事ってば実入りも減る。
 実入りが少なきゃ買い替えるのも難しい。
 収入全てが生活費に回ってしまうだろうからな。
 だからこそ、俺の行商のおにぎりが、回復薬より安くてアイテム代わりになり、頼りになる数少ない味方ってことで、売れ行きが良かったんだろうがなぁ。
 それに、未完の大器が完成される前にそんな環境に潰されるのも可哀想なきがするし。
 そんな養成所に入ってまでその仕事をしたいってことは、その仕事に就きたいという夢や目標があったわけだろうしな。
 そんな連中が、ここでかかる費用を何とか捻出してまで集団戦を望むんだ。
 それをやり遂げても、上がった能力を発揮する場を金欠によって見つけられない、なんて目も当てられない。
 それと…‥。
 手持ちの金が少ない時の不安は、俺だってこの世界に来た時に体験してる。
 そいつらにとっての救いの手は何か、どんなものか。
 その不安も答えは、この身が既に知っている。

 ※※※※※ ※※※※※

「受け取れよ。アイテム補充、装備品修繕、その他いろいろに金かかるだろ?」
「いや、まぁ、そりゃそうだが……」
「確かに差し引きした料金払っても、訓練終わった後のそれはどのみちお金かかりますもんね」

 グダグダ屁理屈こきゃがって。
 いいから黙って受け取れよ。

「……お前らには必要ねえ金かもしれんが、お前らだけの問題じゃ済まなくなっちまうし、傍から見てた無責任な奴らが流す噂は侮れねぇんだよ。いらねぇってんなら受け取った後ゴミ箱にでも捨てとけ」
「ちょっとアラタ! お金をゴミ箱にって」
「しょうがねぇだろヨウミ。受け取るのを拒絶するんだから、ほかに対処の仕様がねぇよ。さもなきゃ、ここを二度と利用するな」

 俺のやり方、ここのやり方がそこまで気に食わねえんなら来なきゃ済むことだ。
 利用者がいなくなりゃ、集団戦の申し込みは今後、断固拒否だ。

「何も拒絶してるわけじゃない。何急に噛みついてきてんだ」
「……分かった。有り難く受け取っておこう」
「ルミーラさん……」
「アークス、グリプス。彼の感情は読み取れないか? 気迫を感じないか? これに何か……事情があるんだろう。それにせっかくの厚意だ。つまらない意地を張って波風を無駄に激しく立てることもなかろう。それに今後も使わせてもらいたいこともあるしな」

 ふん。
 最初から素直にそう言っときゃいいんだよ。
 立場が変わりゃ視点も違うんだ。
 そっちは手前の事だけしか考えられねぇだろうが、こっちにゃ……。
 ……下らねぇ。
 思考がこいつらに捕らわれるほど、こっちは暇じゃねぇんだよ。

「しかし……そうか。祝い金か」
「何か文句あるんか? 次の客が待ってるんだから……」
「次の客なんていないぞ? もう店仕舞いの時間だろう? ふふ、そうじゃない。祝い金をもらって助かる者達もいるんだな。この店の客が増えるのも納得だ。それにしても……今回はいい経験になった。重ね重ね礼を言う。そして、また遣わせてもらおう。……そうだ。出張営業なんてことは」
「しねぇよ。店があるし、特定の客を特別扱いなんかできゃしねぇよ。そこまで俺の頭は回らねぇ」

 一日に複数のチームの集団戦のスケジュールってだけでも大変だってのに。
 けど……そうか……。
 この店がこんなに忙しくなってきたのは……。

 自分が決めた方針が、俺を忙しくさせてるってことかよっ!
 どうしようもねぇじゃねえか!
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