俺の店の屋根裏がいろんな異世界ダンジョンの安全地帯らしいから、握り飯を差し入れてる。

網野ホウ

文字の大きさ
上 下
185 / 196
後日談:屋根裏部屋は異空間! おにぎりが結ぶ、俺を知らない父さんとの縁

暗いダンジョンの中の危険な場所で絶体絶命 その先にあったものは

しおりを挟む
 予想通り、尻尾を振り回しての打撃が来た。
 流石にダメージはでかかった。
 フォールスをかばってワニに背中を向けたんだが、その背中に強烈な一撃。
 呼吸が一瞬止まって、跳ね飛ばされたあとも激痛が続く。
 補助魔法の効果も役に立たないってことは、やっぱ大人の冒険者じゃないとクリアできない階層なんだな。
 いや、それどころじゃないんだけど。

 でも何と言うか。
 一瞬の判断力と行動力も、俺の方が優れてるのかも。
 さっきの二人を放り投げた時も、地面の異変を感じて二人に向かって即座に駆け出してたからな。

 こんな時にそんなことを分かっても……。

「……この先、今分かった俺の特性を活かす機会があるかどうか」
「え、縁起の悪い事言わないでよ! 今ここからどう逃げるのか考えるのが先でしょ!」

 相変わらず俺への毒舌がひどい。
 ……ということは、フォールスには体へのダメージはないと見ていい。
 俺もたまには役に立つじゃないか。

「また来たわ!」

 尻尾の攻撃か。
 今度はフォールスが俺をかばおうとしたけど、そうはいかせない。
 こいつは俺のクラスでは一番の実力の持ち主だし、武術や体術だってある程度こなせる。
 こんな時のいざという時のための切り札……になるかどうか分からんが、こんなことでこいつを消耗させるわけにはいかない。
 温存するなら俺よりもこいつの力の方だ。
 いくら俺が前衛向きじゃなくても、いくら体力がついてなくても、そこんとこを弁えてりゃ俺のやるべきこと、やらなきゃならないことくらいはなぁ!

「ちょっ、エッジ! きゃあっ!」
「ぐあっ!」

 かばったフォールスごと吹っ飛ばされた。
 体のあちこちが痛い。
 尻尾の攻撃で、あちこちの骨、ひびが入ったか折れたか。

 助けを求めたくても、出るのは呻き声だけ。
 フォールスは完全にビビってる。
 母さんを楽にしてあげたかったが、先に俺の方が楽になりそうだ。
 ……父さんに助けを求めたくても天からの助けなんてそうそうないし、生きてたとしても冒険者じゃない人にそれを願うのはどうかと思う。

「こ……ここ、どこ?」
「……ぅ?」

 自然にできたダンジョンだって聞いた。
 でも今いるのは石の中。

 石の中にいる!

 じゃなくて。

 何と言うか……小部屋?
 平らな壁、天井、床。
 自然にできた物じゃない。
 誰かの手によって作られた部屋。

 その部屋は扉が開けっぱなしになってる。
 俺たち二人が扉に向かって吹っ飛ばされたんだろう。
 で、ワニは忌々しそうに何度も体当たりしてくる。
 フォールスはその衝撃が来るたびに俺の背中に隠れようとしてる。
 守りたいのはやまやまだけど、ワニの直撃受けたら流石に俺、体が壊れそうなんだけど?

 って……なんか余裕があるな。
 死ぬ覚悟ができたせいなんだろうか。
 かといってワニに向かって立ち向かっていったところで、撃退できるはずもない。
 なんせこのグループで情けないほどの無力を誇るエッジ様だからなぁ。
 俺に出来ることと言ったらおにぎりを作ることくらいだ。
 しかも誰からもアテにされてないという。

 けど……。
 この部屋、随分丈夫なんだな。
 振動は来るし音もでかいけど……ある意味びくともしない。

「あれ?」
「ひっ……。ど、どうしたの……?」

 この小部屋には、完全に光はない。
 けど、それでも目が慣れた。
 お陰でこの場から離れることができそうな手段を見つけた。
 この部屋にはもう一つ扉があったんだ。

「ここから何事もなく離れることができそうだ。向こう側にもう一つ扉がある。歩けるよな?」
「う、うん」

 よかった。
 俺、普通に歩けるかどうか分かんないからさ。
 どうやら骨折はしてないみたい。
 全身打撲かな?
 よく分かんないけど、フォールスの手を借りなくても歩け……。

「か……肩貸すよ」
「うおっ」

 バランスを崩しかけた。
 いきなり引っ張られた感じがしたからさ。

「ぐっ。……無茶しないでよ。魔力ゼロのくせに」
「……だからこんなことしかできないんだよ」

 暗い中を扉に向かって進む。
 その先には何があるかは分からない。
 けど、ワニよりも恐ろしいモノがいるとしたら、流石の俺でもその気配で分かる。
 扉を開けると……。

「な……何? ここ……」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

スキル:浮遊都市 がチートすぎて使えない。

赤木 咲夜
ファンタジー
世界に30個のダンジョンができ、世界中の人が一人一つスキルを手に入れた。 そのスキルで使える能力は一つとは限らないし、そもそもそのスキルが固有であるとも限らない。 変身スキル(ドラゴン)、召喚スキル、鍛冶スキルのような異世界のようなスキルもあれば、翻訳スキル、記憶スキルのように努力すれば同じことができそうなスキルまで無数にある。 魔法スキルのように魔力とレベルに影響されるスキルもあれば、絶対切断スキルのようにレベルも魔力も関係ないスキルもある。 すべては気まぐれに決めた神の気分 新たな世界競争に翻弄される国、次々と変わる制度や法律、スキルおかげで転職でき、スキルのせいで地位を追われる。 そんななか16歳の青年は世界に一つだけしかない、超チートスキルを手に入れる。 不定期です。章が終わるまで、設定変更で細かい変更をすることがあります。

特典付きの錬金術師は異世界で無双したい。

TEFt
ファンタジー
しがないボッチの高校生の元に届いた謎のメール。それは訳のわからないアンケートであった。内容は記載されている職業を選ぶこと。思いつきでついついクリックしてしまった彼に訪れたのは死。そこから、彼のSecond life が今始まる___。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

やっと買ったマイホームの半分だけ異世界に転移してしまった

ぽてゆき
ファンタジー
涼坂直樹は可愛い妻と2人の子供のため、頑張って働いた結果ついにマイホームを手に入れた。 しかし、まさかその半分が異世界に転移してしまうとは……。 リビングの窓を開けて外に飛び出せば、そこはもう魔法やダンジョンが存在するファンタジーな異世界。 現代のごくありふれた4人(+猫1匹)家族と、異世界の住人との交流を描いたハートフルアドベンチャー物語!

知らない異世界を生き抜く方法

明日葉
ファンタジー
異世界転生、とか、異世界召喚、とか。そんなジャンルの小説や漫画は好きで読んでいたけれど。よく元ネタになるようなゲームはやったことがない。 なんの情報もない異世界で、当然自分の立ち位置もわからなければ立ち回りもわからない。 そんな状況で生き抜く方法は?

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

処理中です...