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三波新、定住編
おにぎりのひみつ その1
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子育てって、大変なのな。
それが人であろうとペットであろうと。
サミーが生まれた翌日から大惨事。
生まれた夜、屋外で一緒に過ごしたのは、いつも通りのンーゴと、野ざらしで睡眠は慣れてるミアーノ。
布団の代わりになってくれたテンちゃんに、サミーの添い寝に付き添った俺。
ボディガード代わりのライムだったんだが。
「起きて、アラタ」
「……んー……、ん?」
「この子にオネショされた」
日が昇り始める時間帯だった。
テンちゃんの灰色の体毛の一部が、サミーのおしっこの色に染まっている。
思わず笑い出しそうになったが、その被害が俺に及びそうになって慌てて起きた。
「まじかよっ!」
跳び起きて確認する。
トイレの躾、先にすべきだった!
けどどう躾していいのか分からん。
で、サミーはどこにいる?
オネショの跡から離れたはずなのに、その臭いがひどい。
が、サミーはすぐに見つけた。
俺が寝ていたときの頭の上の位置。
「アラタ……」
「何だよ、テンちゃん」
「髪の毛の色、変」
「え?」
思わず触りそうになった。
だが脳内に危険信号が響いた。
サミーのおねしょの臭いが強いまま。
そして俺の髪の毛の色が変。
そしてサミーが眠ってる位置。
「……頭、洗ってくるっ!」
「ちょっ! あたしのお腹、お腹も洗ってよぉ!」
「自分で洗えや」
「起き上がれるわけないでしょう! ちょっと!」
お腹で眠らせたかったのはお前だっ!
俺は知らんっ!
生まれたばかりの赤ちゃんは何も知らない。
そして一人きりでは何もできない。
俺が世話をしなきゃならない相手はサミーだ。
どんな生き物のおしっこにもバイキンはあるだろう。
まずは自分の頭を洗い流すのが先だ。
サミーの体を洗うのはその後。
テンちゃんは自分で洗え。
「なんだが騒がしいなや。何があったんかい?」
「まぁ生まれたての赤ちゃんなら誰でもするんだろうな。俺とテンちゃんがオネショ食らった」
「アヒャヒャ! 健康で何よりだなや。おぅ、サミー、おはよう。おはよう、分かるがい?」
「まだ分からんだろ」
「アラタ、オハヨウ」
「おう、おはよう、ンーゴ」
さて、可愛いトラブルで始まった朝も、おにぎり作りから始めんとな。
※※※※※ ※※※※※
この日から食事形式が変わった。
形式というか、予定というか。
今までは、一緒に食事ができるメンバー達とは、なるべく一緒に食事してた。
同じ釜の飯を食うって言葉もあるしな。
それが今は、まずはある程度成長するまでは、俺はサミーにつきっきりの形になった。
それに優先しなきゃならないこともある。
ミアーノとンーゴの食事の件だ。
二人で一食につきおにぎり十個。
そして今んとこ、サミーも一食につき一個で十分のようだから、一日で三十三個作っておく。
作り終わって二人におにぎりを一食分持って行き、そこでサミーも朝食を食べる。
それが終わって俺の朝飯の時間になる。
「それにしてもミアーノ。いや、ンーゴに直接聞いてもいいんだが」
「ン?」
「何があったんかい?」
二人はあっという間にそのおにぎりを食い終わる。
サミーはちょこちょこと齧るから、結構時間がかかる。
その様子を眺めながら聞いてみた。
「ミアーノはまだ納得がいくんだが、ンーゴの体長って……十メートルくらいあるんじゃないか?」
「めーとる? なんじゃそりゃ」
ミアーノもンーゴも、人間のいろんな知識はほとんど持ち合わせていない。
だから俺らが知ってて当然の事を理解できない時がある。
「あー……体が大きいだろ? よくおにぎり六個程度で満足できるなってさ。満腹にならんだろ」
「あー……そーゆーことかい。まぁ確かに食う量少なんだら、体持たんわな。けどこんな、俺の手でも収まるおにぎり六個で、ンーゴは十分っちゅうとる。何でか分らん? つーより、今までアラタぁ、分かんなかったんかい!」
いや、ここはツッコミが来る場面じゃないだろ。
「分かんないも何も、俺はただ、実りのいい米だけを収穫して、それを炊いて食ったり食わせたりしてきたわけだが……それだけだぞ?」
「実りのいいて……それしか感じられんかったんか?」
「それしか……って、それを感じ取れる奴自体いないって聞いたし」
ミアーノの奴、腕組みをして考え込んでいる。
なにか問題でもあるのか?
俺が考える最善の手段を尽くしているだけだが。
「実りのいい、ねぇ。……まぁ何つーか……。随分な手間かけんだの。稲刈りしたりせんかったりか?」
「何を言ってる。稲刈りどころか田植えもしたことねぇぞ」
「米泥棒してんのか、お前!」
「誰がするか!」
会話が微妙にすれ違ってる。
こんなやりとりの最中にサミーは食べ終わり、えっちらおっちらと俺の体をよじ登って俺の頭の上でくつろいでいる。
「おい、サミー。そこでションベンすんなよ? ……で、ミアーノ、俺は田んぼの米にはあまり興味ないんだ」
「興味ない? そりゃ興味深い話やの」
うまいことを言ったつもりか?
くだらない反応は放置。
そして俺は一から説明した。
この世界では、道端に生えているススキからも米が穫れることを知った。
その実り具合が田んぼの稲よりも抜群に良い。
所有者不明の、手入れを全くされてない土地に生えているそれらの中で、いい感じの物ばかりを収穫している。
「なるほどなぁ。理屈は分からんが、いい物があるからもらおうと。ま、誰のもんでもないもんを持ってくのは問題ないけどなぁ。理屈しらんとは思わんかった」
「ミアーノは知ってんのか」
「知ってるっつーか心当たりっつーか。こういうことかって感じでな」
どういうことだよ。
それが人であろうとペットであろうと。
サミーが生まれた翌日から大惨事。
生まれた夜、屋外で一緒に過ごしたのは、いつも通りのンーゴと、野ざらしで睡眠は慣れてるミアーノ。
布団の代わりになってくれたテンちゃんに、サミーの添い寝に付き添った俺。
ボディガード代わりのライムだったんだが。
「起きて、アラタ」
「……んー……、ん?」
「この子にオネショされた」
日が昇り始める時間帯だった。
テンちゃんの灰色の体毛の一部が、サミーのおしっこの色に染まっている。
思わず笑い出しそうになったが、その被害が俺に及びそうになって慌てて起きた。
「まじかよっ!」
跳び起きて確認する。
トイレの躾、先にすべきだった!
けどどう躾していいのか分からん。
で、サミーはどこにいる?
オネショの跡から離れたはずなのに、その臭いがひどい。
が、サミーはすぐに見つけた。
俺が寝ていたときの頭の上の位置。
「アラタ……」
「何だよ、テンちゃん」
「髪の毛の色、変」
「え?」
思わず触りそうになった。
だが脳内に危険信号が響いた。
サミーのおねしょの臭いが強いまま。
そして俺の髪の毛の色が変。
そしてサミーが眠ってる位置。
「……頭、洗ってくるっ!」
「ちょっ! あたしのお腹、お腹も洗ってよぉ!」
「自分で洗えや」
「起き上がれるわけないでしょう! ちょっと!」
お腹で眠らせたかったのはお前だっ!
俺は知らんっ!
生まれたばかりの赤ちゃんは何も知らない。
そして一人きりでは何もできない。
俺が世話をしなきゃならない相手はサミーだ。
どんな生き物のおしっこにもバイキンはあるだろう。
まずは自分の頭を洗い流すのが先だ。
サミーの体を洗うのはその後。
テンちゃんは自分で洗え。
「なんだが騒がしいなや。何があったんかい?」
「まぁ生まれたての赤ちゃんなら誰でもするんだろうな。俺とテンちゃんがオネショ食らった」
「アヒャヒャ! 健康で何よりだなや。おぅ、サミー、おはよう。おはよう、分かるがい?」
「まだ分からんだろ」
「アラタ、オハヨウ」
「おう、おはよう、ンーゴ」
さて、可愛いトラブルで始まった朝も、おにぎり作りから始めんとな。
※※※※※ ※※※※※
この日から食事形式が変わった。
形式というか、予定というか。
今までは、一緒に食事ができるメンバー達とは、なるべく一緒に食事してた。
同じ釜の飯を食うって言葉もあるしな。
それが今は、まずはある程度成長するまでは、俺はサミーにつきっきりの形になった。
それに優先しなきゃならないこともある。
ミアーノとンーゴの食事の件だ。
二人で一食につきおにぎり十個。
そして今んとこ、サミーも一食につき一個で十分のようだから、一日で三十三個作っておく。
作り終わって二人におにぎりを一食分持って行き、そこでサミーも朝食を食べる。
それが終わって俺の朝飯の時間になる。
「それにしてもミアーノ。いや、ンーゴに直接聞いてもいいんだが」
「ン?」
「何があったんかい?」
二人はあっという間にそのおにぎりを食い終わる。
サミーはちょこちょこと齧るから、結構時間がかかる。
その様子を眺めながら聞いてみた。
「ミアーノはまだ納得がいくんだが、ンーゴの体長って……十メートルくらいあるんじゃないか?」
「めーとる? なんじゃそりゃ」
ミアーノもンーゴも、人間のいろんな知識はほとんど持ち合わせていない。
だから俺らが知ってて当然の事を理解できない時がある。
「あー……体が大きいだろ? よくおにぎり六個程度で満足できるなってさ。満腹にならんだろ」
「あー……そーゆーことかい。まぁ確かに食う量少なんだら、体持たんわな。けどこんな、俺の手でも収まるおにぎり六個で、ンーゴは十分っちゅうとる。何でか分らん? つーより、今までアラタぁ、分かんなかったんかい!」
いや、ここはツッコミが来る場面じゃないだろ。
「分かんないも何も、俺はただ、実りのいい米だけを収穫して、それを炊いて食ったり食わせたりしてきたわけだが……それだけだぞ?」
「実りのいいて……それしか感じられんかったんか?」
「それしか……って、それを感じ取れる奴自体いないって聞いたし」
ミアーノの奴、腕組みをして考え込んでいる。
なにか問題でもあるのか?
俺が考える最善の手段を尽くしているだけだが。
「実りのいい、ねぇ。……まぁ何つーか……。随分な手間かけんだの。稲刈りしたりせんかったりか?」
「何を言ってる。稲刈りどころか田植えもしたことねぇぞ」
「米泥棒してんのか、お前!」
「誰がするか!」
会話が微妙にすれ違ってる。
こんなやりとりの最中にサミーは食べ終わり、えっちらおっちらと俺の体をよじ登って俺の頭の上でくつろいでいる。
「おい、サミー。そこでションベンすんなよ? ……で、ミアーノ、俺は田んぼの米にはあまり興味ないんだ」
「興味ない? そりゃ興味深い話やの」
うまいことを言ったつもりか?
くだらない反応は放置。
そして俺は一から説明した。
この世界では、道端に生えているススキからも米が穫れることを知った。
その実り具合が田んぼの稲よりも抜群に良い。
所有者不明の、手入れを全くされてない土地に生えているそれらの中で、いい感じの物ばかりを収穫している。
「なるほどなぁ。理屈は分からんが、いい物があるからもらおうと。ま、誰のもんでもないもんを持ってくのは問題ないけどなぁ。理屈しらんとは思わんかった」
「ミアーノは知ってんのか」
「知ってるっつーか心当たりっつーか。こういうことかって感じでな」
どういうことだよ。
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