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店の日常編

ファンクラブをつくるのはいいが俺を巻き込むな その2

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 人馬族、と呼称を統一しようか。
 五人の人馬族の冒険者チームがここに訪れたのは五度目。
 店へは三度目、と彼らの談。

「つまり、一回目は直接フィールドで鍛錬した、と」

 ダンジョンもそうだが、フィールドはおにぎりの店の管理領域じゃない。
 ミアーノとンーゴの住居に最適な環境であることと、さらに奥に住み着いている魔物達が村の中に侵入させないように警戒していること。
 野生の魔物がはぐれて時々その区域に入ってくるので、それが冒険者達の格好の鍛錬の機会となる。
 その警護もできること。
 そのことから、こちらの善意で村の安全に貢献していて、その範囲内を俺達はフィールドと呼んでいる。
 こっちが勝手にそんな活動をしているだけの事。
 冒険者達は村を荒らしたり、彼らの行動によって魔物を余計に刺激して村の襲撃となるきっかけとなることをしなければ自由に出入りしても問題ない。
 まぁモラルを乱すようなことがあれば、罰則を与えるのはサキワ村であって俺達じゃない。
 だから、鍛錬や討伐に訪れる回数と店に来る回数が違う者がいるのは当たり前。
 今まではフィールドに来る冒険者達はほとんどいなかったから、ミアーノとンーゴの二人だけでその役目は十分果たせたんだが、来訪者が増えたことで森林や屋外での行動を得意とし好む仲間達が手伝いに行くようになった。
 マッキーとテンちゃんが助っ人の中心になる。
 コーティも屋外での活動は得意だが、なぜか彼女が作るおにぎりがやたらと人気が高い。
 それはともかく。

「あの時に、丁寧に説明してくれる彼女が、なんかこう……愛おしくて……」

 相手によって態度が変わる。
 それは俺もそうだし、誰でもそうだろう。
 俺に見せる態度はこいつの前では絶対に見せないってこともあるだろうから、それはまぁ、それこそ人の恋路を邪魔するつもりはない。

「二回目の時に、思い切って告白したんだ!」
「男らしいじゃねぇか。あいつが拒否しない限り全力で応援するぞ?」

 異種間での夫婦関係、家族関係は珍しくないんだとか。
 何の種族かすぐには分からない奴らなら、俺もよく見るしな。
 両者の間で問題がなきゃ別にいいんじゃないか?
 ただ、もしテンちゃんとこいつが夫婦となるなら、おそらくここを抜けることになるだろう。
 それはちょっとだけ痛いが、そう思うのは俺のエゴだと思う。
 それに、自分の思いを相手に素直に伝えようとする姿勢は、見てて気持ちいいものだ。
 俺は、そんな行動を起こせない時もある。
 そういう意味では憧れすら感じるんだが……。

「ふざけるな! どういうつもりで物を言ってんだ!」

 いきなり怒鳴られた。
 仲間達から宥められるが、怒りで真っ赤になってる彼の顔色は戻らない。
 俺には思い当たる節はない。

「ちょっといきなりなんですか? 他のお客さんが驚くじゃありませんか!」

 店番のクリマーが毅然とした声で男を制した。
 まぁ暴力的な客じゃないからいいけども。
 何しでかすか分からない客なら、間違いなく逆効果だからな?

「あぁ?! だ……だって……こいつなぁ……」

 俺に原因を押し付けても、心当たりがないものはないんだ。

「待て。俺は、お前とテンちゃんの間で何があったか全く分からんぞ? そもそも自己紹介してくる客はほとんどいないから、当然お前の名前だって知らないし。それにあいつからも何も聞いてないし」
「な……何も……聞いてない……だと……?!」

 この人馬族の男を、冷やかす気も揶揄う気も毛頭ない。
 自分でも自分の顔がどんな風になってるか自覚できる。
 真顔、そう表現する以外に言葉は知らない。
 俺の顔を見て、その男は状況を理解した……と思うんだが。

「俺はお前の名前なんぞ知らなくても何の問題もないんだが……一応聞くぞ? 告白しようとする相手の名前は知ってるのか? 相手はお前の名前知ってるのか? まずそれだろ?」
「あ……」

 あいつに一途、という気持ちは認めよう。
 遊び慣れてる奴は……芦名たちを連想しちまうから気に食わん。
 それに比べりゃこの人馬族の男、俺への怒りばかりじゃない顔の赤みを見りゃ、素直で純情じゃないか。
 俺に敵意をあからさまに見せているとは言え、応援したくなる。
 結ばれた後はこの店の手伝いをするってんなら諸手を挙げて賛成してもいい。
 けどな……。
 脳味噌まで筋肉でできてるのか? って思える奴は流石になぁ……。
 とりあえず……うん、つまりあれだ。
 冷たい水で顔を洗って、頭冷やして、ゼロから順番をよーく考えてから出直してこい。
 まずはそれからだ。
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