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三波新、定住編
閑話休題:間食騒動
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おにぎりの店はいまだに閑古鳥が鳴いている。
そんな俺達の中でちょっとしたブームが巻き起こってる。
事の発端は、こないだのサミー絡みの騒ぎ。
怯えるサミーを慰めるために作ったものが、どうやら癖になったらしい。
多めの塩をまぶした具のないおにぎりを、できる限りアンコでコーティング。
まぁおはぎみたいなもんだ。
餅とは違ってのどに詰まることもない。
安心して食わせてやれる。
塩気と甘みでいい塩梅になった。
ところがサミーはそれにハマってしまった。
仕事をしている最中も、ミャーミャー言いながら俺の腕に絡みついてアンパンがある貯蔵庫の方に引っ張るもんだからどうしようもない。
作っているというか、作らされているというか。
「サミー、それ、そんなに美味しいの? 私にも一口ちょーだいっ」
アンコのおにぎりをハサミの両腕で抱えるように抑えるサミー。
もちろん抱え込めるほどサミーは大きくないし、おにぎりも小さくない。
鼻面を顔の前面ごと突っ込ませて、一心不乱にモムモムと食べているそばから、クリマーがそんなことを言う。
聞こえてないのか理解できないのか、サミーの行動に何の変化もない。
クリマーは気付かれないように、反対側の一部をつまみとって口に入れた。
一瞬クリマーは固まる。
そして俺に潤んだ瞳を向けてきた。
「私にも……私にも一つ、作ってください……。一つでいいですから……。給料その分差し引いて構いませんから……」
懇願されてしまった。
だが給料から差し引いてもって言うからには……依頼、だよなあ。
店じゃなく、俺への依頼。
だから店の収入じゃなく、俺の収入になるわけだ。
そういうことで、少しだけ張り切って、いつもより大きめのおにぎりで二個作った。
五百円にしとくか。
ところがだ。
二個作ったのが失敗だった。
「おーいしーいっ! 今度からおやつ、アラタさんにお願いしよっと」
「おい」
「何? クリマーさん、それ美味しいの? 一個ちょうだい」
ヨウミが口を挟む。
お金がかかってるから、クリマーはそれを理由に断ったが。
「じゃああたし一個分負担するから、ね?」
「二個で五百円って言ってました。一個二百五十円ですが……三百円で売ります」
せこすぎる。
五十円くらいで大騒ぎするほどのことか?
「オッケー。三百円ね。はい。じゃあいただきまーす。ハムッ……。アラタ……」
ヨウミがかぶりついたまま視線をこっちに向けた。
「何だよ」
「一個三百円でいいから、あたしにも作って」
もしもクリマーに一個しか作らなかったら、話はここまで広がらなかった。
何で二個作っちまったんだろう、俺……。
そこにやってきたのがライム。
「……ライム、食べてみたいんですか? はい、どうぞ」
「クリマー、ライムにはタダなわけ?」
「だって一つまみ程度だし、私の気まぐれだし。ヨウミさんのはまるまる一個でしょ?」
「うぐっ……」
そりゃ手つかずの丸々一個だからな。
言い負かされるのも当たり前だろうに。
それにしてもライムにも味覚はあるんだろうか?
それを食べるライムをぼんやりと見て、ぼんやりとそんなことを思う。
が、いきなり踊るように体を揺らし始めた。
「お、おい、ライム?」
「オイシイッ! ウマイッ!」
分かるみたいだ。
「美味しいですよねっ! ライムっ!」
まるでリズムを取ってるように体を伸び縮みさせている。
楽しげなのは、気配を察知しようとしなくても、見てるだけで分かる。
「おい、ライム」
体の一部をそれ……まぁ、おはぎだな。
おはぎに変形させている。
それを体内に取り込む。
自分の体を食ってるってことだよな、それ。
「……マズイ。イタイ……」
当たり前だろ。
馬鹿は天馬だけにしてもらいたいものだ。
「……おい、クリマー」
忘れてた。
この世界のドッペルゲンガーは、体全体もしくは一部を何かの物体とかの真似ができる能力があるんだっけか。
「ウフフ……」
こいつも自分の腕をおはぎに変えやがった。
そこにライムが跳びついた。
「コッチ、オイシイ!」
おい、ちょっと待て!
「い、痛いっ! 痛い、痛いですっ! ライムッ! 痛いですっ!」
馬鹿がもう一人増えた。
「……何やってんのよ、二人とも……。ライム、それ、おにぎりじゃないから。離れなさい。それ、クリマーの腕だから」
「デモ、オイシイ」
怖ぇよ、スライム。
おっかねぇよ、プリズムスライム。
「そんなわけないでしょうがっ! とっとと離れるっ」
クリマーの腕に絡みついたライムを抱えて何とか引き離すヨウミ。
全くこいつら何なんだか。
「痛いですっ! ヨウミさんっ!」
「あ、ほんとだ。美味しい」
「おいこらヨウミ! お前も何やってんだ馬鹿!」
物欲が激しすぎるぞお前ら!
そんな俺達の中でちょっとしたブームが巻き起こってる。
事の発端は、こないだのサミー絡みの騒ぎ。
怯えるサミーを慰めるために作ったものが、どうやら癖になったらしい。
多めの塩をまぶした具のないおにぎりを、できる限りアンコでコーティング。
まぁおはぎみたいなもんだ。
餅とは違ってのどに詰まることもない。
安心して食わせてやれる。
塩気と甘みでいい塩梅になった。
ところがサミーはそれにハマってしまった。
仕事をしている最中も、ミャーミャー言いながら俺の腕に絡みついてアンパンがある貯蔵庫の方に引っ張るもんだからどうしようもない。
作っているというか、作らされているというか。
「サミー、それ、そんなに美味しいの? 私にも一口ちょーだいっ」
アンコのおにぎりをハサミの両腕で抱えるように抑えるサミー。
もちろん抱え込めるほどサミーは大きくないし、おにぎりも小さくない。
鼻面を顔の前面ごと突っ込ませて、一心不乱にモムモムと食べているそばから、クリマーがそんなことを言う。
聞こえてないのか理解できないのか、サミーの行動に何の変化もない。
クリマーは気付かれないように、反対側の一部をつまみとって口に入れた。
一瞬クリマーは固まる。
そして俺に潤んだ瞳を向けてきた。
「私にも……私にも一つ、作ってください……。一つでいいですから……。給料その分差し引いて構いませんから……」
懇願されてしまった。
だが給料から差し引いてもって言うからには……依頼、だよなあ。
店じゃなく、俺への依頼。
だから店の収入じゃなく、俺の収入になるわけだ。
そういうことで、少しだけ張り切って、いつもより大きめのおにぎりで二個作った。
五百円にしとくか。
ところがだ。
二個作ったのが失敗だった。
「おーいしーいっ! 今度からおやつ、アラタさんにお願いしよっと」
「おい」
「何? クリマーさん、それ美味しいの? 一個ちょうだい」
ヨウミが口を挟む。
お金がかかってるから、クリマーはそれを理由に断ったが。
「じゃああたし一個分負担するから、ね?」
「二個で五百円って言ってました。一個二百五十円ですが……三百円で売ります」
せこすぎる。
五十円くらいで大騒ぎするほどのことか?
「オッケー。三百円ね。はい。じゃあいただきまーす。ハムッ……。アラタ……」
ヨウミがかぶりついたまま視線をこっちに向けた。
「何だよ」
「一個三百円でいいから、あたしにも作って」
もしもクリマーに一個しか作らなかったら、話はここまで広がらなかった。
何で二個作っちまったんだろう、俺……。
そこにやってきたのがライム。
「……ライム、食べてみたいんですか? はい、どうぞ」
「クリマー、ライムにはタダなわけ?」
「だって一つまみ程度だし、私の気まぐれだし。ヨウミさんのはまるまる一個でしょ?」
「うぐっ……」
そりゃ手つかずの丸々一個だからな。
言い負かされるのも当たり前だろうに。
それにしてもライムにも味覚はあるんだろうか?
それを食べるライムをぼんやりと見て、ぼんやりとそんなことを思う。
が、いきなり踊るように体を揺らし始めた。
「お、おい、ライム?」
「オイシイッ! ウマイッ!」
分かるみたいだ。
「美味しいですよねっ! ライムっ!」
まるでリズムを取ってるように体を伸び縮みさせている。
楽しげなのは、気配を察知しようとしなくても、見てるだけで分かる。
「おい、ライム」
体の一部をそれ……まぁ、おはぎだな。
おはぎに変形させている。
それを体内に取り込む。
自分の体を食ってるってことだよな、それ。
「……マズイ。イタイ……」
当たり前だろ。
馬鹿は天馬だけにしてもらいたいものだ。
「……おい、クリマー」
忘れてた。
この世界のドッペルゲンガーは、体全体もしくは一部を何かの物体とかの真似ができる能力があるんだっけか。
「ウフフ……」
こいつも自分の腕をおはぎに変えやがった。
そこにライムが跳びついた。
「コッチ、オイシイ!」
おい、ちょっと待て!
「い、痛いっ! 痛い、痛いですっ! ライムッ! 痛いですっ!」
馬鹿がもう一人増えた。
「……何やってんのよ、二人とも……。ライム、それ、おにぎりじゃないから。離れなさい。それ、クリマーの腕だから」
「デモ、オイシイ」
怖ぇよ、スライム。
おっかねぇよ、プリズムスライム。
「そんなわけないでしょうがっ! とっとと離れるっ」
クリマーの腕に絡みついたライムを抱えて何とか引き離すヨウミ。
全くこいつら何なんだか。
「痛いですっ! ヨウミさんっ!」
「あ、ほんとだ。美味しい」
「おいこらヨウミ! お前も何やってんだ馬鹿!」
物欲が激しすぎるぞお前ら!
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