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第一章 一件目、異世界龍退治
女神なな 邪龍成敗! そして報告
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それでも取れた睡眠は五時間くらい。
まぁそれで十分だろう。
起きたらすぐに折り紙でぐりを呼び出した。
「出番がないっつって拗ねるかと思ったら。懐っこいのは有難いな」
「あなたが作り主だからね。懐くのも当然だけど、私にも懐いてくれるのはうれしいな。でもそればかりに気を取られていられないわよ?」
龍がいる現場の一番近い酒場に行った時と同じ格好で教会を出発することになった。
ぐりを出すということは、ライムは出せないんだよな。
つまり昨夜のような鎧はつけられない。
「危険なことするんじゃねぇのか? その着物じゃすぐに破けるだろ」
「なあんにも問題ないわよ? さ、早く乗って乗って」
また俺よりも先にぐりの背中に乗りやがる。
やれやれ。
またあの大空を羽ばたいてくれるのかね。高いとこ勘弁してほしいよな。
※※※※※ ※※※※※ ※※※※※
「昨日の夜、あれだけちやほやされたからすぐに向かわなきゃ効果がないのよ」
「え? なんだって?」
こっちは高い所にいる恐怖と戦ってる最中だってのに、ななのやつが話しかけるもんだからよく聞こえねぇ。
「さっさと片を付けるってこと。あの龍の頭の上空で滞空出来るかしら?」
「だそうだ。ななの言う通りやってみ? ぐり」
ぐりの背中の中央でうつぶせの俺。ぐりの顔どころか耳まで遠いがそれでもぐりの体毛で籠る俺の声は聞こえたらしい。
言うことを理解した反応を見せてくれるのを見ると、やっぱ可愛いもんだよな。
高い所は怖いけど。
「で、ななよ、そろそろ教えてくれてもいいんじゃね? どうやって龍退治するのよ?」
「この世界にない魔法を使うの。分かりやすく言うと、時間の加速。って、説明は後。ちょっと静かにしててね。いろいろ魔法使うから」
静かにするなんてお手の物だ。
横や下を見ないようにして、ぐりの背中のど真ん中で動かないままでいりゃいいんだから。
それにしても、下にいる魔術師とやらは俺達の存在に気が付かないのかね。
……ななの体の周りが何やら発光してるっぽいけど、集中してるんだろうな。
まぁ出来れば早く終わってほしいんだが……。
「うん。南君、高いところ嫌いなんだよね? じゃあ着地してもらっていいよ。魔術師達は何も反応ないはずだから」
何も反応がないって……天罰でも下したのか?
まぁいいや。
ぐりにななの言う通りのことを頼むと、ゆっくりと旋回しながら龍の足元に向けて高度を下げていった。
地面に近くなるにつれ、地面の様子がはっきりと分かる。
飛び降りて着地できるとは思えない高さは怖い。
それでも視界に入る地面は、どこもかしこも氷漬け。
そればかりではない。
氷の厚さがかなりある。
地面の何メートルも上を歩くことになりそうだ。
「魔術師達も随分ここを冷やしたもんだな。降りていいのか?」
今回もななが術で、ぐりの体を中心に気圧や気温を適度に調節してくれているらしい。
「このまま乗ってた方が無難ね。魔術師達が龍を呼び出して、勝手に暴れないように氷漬けにしてたらしいけど、私がその力を勝手に何倍も増やしてあげちゃった。龍もだけど、魔術師達の体も氷漬け。テヘ」
いや、そこはテヘペロする場面じゃねぇ。
で、冷やしてどうするんだよ。
「魔術師達の処分は住民達に任せるわ。私にかけられた願は、龍を何とかしてくれってことだったからね」
「その龍は……見た目氷漬けのままだな」
「龍は火を吐いていた。そこがミソだったのよ」
ミソ、好きだね。
順を追って説明してもらいたいもんだ。
「体内で火を起こせる存在ってことよね。魔術めいたものだと思ったから、その力をさらに引き出して、さらに竜が持つ魔力すべて火の方面に配分させたのよ」
「火力が強くなるわな。それで?」
「おそらくそれだけじゃ足りない。だから私の魔力も送ってあげたのよ」
そんなに高熱を持たせてどうする気だ? しかも外側は分厚い氷だろ?
「中はこの上ない高温。外は逆にこの上ない冷凍。どうなると思う?」
「それだけで分かるかよ」
「さらに龍の体内へは、時間の加速の魔法も書けました。一秒を一秒の長さではなく年単位で時間を経過させるの。一秒が一年や十年なんて長さじゃないわよ?」
そんなことまでできんのか、この女神様。
するってーと……。
長い長―い年月をかけて、高温と低温を繰り返された龍……。
いや。
この場合は龍じゃねぇ。
そうか……そういうことか!
「巨大な龍の体内の話じゃねぇな? 火を生み出せる巨大な岩盤の話だ」
結構ななもキレるじゃねぇか。
そのドヤ顔、今は許してやる。女神相手に上から目線だがな。
「そ。小さな地球みたいな感じね。そこで生み出されるものは、希少価値を持つ岩ってこと。人がどんどん少なくなって、生活するにも厳しくて、国からの援助も少なくて、それでも生まれ故郷にいる人達に、これからの生活を少しでも楽にしてあげられるかなって」
本来ならばこの地域に住む者達が所有権を主張できるだろう。
だが全住民が町や村ごと焼失されたんじゃ、その権利を主張する者もいない。
「いろんなお話し聞かせてもらったから、そのお礼にこのことを伝えてあげようかなって。その後どう扱うかは、それは私の知ったことではないわね。でもこれで私が介入できる範囲で出来ることはすべて出来たつもり。魔術師達のことは彼らの審判に任せることにするわ」
ななは話を終えると龍の様子を見届ける。
俺も氷の中の龍の変化を見る。
巨大な龍を象った宝石、鉱物。
これを財源にすりゃ、あの酒場がある町も復興できるだろうな。
龍の体は、溶解と冷却の激しい温度差を、とてつもない長い時間を経て体験している。
地球誕生から俺の生きている時代までを短い時間で駆け抜けているんだろう。
ななの「そろそろいいかな」という声と共に、その変化は終了した。
「あとは龍の部分だけ氷を溶かして完成。さ、あの町に行きましょうか」
※※※※※※ ※※※※※ ※※※※※
時間はお昼頃。
一秒間にあの龍はどれくらいの年月を体験したんだろうか。
龍の上空へは朝の九時ごろに到着したはずだ。
三時間たったとして、秒に言い換えると一万八百秒。
一秒を一年や十年程度の長さにはしないとななは言っていた。
百年? ならば百八万年も経験したということになる。
が、おそらくそれ以上長い時間を経過したんじゃないかと思う。
地球の歴史規模の時間を経過させたと言っていた。
いずれ氷を溶かした後のあの龍は、全然動きようがない、まさしく巨大な宝石と鉱物のオブジェだった。
「でも昼から酒場やってるわきゃねぇだろうよ」
「宿泊所も兼ねてたんじゃなかった? あの三人きっといるわよ」
ななは構わずドアを押し開ける。
「いらっ……なんだ、幽霊サンじゃねぇか。どうした? まだ彷徨ってたのか?」
用心棒の二人は既に昼ご飯を食べていた。
「んー、その事なんだけど……」
「幽霊がこの世で迷い事を抱えてるだけじゃなく、言い方も迷ってんのか。笑えるなぁオイ」
用心棒のマッスって言ったっけか。そいつの毒にもう一人の用心棒ユーゴーが力なく笑ってる。
仕事に張り合いもなきゃそうなるか。
「私達が何者なのかを調べてたんだけど、あの龍にも恨みはあってさ。私達が何者かを調べるのは、もう諦めたのよ」
「へぇ。ま、俺らには興味ねぇな。協力も出来ねぇし。そんな奇抜な服着てる奴ぁ見た事ぁねぇからよ」
「それはいいんだけど、龍の方は退治したから、それを報せに来ただけ」
いきなり三人が目を丸くしてんぞ。
「た、退治した?」
「氷漬けのまんまだろ? それで退治したってのか?」
「口から出まかせだろ? 落ち着けよ、ユーゴー、ザイナー」
ななが一部始終を詳しく説明する。
勿論どうやって退治したかという話じゃない。
今龍はどうなっているかってことと、魔術師の存在。
「宝石、鉱物取り放題かよ……」
「俺ら三人で、何とか……ならんか」
「ルイセイに残ってるやつら全員駆り出したらいいだろうよ。だがその前に、現状の確認が先だ。幽霊サンよ、こいつらに確認させたいんだがいいか?」
それもそうだ。
口先ばかりの話しかしていない。
信用してもらうには現場に同行してもらうのが一番手っ取り早い。
※※※※※ ※※※※※ ※※※※※
流石に初めて魔獣の背中に乗る二人を、大空に連れていくには危なすぎる。
速度を抑えた低空飛行で移動する。
大空を高速で移動するよりも時間は取られたが、それでも馬車などの交通手段よりは、到着までには大分早かった。
「……もともと寒い地域だから厚着する必要はあるが、氷漬けされてた時はとても来れたもんじゃなかった」
「間違いねぇな。レアもんだぜ、これ。国の連中動き出す前に運び出そうや。……なぁ、あんたら。あんたらにも何か……」
「何言ってんの。私達幽霊が何を欲しがるっての。私達に関する話以外は興味ないのよ。新しい情報がなきゃこの土地から離れて別の所で探すけど、まずあなた達を酒場に帰さないといけないわよね?」
※※※※※ ※※※※※ ※※※※※
酒場に戻り、用心棒たちは主のザイナーに報告をしている。
「……結局龍退治はあんたらがやったってことだよな?」
「そういうことになるわね」
「幽霊がただ龍に付きまとうだけってんなら、こっちは知らぬ存ぜぬで済ませられる。だが宝石に鉱物を手に入れられるってんなら、あんたらのことを俺らは」
「実体化した幽霊だって昨日言ったはずだろ? それに得体のしれない俺達にいろんな話を聞かせてくれたそのお礼ということにしとけばいいんじゃないか? ま、俺らのことは好きに誰彼に話しても気にしないよ」
俺の言葉に三人は見合わせている。
遠慮する理由はどこにもないだろうに。
換金したら来神社使いきれないほどの金額になるはずだ。
個人じゃなく、この街の復興のためだったらちょうどいい額になるんじゃねぇの?
俺がそんなこと言わずとも、ななも同意見のことを口にしている。
三人が交わす議論は、次第にななに同調していった。
「じゃ、俺らはまたどこぞに彷徨ってるさ。縁があるとは思えないが、達者でな」
「幽霊から達者でって挨拶されるとは思わなかったな」
酒場の主、ザイナーのそんな言葉で用心棒二人と共に見送られ、俺とななはぐりの背中に乗って教会に向かった。
まぁそれで十分だろう。
起きたらすぐに折り紙でぐりを呼び出した。
「出番がないっつって拗ねるかと思ったら。懐っこいのは有難いな」
「あなたが作り主だからね。懐くのも当然だけど、私にも懐いてくれるのはうれしいな。でもそればかりに気を取られていられないわよ?」
龍がいる現場の一番近い酒場に行った時と同じ格好で教会を出発することになった。
ぐりを出すということは、ライムは出せないんだよな。
つまり昨夜のような鎧はつけられない。
「危険なことするんじゃねぇのか? その着物じゃすぐに破けるだろ」
「なあんにも問題ないわよ? さ、早く乗って乗って」
また俺よりも先にぐりの背中に乗りやがる。
やれやれ。
またあの大空を羽ばたいてくれるのかね。高いとこ勘弁してほしいよな。
※※※※※ ※※※※※ ※※※※※
「昨日の夜、あれだけちやほやされたからすぐに向かわなきゃ効果がないのよ」
「え? なんだって?」
こっちは高い所にいる恐怖と戦ってる最中だってのに、ななのやつが話しかけるもんだからよく聞こえねぇ。
「さっさと片を付けるってこと。あの龍の頭の上空で滞空出来るかしら?」
「だそうだ。ななの言う通りやってみ? ぐり」
ぐりの背中の中央でうつぶせの俺。ぐりの顔どころか耳まで遠いがそれでもぐりの体毛で籠る俺の声は聞こえたらしい。
言うことを理解した反応を見せてくれるのを見ると、やっぱ可愛いもんだよな。
高い所は怖いけど。
「で、ななよ、そろそろ教えてくれてもいいんじゃね? どうやって龍退治するのよ?」
「この世界にない魔法を使うの。分かりやすく言うと、時間の加速。って、説明は後。ちょっと静かにしててね。いろいろ魔法使うから」
静かにするなんてお手の物だ。
横や下を見ないようにして、ぐりの背中のど真ん中で動かないままでいりゃいいんだから。
それにしても、下にいる魔術師とやらは俺達の存在に気が付かないのかね。
……ななの体の周りが何やら発光してるっぽいけど、集中してるんだろうな。
まぁ出来れば早く終わってほしいんだが……。
「うん。南君、高いところ嫌いなんだよね? じゃあ着地してもらっていいよ。魔術師達は何も反応ないはずだから」
何も反応がないって……天罰でも下したのか?
まぁいいや。
ぐりにななの言う通りのことを頼むと、ゆっくりと旋回しながら龍の足元に向けて高度を下げていった。
地面に近くなるにつれ、地面の様子がはっきりと分かる。
飛び降りて着地できるとは思えない高さは怖い。
それでも視界に入る地面は、どこもかしこも氷漬け。
そればかりではない。
氷の厚さがかなりある。
地面の何メートルも上を歩くことになりそうだ。
「魔術師達も随分ここを冷やしたもんだな。降りていいのか?」
今回もななが術で、ぐりの体を中心に気圧や気温を適度に調節してくれているらしい。
「このまま乗ってた方が無難ね。魔術師達が龍を呼び出して、勝手に暴れないように氷漬けにしてたらしいけど、私がその力を勝手に何倍も増やしてあげちゃった。龍もだけど、魔術師達の体も氷漬け。テヘ」
いや、そこはテヘペロする場面じゃねぇ。
で、冷やしてどうするんだよ。
「魔術師達の処分は住民達に任せるわ。私にかけられた願は、龍を何とかしてくれってことだったからね」
「その龍は……見た目氷漬けのままだな」
「龍は火を吐いていた。そこがミソだったのよ」
ミソ、好きだね。
順を追って説明してもらいたいもんだ。
「体内で火を起こせる存在ってことよね。魔術めいたものだと思ったから、その力をさらに引き出して、さらに竜が持つ魔力すべて火の方面に配分させたのよ」
「火力が強くなるわな。それで?」
「おそらくそれだけじゃ足りない。だから私の魔力も送ってあげたのよ」
そんなに高熱を持たせてどうする気だ? しかも外側は分厚い氷だろ?
「中はこの上ない高温。外は逆にこの上ない冷凍。どうなると思う?」
「それだけで分かるかよ」
「さらに龍の体内へは、時間の加速の魔法も書けました。一秒を一秒の長さではなく年単位で時間を経過させるの。一秒が一年や十年なんて長さじゃないわよ?」
そんなことまでできんのか、この女神様。
するってーと……。
長い長―い年月をかけて、高温と低温を繰り返された龍……。
いや。
この場合は龍じゃねぇ。
そうか……そういうことか!
「巨大な龍の体内の話じゃねぇな? 火を生み出せる巨大な岩盤の話だ」
結構ななもキレるじゃねぇか。
そのドヤ顔、今は許してやる。女神相手に上から目線だがな。
「そ。小さな地球みたいな感じね。そこで生み出されるものは、希少価値を持つ岩ってこと。人がどんどん少なくなって、生活するにも厳しくて、国からの援助も少なくて、それでも生まれ故郷にいる人達に、これからの生活を少しでも楽にしてあげられるかなって」
本来ならばこの地域に住む者達が所有権を主張できるだろう。
だが全住民が町や村ごと焼失されたんじゃ、その権利を主張する者もいない。
「いろんなお話し聞かせてもらったから、そのお礼にこのことを伝えてあげようかなって。その後どう扱うかは、それは私の知ったことではないわね。でもこれで私が介入できる範囲で出来ることはすべて出来たつもり。魔術師達のことは彼らの審判に任せることにするわ」
ななは話を終えると龍の様子を見届ける。
俺も氷の中の龍の変化を見る。
巨大な龍を象った宝石、鉱物。
これを財源にすりゃ、あの酒場がある町も復興できるだろうな。
龍の体は、溶解と冷却の激しい温度差を、とてつもない長い時間を経て体験している。
地球誕生から俺の生きている時代までを短い時間で駆け抜けているんだろう。
ななの「そろそろいいかな」という声と共に、その変化は終了した。
「あとは龍の部分だけ氷を溶かして完成。さ、あの町に行きましょうか」
※※※※※※ ※※※※※ ※※※※※
時間はお昼頃。
一秒間にあの龍はどれくらいの年月を体験したんだろうか。
龍の上空へは朝の九時ごろに到着したはずだ。
三時間たったとして、秒に言い換えると一万八百秒。
一秒を一年や十年程度の長さにはしないとななは言っていた。
百年? ならば百八万年も経験したということになる。
が、おそらくそれ以上長い時間を経過したんじゃないかと思う。
地球の歴史規模の時間を経過させたと言っていた。
いずれ氷を溶かした後のあの龍は、全然動きようがない、まさしく巨大な宝石と鉱物のオブジェだった。
「でも昼から酒場やってるわきゃねぇだろうよ」
「宿泊所も兼ねてたんじゃなかった? あの三人きっといるわよ」
ななは構わずドアを押し開ける。
「いらっ……なんだ、幽霊サンじゃねぇか。どうした? まだ彷徨ってたのか?」
用心棒の二人は既に昼ご飯を食べていた。
「んー、その事なんだけど……」
「幽霊がこの世で迷い事を抱えてるだけじゃなく、言い方も迷ってんのか。笑えるなぁオイ」
用心棒のマッスって言ったっけか。そいつの毒にもう一人の用心棒ユーゴーが力なく笑ってる。
仕事に張り合いもなきゃそうなるか。
「私達が何者なのかを調べてたんだけど、あの龍にも恨みはあってさ。私達が何者かを調べるのは、もう諦めたのよ」
「へぇ。ま、俺らには興味ねぇな。協力も出来ねぇし。そんな奇抜な服着てる奴ぁ見た事ぁねぇからよ」
「それはいいんだけど、龍の方は退治したから、それを報せに来ただけ」
いきなり三人が目を丸くしてんぞ。
「た、退治した?」
「氷漬けのまんまだろ? それで退治したってのか?」
「口から出まかせだろ? 落ち着けよ、ユーゴー、ザイナー」
ななが一部始終を詳しく説明する。
勿論どうやって退治したかという話じゃない。
今龍はどうなっているかってことと、魔術師の存在。
「宝石、鉱物取り放題かよ……」
「俺ら三人で、何とか……ならんか」
「ルイセイに残ってるやつら全員駆り出したらいいだろうよ。だがその前に、現状の確認が先だ。幽霊サンよ、こいつらに確認させたいんだがいいか?」
それもそうだ。
口先ばかりの話しかしていない。
信用してもらうには現場に同行してもらうのが一番手っ取り早い。
※※※※※ ※※※※※ ※※※※※
流石に初めて魔獣の背中に乗る二人を、大空に連れていくには危なすぎる。
速度を抑えた低空飛行で移動する。
大空を高速で移動するよりも時間は取られたが、それでも馬車などの交通手段よりは、到着までには大分早かった。
「……もともと寒い地域だから厚着する必要はあるが、氷漬けされてた時はとても来れたもんじゃなかった」
「間違いねぇな。レアもんだぜ、これ。国の連中動き出す前に運び出そうや。……なぁ、あんたら。あんたらにも何か……」
「何言ってんの。私達幽霊が何を欲しがるっての。私達に関する話以外は興味ないのよ。新しい情報がなきゃこの土地から離れて別の所で探すけど、まずあなた達を酒場に帰さないといけないわよね?」
※※※※※ ※※※※※ ※※※※※
酒場に戻り、用心棒たちは主のザイナーに報告をしている。
「……結局龍退治はあんたらがやったってことだよな?」
「そういうことになるわね」
「幽霊がただ龍に付きまとうだけってんなら、こっちは知らぬ存ぜぬで済ませられる。だが宝石に鉱物を手に入れられるってんなら、あんたらのことを俺らは」
「実体化した幽霊だって昨日言ったはずだろ? それに得体のしれない俺達にいろんな話を聞かせてくれたそのお礼ということにしとけばいいんじゃないか? ま、俺らのことは好きに誰彼に話しても気にしないよ」
俺の言葉に三人は見合わせている。
遠慮する理由はどこにもないだろうに。
換金したら来神社使いきれないほどの金額になるはずだ。
個人じゃなく、この街の復興のためだったらちょうどいい額になるんじゃねぇの?
俺がそんなこと言わずとも、ななも同意見のことを口にしている。
三人が交わす議論は、次第にななに同調していった。
「じゃ、俺らはまたどこぞに彷徨ってるさ。縁があるとは思えないが、達者でな」
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