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店の日常編

村の防衛もこいつらにかかりゃ、戦争ごっこかなぁ その6

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 夜盗どもに、ススキモドキの原っぱに出させちゃまずい。
 火の回りは早くなり、村全体が火の海になっちまう。
 そこまで火が回らなかったとしても、俺の店が間違いなく、物理的に火の車になっちまう。
 奴らが林の中に、何とか留まらせないとまずい。
 だが……。
 ガキの頃なんか、百メートル走なんて軽々とできたんだがな。
 林の入り口、樹木の一本目まで来て、もう息も絶え絶えだ。
 だがもうここまで来たら、こっちも無防備のふりをする必要はねぇ。
 遠慮なく大声で怒鳴らせてもらおうか!

「クリマー! そこにいる奴は俺に任せろ! コーティと合流して離れてる二人を何とかしろ! 位置はミアーノ達の方向だ! 返事するな! すぐ動け!」

 下手に返事されたら、そいつらに居場所がバレちまう。
 たとえ擬態だとしても、そうだと知られるのはまずい。

「今の声、店の店主だぜ!」
「まずはそいつからだ! みんな! 聞こえたか!」

 こいつら、ほかの七人がどうなってるかまでは知らねぇみてぇだ。
 だがやっぱり下見に来てたんだな。
 声だけで分かるとは。
 林の中に踏み込む前に、何かこう、武器になるような、具合のいい木の棒か何か……。

「ミッ」

 サミー、気が利くじゃねぇか!
 クリマーも俺の指示に従ってくれたみたいだし、その二人の気配ははっきりと把握できてる。
 暗闇に紛れて奇襲して、動けなくさえすれば問題ないはずだ……が?

「もうここでいい! 火をつけろ!」

 ここで火をつける?
 確かに火が回りゃ手に追えねぇが、ここで落ち葉や枯れ枝に火をつけても、樹木なんかには簡単に火はつかねぇはずだ。
 それにこっちは、気配は人間や魔物だけしか感じ取れねぇわけじゃねぇ。
 木々の位置だって大体分かる。
 暗闇だが、それでも死角になるようなところを通りつつ接近することもできるんだよ!
 だから奴らの背後にまわって……投石!

「痛ぇ! 石投げてきやがった! どこだ!」

 こちらの位置を悟られないよう、物音をなるべく立てずに移動して……。

「腕一本も骨折でもしてくれりゃ、残り一人なら何とかなるがな……。だが一番肝心なのは、火をつけさせず、林の中で足止めすることだ」

 クリマーはコーティと一緒に、ほかの二人の捕獲のはず。
 モーナーの話によれば、テンちゃんもあの場所から動けないだろう。
 マッキーとライムは自由に動けるかどうか。
 ミアーノとンーゴは捕獲した連中の監視役だな。
 モーナーはヨウミの護衛。
 つか、ヨウミはモーナー頼り。
 ということはつまり。
 援軍は来ない。

「サミー。俺はもっかいあいつに石を投げる。分からなかったら無理しなくていいが、利き腕を使えないようにして無力化して、あとは移動を妨害して足止めしてくれ。残り一人は俺が何とかする。いいな!」
「ミッ!」

 いい子だ。
 大きめな石を拾って手にした腕に力を込めて……。
 行くぜ!
 あ……。
 鈍い音がそいつの頭から出た。
 まさか頭に行くとは思わなかったが……。
 構うかよ!

「ミッ!」

 サミーが静かに飛び掛かる。
 期待通りハサミを閉じて、そいつの腕をとにかく叩く。
 いい音させるぜ。
 だが俺も暢気にそれを見てるわけじゃない。
 サミーを守るように後を追い、そこからもう一人……って。
 まずい!
 もう一人、いつの間にか松明に火をつけてやがった!

「くそがっ!」

 最短距離でもう一人に飛び掛かる。
 こっちに火を向けられたらしめたもの。
 制圧しやすいってもんだ!
 が……。

「おらあっ!」

 火が付いた松明は放り投げられた。
 サミーの方に向かって。
 自分の仲間に火をつける気か?!
 いや、その前に……。
 体毛、人の皮膚より燃えやすいんじゃねぇのか?!

「サミー! どけろ!」

 何てこった!
 肝心なとこで、気配が意識の外になってしまってた!

「ミ? ミーッ!」
「うあっ! あちいっ!」

 そいつはそいつでサミーにばかり気をとられて、仲間が傍にいることを見てなかったらしい。
 だがそれどころじゃない。
 まさかサミーの体中に、一気に火が回るなんて思ってもみなかった!
 体の皮脂が体毛に隠れてたとかでないと、そんな風に燃えるなんて思えない!
 その辺りは一気に明るくなる。
 枯れ葉や枯れ枝はそんなにないし、地面は土や石だらけ。草はほとんど見られない。
 もっとも明るいところは火の周りだけだから、辺り一帯はどうなのかは分からない。
 そして残念ながら、川や池、沼などの水気はどこにもない。

「ミーーーッ!」
「サミーっ! くそがあ!」

 とりあえず行きがけの駄賃!
 そいつの体、当たるところならどこでもいい!
 全力で一発ぶん殴る。
 そのまま見逃せば、一人でどこかに逃亡されかねん!
 その反動で樹木の幹に当たって悶絶してるようだ。
 なら現時点では追撃よりも消火が大事だ!

「サミーっ! ……え?」

 その気配には変化なし。
 感情も、熱さで苦しむ様子もない。
 そう言えば、こいつ、魔物だったっけ。
 でも火に強いって感じでも……。

「うわっ!」
「ぐはあっ!」

 俺の目の前を、何か黒い物が飛んで通り過ぎた。
 そして、火を放り投げた奴に当たったらしい。

「な……何だ今の。いや、それどころじゃねぇっ! サミーっ!」

 火の元はそこから微動だにせず、その場で燃え続けていた。
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