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三波新、定住編
おにぎりのひみつ ま、サミーもそれ食って大きくなるなら、それに越したことはない
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「そんな仕組みになってたのかあ。全然知らなかったぞお」
モーナーも俺のおにぎりを評価していた。
言葉数がいつもよりやや少ない。
ミアーノの話を聞いて驚きと感嘆のあまりに、ということなんだろうな。
ライムはその話を聞いてから、おにぎりを食うペースがいきなり上がった。
テンちゃんは相変わらず。
だが、サミーと遊びたがってる。
さっさと自分の分を食い終わってすぐ、サミーの毛づくろいをしている。
サミーは俺の胡坐の上で、涼しい顔をしておむおむとひたすらおにぎりを食べている。
「そういえば、冒険者の中にはとても有り難がる人いたわよね。非常食として役に立ったにしては、ちょっと大げさだと思ったんだけど」
「魔力を消費するのを仕事にしてる奴らぁ、ひょっとしてそーゆーこと感じ取れてたんじゃね? 体力回復よりゃあ即効性あるからなー」
なるほどねぇ、とヨウミは呟きながらも首をかしげている。
実感が湧かなきゃ疑わしい気持ちは消えねえか。
「でも、ドーセンさんのところのお客さん達には評判ですよね」
「あれは田んぼの米でしょ? 魔力も何もないお米を、それでも品質で仕分けりゃいくらかはいいご飯を炊けるんじゃない?」
「そっちの社会の話にゃ、よぅ分らん。まぁ魔力が使えるもんがたくさんいりゃ、世界にある魔力の量はあがるし、使えるもんが少なくなりゃ、いずれは減ってく。そんな仕組みじゃねーかの?」
なるほどね。
理論的には理解できるが、魔力を実感できなゃ、この話を理解するとこ止まりで終わりだ。
理解もできなさそうな奴が、俺の膝の上にいる。
おにぎりを食い終わると、またも俺の頭の上によじ登る。
それはいいんだが、生まれて二十四時間しか経ってないんだよな。
よく動く。
それにハサミの力が結構強い。
俺の頭に上る時ハサミを使うんだが、ちと痛くなってきた。
「慣れてるわねー。流石お父さん」
「お父さんやめろ。それとテンちゃんは、俺の頭の上にいるときはサミーの毛づくろい止めろ」
テンちゃんの唾液を被って喜ぶ趣味はねぇ。
毛づくろいできる生き物は、頭の上に上ったサミーは、いつもなぜかご機嫌のようで、「ミャッ、ミャッ」と小さい声でテンポよく鳴いている。
まぁ機嫌がいいのはいいことだ。
だが、一つだけ迷惑なことがある。
「サミーよぉ、俺はまだ昼飯を一口も食ってねぇんだけど」
「ミッ?」
「……いや、『ミッ?』じゃなくてな。別のとこでくつろいでくんねぇかな?」
「ミュ~……」
今度は肩に移動する。
えっちらおっちらと、落ちないように懸命に動く様子をみんなは微笑ましく見ているんだが、俺の食事が一向に進まない。
困った時だけのお前ら頼みなんだがな。
「ほらほら、アラタがご飯食べられないでしょ? サミー、こっちにおいで?」
ヨウミが手を差し伸べるが、何やら俺の肩の上でもそもそと蠢いている。
どうやらハサミで毛づくろいしようとしているらしい。
テンちゃんが舌を出してサミーを舐めようとしていた。
「おい。肩の上によだれ垂らすのも禁止」
「よだれなんか垂らさないよっ!」
テンちゃんが憤慨している。
とりあえずサミーは降りてくんないかなぁ。
ヨウミが手を伸ばすと、それを嫌がるように反対の肩に機敏に移動した。
「ミィ~」
「怖くないよー。でないと、お父さんがご飯食べられないんだって」
「だからお父さん言うな! ギョリュウの習性って、親から離れられないとかってあるのか?」
「さあなぁ。おりゃあ知らねぇな。ンーゴは……も知らねぇよな」
ギョリュウと一番距離が近いミアーノが知らないなら、他のみんなは知ってるわけがない。
種族としての特徴なのか、個体としての個性なのか。
甘えたい年齢なのか人見知りなのか……。
「……って、何でライムが膝の上に上がってくるんだよ。お前はもうでかくなって膝の上に収まらねぇだろうが」
「ヤダ」
やだってお前……。
しかし、でかくても丸みを帯びてプニプニ動いていれば、そこはかとなく可愛らしさは感じてしまうもんなんだな。
「ライム……、ひょっとしてライバル意識持ってるんですか?」
「らいばる? ナニソレ」
体のてっぺんを伸び縮みさせている。
「ライバル意識っつーより、嫉妬とかじゃねえの? どうでもいいけどサミーといいライムといい……飯食わせろよ」
「申し訳ないんですが、サミーには敵わないと思いますよ? 人気者になりたいのなら……一緒にいて楽しい思いをさせてくれるとか……」
「でもライムには、おにぎりのセットの飲み物を加工して、品質を高めるっていう重要な役目を果たしてるじゃない。私達には欠かせないメンバーの一人よ?」
クリマーもマッキーもなかなかいいことを言うじゃないか。
ということで、素直に聞いて膝から退いて……。
「色気漂わせると、アラタの気を惹くことはできるんじゃない?」
おいこら馬鹿天馬!
お前は何をぼけた……。
いや、色ボケたこと言いやがるんだ!
……素早くどいたライムの反応がすごく気になるが。
「お? おぉ?」
「ちょっと、ライム……」
ライムは体の形状を変えて、滑らかな彫刻像みたいな形に変えていく。
どんな……って……そりゃ……。
「こら、ライム。流石にそれはやめなさい。って言うかテンちゃん。なんてこと言うのよあんたは!」
俺以外に起こることはないヨウミも、流石にこれは厳しくせにゃ……。
艶やかに光る虹色の体がな。
女性のその……。
えぇい!
サミーはサミーで俺から離れる気はなさそうだし、どうすんだこれっ!
※※※※※ ※※※※※
サミーとライムは何とか俺から離れてくれて、ようやく昼飯にありつけた。
その間、慣れてきたのか、サミーはみんなにじゃれつき始めた。
社交性が高まってくれりゃいいがなぁ。
「それにしてもアラタあ」
「ん?」
「ギョリュウって、こんな動物だったんかあ?」
「動物って……。報告した通り、エイっていう魚そっくりの体。あとサミーみたいにハサミを持ってた」
「魚っていったらあ、川で時々見かける生き物だよなあ? 手足がなくてえ、ヒレがあってえ」
「そそ」
川魚は見たことあるんだな。
でもずっとここで生活しているモーナーは、海の魚は見たことはないか。
「本とかで見たことあるけどお……あんな毛、生えてなかったよなあ?」
「親はうろこに覆われてた。全然違う」
「まぁなんだ、産み捨てられる運命の卵の中身は、だあれも見たこたないからな。俺ら、この世界での初体験したメンバーっちゅうこったな」
ミアーノの言う通りではあるんだろうが、そんな暢気なことを言ってていいのか。
この中で育児経験のある奴ぁ……クリマーは弟だしなぁ。いねぇなぁ。
「食いもんとか、俺らと同じもん食わせていいのか? まぁ……短命な魔物だったら仕方がないにせよ……」
「かもしんねぇな。寿命が一年二年って言われても納得できるやぜ?」
だったら伸び伸びと遊ばせてやるのが一番なんだろうが、長生きする個体なら、それでわがままに育っていくのも問題だな。
「ネルコハ、オキル」
やかましいっ。
モーナーも俺のおにぎりを評価していた。
言葉数がいつもよりやや少ない。
ミアーノの話を聞いて驚きと感嘆のあまりに、ということなんだろうな。
ライムはその話を聞いてから、おにぎりを食うペースがいきなり上がった。
テンちゃんは相変わらず。
だが、サミーと遊びたがってる。
さっさと自分の分を食い終わってすぐ、サミーの毛づくろいをしている。
サミーは俺の胡坐の上で、涼しい顔をしておむおむとひたすらおにぎりを食べている。
「そういえば、冒険者の中にはとても有り難がる人いたわよね。非常食として役に立ったにしては、ちょっと大げさだと思ったんだけど」
「魔力を消費するのを仕事にしてる奴らぁ、ひょっとしてそーゆーこと感じ取れてたんじゃね? 体力回復よりゃあ即効性あるからなー」
なるほどねぇ、とヨウミは呟きながらも首をかしげている。
実感が湧かなきゃ疑わしい気持ちは消えねえか。
「でも、ドーセンさんのところのお客さん達には評判ですよね」
「あれは田んぼの米でしょ? 魔力も何もないお米を、それでも品質で仕分けりゃいくらかはいいご飯を炊けるんじゃない?」
「そっちの社会の話にゃ、よぅ分らん。まぁ魔力が使えるもんがたくさんいりゃ、世界にある魔力の量はあがるし、使えるもんが少なくなりゃ、いずれは減ってく。そんな仕組みじゃねーかの?」
なるほどね。
理論的には理解できるが、魔力を実感できなゃ、この話を理解するとこ止まりで終わりだ。
理解もできなさそうな奴が、俺の膝の上にいる。
おにぎりを食い終わると、またも俺の頭の上によじ登る。
それはいいんだが、生まれて二十四時間しか経ってないんだよな。
よく動く。
それにハサミの力が結構強い。
俺の頭に上る時ハサミを使うんだが、ちと痛くなってきた。
「慣れてるわねー。流石お父さん」
「お父さんやめろ。それとテンちゃんは、俺の頭の上にいるときはサミーの毛づくろい止めろ」
テンちゃんの唾液を被って喜ぶ趣味はねぇ。
毛づくろいできる生き物は、頭の上に上ったサミーは、いつもなぜかご機嫌のようで、「ミャッ、ミャッ」と小さい声でテンポよく鳴いている。
まぁ機嫌がいいのはいいことだ。
だが、一つだけ迷惑なことがある。
「サミーよぉ、俺はまだ昼飯を一口も食ってねぇんだけど」
「ミッ?」
「……いや、『ミッ?』じゃなくてな。別のとこでくつろいでくんねぇかな?」
「ミュ~……」
今度は肩に移動する。
えっちらおっちらと、落ちないように懸命に動く様子をみんなは微笑ましく見ているんだが、俺の食事が一向に進まない。
困った時だけのお前ら頼みなんだがな。
「ほらほら、アラタがご飯食べられないでしょ? サミー、こっちにおいで?」
ヨウミが手を差し伸べるが、何やら俺の肩の上でもそもそと蠢いている。
どうやらハサミで毛づくろいしようとしているらしい。
テンちゃんが舌を出してサミーを舐めようとしていた。
「おい。肩の上によだれ垂らすのも禁止」
「よだれなんか垂らさないよっ!」
テンちゃんが憤慨している。
とりあえずサミーは降りてくんないかなぁ。
ヨウミが手を伸ばすと、それを嫌がるように反対の肩に機敏に移動した。
「ミィ~」
「怖くないよー。でないと、お父さんがご飯食べられないんだって」
「だからお父さん言うな! ギョリュウの習性って、親から離れられないとかってあるのか?」
「さあなぁ。おりゃあ知らねぇな。ンーゴは……も知らねぇよな」
ギョリュウと一番距離が近いミアーノが知らないなら、他のみんなは知ってるわけがない。
種族としての特徴なのか、個体としての個性なのか。
甘えたい年齢なのか人見知りなのか……。
「……って、何でライムが膝の上に上がってくるんだよ。お前はもうでかくなって膝の上に収まらねぇだろうが」
「ヤダ」
やだってお前……。
しかし、でかくても丸みを帯びてプニプニ動いていれば、そこはかとなく可愛らしさは感じてしまうもんなんだな。
「ライム……、ひょっとしてライバル意識持ってるんですか?」
「らいばる? ナニソレ」
体のてっぺんを伸び縮みさせている。
「ライバル意識っつーより、嫉妬とかじゃねえの? どうでもいいけどサミーといいライムといい……飯食わせろよ」
「申し訳ないんですが、サミーには敵わないと思いますよ? 人気者になりたいのなら……一緒にいて楽しい思いをさせてくれるとか……」
「でもライムには、おにぎりのセットの飲み物を加工して、品質を高めるっていう重要な役目を果たしてるじゃない。私達には欠かせないメンバーの一人よ?」
クリマーもマッキーもなかなかいいことを言うじゃないか。
ということで、素直に聞いて膝から退いて……。
「色気漂わせると、アラタの気を惹くことはできるんじゃない?」
おいこら馬鹿天馬!
お前は何をぼけた……。
いや、色ボケたこと言いやがるんだ!
……素早くどいたライムの反応がすごく気になるが。
「お? おぉ?」
「ちょっと、ライム……」
ライムは体の形状を変えて、滑らかな彫刻像みたいな形に変えていく。
どんな……って……そりゃ……。
「こら、ライム。流石にそれはやめなさい。って言うかテンちゃん。なんてこと言うのよあんたは!」
俺以外に起こることはないヨウミも、流石にこれは厳しくせにゃ……。
艶やかに光る虹色の体がな。
女性のその……。
えぇい!
サミーはサミーで俺から離れる気はなさそうだし、どうすんだこれっ!
※※※※※ ※※※※※
サミーとライムは何とか俺から離れてくれて、ようやく昼飯にありつけた。
その間、慣れてきたのか、サミーはみんなにじゃれつき始めた。
社交性が高まってくれりゃいいがなぁ。
「それにしてもアラタあ」
「ん?」
「ギョリュウって、こんな動物だったんかあ?」
「動物って……。報告した通り、エイっていう魚そっくりの体。あとサミーみたいにハサミを持ってた」
「魚っていったらあ、川で時々見かける生き物だよなあ? 手足がなくてえ、ヒレがあってえ」
「そそ」
川魚は見たことあるんだな。
でもずっとここで生活しているモーナーは、海の魚は見たことはないか。
「本とかで見たことあるけどお……あんな毛、生えてなかったよなあ?」
「親はうろこに覆われてた。全然違う」
「まぁなんだ、産み捨てられる運命の卵の中身は、だあれも見たこたないからな。俺ら、この世界での初体験したメンバーっちゅうこったな」
ミアーノの言う通りではあるんだろうが、そんな暢気なことを言ってていいのか。
この中で育児経験のある奴ぁ……クリマーは弟だしなぁ。いねぇなぁ。
「食いもんとか、俺らと同じもん食わせていいのか? まぁ……短命な魔物だったら仕方がないにせよ……」
「かもしんねぇな。寿命が一年二年って言われても納得できるやぜ?」
だったら伸び伸びと遊ばせてやるのが一番なんだろうが、長生きする個体なら、それでわがままに育っていくのも問題だな。
「ネルコハ、オキル」
やかましいっ。
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