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店の日常編
その人への思い込みを俺に押し付けるな その7
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「私達からそっちへの厚意を無碍にする、ということなのですか?」
「違ぇよ。友人になりたい者がいるから来てくれ、と、結婚を前提にお付き合いを望む人がいるから来てくれ、では、その呼びかけ方も違うだろ? 俺はあんたらが友人になりたがってると思い込んで呼びつけたら、結婚してくださいって言われたときの俺の配慮は?」
「あなたの配慮なんて塵芥のようなものではありませんか。気にするまでもありません」
目線が全く違うベクトル向いてやがる。
「あいつは俺からの連絡でここに来るんだぜ? 友人が増えると聞いてやって来てみたら、お見合い話がそこにあった。そりゃあいつは驚くだろうよ」
「問題ありません。会えるかどうか、ただそれだけなのですから」
「すぐにそっぽ向いて帰っちまったら、この先ずっと門前払い食らい続けるぞ?」
会おうと思えば足を運ぶこともできたはずだ。
王宮にいることが多いはずだからな。
だがそうしなかったのは、二度と会えないことを恐れたから。
あるいは礼儀知らずと罵られ、軽蔑されることを恐れたから。
絶縁を言い渡されても、こいつらにゃそれは堪えまいよ。
むしろ、会うチャンスが何度も会ったとしても、その度に嫌われることを一番恐れてる。
「それにだ。結婚生活への考え方が違うと、破綻をきたすこと間違いねぇぞ? それでも結婚生活を無理やり続けるから、結婚は人生の墓場だ、なんて言葉も生まれちまう」
「問題ありません。相手が私に合わせてくれれば、何の心配もありませんから」
おいおい。
相手は王族だぞ?
王家だぞ?
一国の舵取りだぞ?
「無理に決まってんだろ。王家の一族は王家を守り続けてきたんだろ? よその一族が振り回そうものなら、ほかの王族に潰されちまうぞ? しきたりとかはよく知らねぇけどよ」
「かもしれませんわね。でもそれこそ私達よりも下賤な身分の者達がそれを案じるなど、身の程を知りなさい」
ずっとフォームとやらの独壇場だ。
他の二人はこいつの取り巻きってとこか?
王家と婚姻を結んだら、何かのおこぼれでも貰う確約でもしてるのか。
「フォームさん。あなたは」
「あなた方は今は控えなさい! いくら殿下のそばにいる立場でも、身分に隔たりがあるのがわかりませんこと? 王家の方々とは対等の立場に立つこともある私達なのですよ?」
親衛隊にも、あっという間の手の平返しのその態度。
すげぇな、この女の肝っ玉。
「それにあなた、殿下の何を知っておられるの? 私ですらほとんど何も知らないというのに」
今度は俺かよ。
あちこちに毒吐く奴だな。
つか、戦争吹っ掛けてくる奴だな。
けど考えてみりゃ、俺もあいつとは数えるくらいしか会ってないよな。
思い返すと……思い出せないくらい些細な出来事でもあったし。
……けれども、だ。
「自分の身内の罪を背負う趣味はあるか?」
「こいつ、いきなり何言ってんだ?」っていう、ぽかんとした顔に変わった。
しかも、仲間を覗いた全員が。
「俺の場合は、無理やり押し付けられたり、法に触れるどころか初めてここに来た時から犯罪者扱いされた。自分が望んで引き受けた、そんな立場じゃないのにな。だがあいつは、自ら望んで貧乏くじを引いた。自分から望んで、身内の恥を引き受けた。謝ろうともしない父親の代わりに頭を下げた。頭を下げるだけならできるだろうぜ。だがその誠意を表に出し、行動に移した。同調できなきゃあいつの人生についていけねぇぞ?」
「な、なにをいきなり。次の王になるべき者が、軽々しく頭を下げるなんて……あるわけないでしょう!」
「……お前こそ、あいつの何を知ってる?」
「あいつ? 殿下に向かってあいつ呼ばわり」
「あいつどころかお前、本人に向かって『馬鹿王子』なんて何度呼びかけたか」
「なっ……! ふ、不敬の極みじゃない! なんなのこいつ!」
なんなの、ときたもんだ。
笑わせてくれる。
「なんなのってお前、お前らが所属しているファンクラブのお目当ての人物だぜ?」
「ふざけるのも大概になさい!」
彼女らの言い返す言葉は、俺の主張の中身をただ闇雲に否定するのみ。
自分の主張を保つには、もうそれしか方法はないって感じだ。
「俺は別にどうでもよかったんだが、あの馬鹿王子がそれでも謝罪するってんでな。お詫びの品まで用意してきた。だがそいつで俺も仲間も命が助かったってこともあったから、それだけの力を持った物を作り上げた製作者でもあるはずだから、誠意は十分伝わってんだけどよ。あんたらみたいに権力に縋ろうとする輩まで引き付けられる存在ってのは……」
「だ、誰が権力に縋ろうとしてると言うのです?! 戯れなんてものじゃないわ! もっと劣悪で邪な」
「なら友達付き合いでもいいじゃねぇか。いや、今までと同じ関係の維持でも十分だろ? 殿下を遠くからお慕い申し上げます、の方がよほど純粋だぜ? 遠くからってことは、付きまといにもならねぇしな」
……なんか、いつの間にかあいつの肩を持つ発言になってねぇか?
まぁあいつがどんなことをしたがってるかは、こないだの話で大体読めた。
その足を引っ張りそうな女共だから、こいつらをなるべく遠ざけてやるぐれぇなら……って……。
……俺はあいつのオカンか何かかよ!
まぁいいけどよっ。
「大嘘も大概になさい! 市井人に頭を下げるなんて、あるはずかないでしょう!」
普通だったら有り得ねぇ話だよなぁ。
考えてみれば、誰かに信じてもらうための根拠ってねぇんだよな。
全部俺の体験談だし……。
って……。
あいつが近づく気配がするんだけど?
「アラター、何か困ったことでも起きたのかー?」
遠くからシアンが呼びかけながら近づいてきた。
何でこんなタイミングよく?
「コーティに呼ばれてきたんだが、何かあったのか?」
……何と言いますか。
こいつを呼ばずとも解決出来たらカッコよかったんだがなぁ。
「アラタじゃ手に負えない相手でしょ? 本人が来て釈明した方が早いに決まってんじゃない」
俺を一番見下してたのは、コーティだった。
何だこのやるせないもやもやした感情はっ!
「違ぇよ。友人になりたい者がいるから来てくれ、と、結婚を前提にお付き合いを望む人がいるから来てくれ、では、その呼びかけ方も違うだろ? 俺はあんたらが友人になりたがってると思い込んで呼びつけたら、結婚してくださいって言われたときの俺の配慮は?」
「あなたの配慮なんて塵芥のようなものではありませんか。気にするまでもありません」
目線が全く違うベクトル向いてやがる。
「あいつは俺からの連絡でここに来るんだぜ? 友人が増えると聞いてやって来てみたら、お見合い話がそこにあった。そりゃあいつは驚くだろうよ」
「問題ありません。会えるかどうか、ただそれだけなのですから」
「すぐにそっぽ向いて帰っちまったら、この先ずっと門前払い食らい続けるぞ?」
会おうと思えば足を運ぶこともできたはずだ。
王宮にいることが多いはずだからな。
だがそうしなかったのは、二度と会えないことを恐れたから。
あるいは礼儀知らずと罵られ、軽蔑されることを恐れたから。
絶縁を言い渡されても、こいつらにゃそれは堪えまいよ。
むしろ、会うチャンスが何度も会ったとしても、その度に嫌われることを一番恐れてる。
「それにだ。結婚生活への考え方が違うと、破綻をきたすこと間違いねぇぞ? それでも結婚生活を無理やり続けるから、結婚は人生の墓場だ、なんて言葉も生まれちまう」
「問題ありません。相手が私に合わせてくれれば、何の心配もありませんから」
おいおい。
相手は王族だぞ?
王家だぞ?
一国の舵取りだぞ?
「無理に決まってんだろ。王家の一族は王家を守り続けてきたんだろ? よその一族が振り回そうものなら、ほかの王族に潰されちまうぞ? しきたりとかはよく知らねぇけどよ」
「かもしれませんわね。でもそれこそ私達よりも下賤な身分の者達がそれを案じるなど、身の程を知りなさい」
ずっとフォームとやらの独壇場だ。
他の二人はこいつの取り巻きってとこか?
王家と婚姻を結んだら、何かのおこぼれでも貰う確約でもしてるのか。
「フォームさん。あなたは」
「あなた方は今は控えなさい! いくら殿下のそばにいる立場でも、身分に隔たりがあるのがわかりませんこと? 王家の方々とは対等の立場に立つこともある私達なのですよ?」
親衛隊にも、あっという間の手の平返しのその態度。
すげぇな、この女の肝っ玉。
「それにあなた、殿下の何を知っておられるの? 私ですらほとんど何も知らないというのに」
今度は俺かよ。
あちこちに毒吐く奴だな。
つか、戦争吹っ掛けてくる奴だな。
けど考えてみりゃ、俺もあいつとは数えるくらいしか会ってないよな。
思い返すと……思い出せないくらい些細な出来事でもあったし。
……けれども、だ。
「自分の身内の罪を背負う趣味はあるか?」
「こいつ、いきなり何言ってんだ?」っていう、ぽかんとした顔に変わった。
しかも、仲間を覗いた全員が。
「俺の場合は、無理やり押し付けられたり、法に触れるどころか初めてここに来た時から犯罪者扱いされた。自分が望んで引き受けた、そんな立場じゃないのにな。だがあいつは、自ら望んで貧乏くじを引いた。自分から望んで、身内の恥を引き受けた。謝ろうともしない父親の代わりに頭を下げた。頭を下げるだけならできるだろうぜ。だがその誠意を表に出し、行動に移した。同調できなきゃあいつの人生についていけねぇぞ?」
「な、なにをいきなり。次の王になるべき者が、軽々しく頭を下げるなんて……あるわけないでしょう!」
「……お前こそ、あいつの何を知ってる?」
「あいつ? 殿下に向かってあいつ呼ばわり」
「あいつどころかお前、本人に向かって『馬鹿王子』なんて何度呼びかけたか」
「なっ……! ふ、不敬の極みじゃない! なんなのこいつ!」
なんなの、ときたもんだ。
笑わせてくれる。
「なんなのってお前、お前らが所属しているファンクラブのお目当ての人物だぜ?」
「ふざけるのも大概になさい!」
彼女らの言い返す言葉は、俺の主張の中身をただ闇雲に否定するのみ。
自分の主張を保つには、もうそれしか方法はないって感じだ。
「俺は別にどうでもよかったんだが、あの馬鹿王子がそれでも謝罪するってんでな。お詫びの品まで用意してきた。だがそいつで俺も仲間も命が助かったってこともあったから、それだけの力を持った物を作り上げた製作者でもあるはずだから、誠意は十分伝わってんだけどよ。あんたらみたいに権力に縋ろうとする輩まで引き付けられる存在ってのは……」
「だ、誰が権力に縋ろうとしてると言うのです?! 戯れなんてものじゃないわ! もっと劣悪で邪な」
「なら友達付き合いでもいいじゃねぇか。いや、今までと同じ関係の維持でも十分だろ? 殿下を遠くからお慕い申し上げます、の方がよほど純粋だぜ? 遠くからってことは、付きまといにもならねぇしな」
……なんか、いつの間にかあいつの肩を持つ発言になってねぇか?
まぁあいつがどんなことをしたがってるかは、こないだの話で大体読めた。
その足を引っ張りそうな女共だから、こいつらをなるべく遠ざけてやるぐれぇなら……って……。
……俺はあいつのオカンか何かかよ!
まぁいいけどよっ。
「大嘘も大概になさい! 市井人に頭を下げるなんて、あるはずかないでしょう!」
普通だったら有り得ねぇ話だよなぁ。
考えてみれば、誰かに信じてもらうための根拠ってねぇんだよな。
全部俺の体験談だし……。
って……。
あいつが近づく気配がするんだけど?
「アラター、何か困ったことでも起きたのかー?」
遠くからシアンが呼びかけながら近づいてきた。
何でこんなタイミングよく?
「コーティに呼ばれてきたんだが、何かあったのか?」
……何と言いますか。
こいつを呼ばずとも解決出来たらカッコよかったんだがなぁ。
「アラタじゃ手に負えない相手でしょ? 本人が来て釈明した方が早いに決まってんじゃない」
俺を一番見下してたのは、コーティだった。
何だこのやるせないもやもやした感情はっ!
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