119 / 196
王女シェイラ=ミラージュ
シェイラの手記:私も次第に
しおりを挟む
アール君がここに居ついて一か月くらい経つんだけど、何度かここに来たことがある人達からは、アール君より私の方に関心を向けてくる。
私の前の、コウジの相棒を助けたことがある男の戦士とか、かれー? がどうのこうの喚いてた女の魔術師さんとか、そうそう、アール君の話し相手になってくれた弓戦士の仲間の槍の戦士の人とか……いろんな人から話しかけられた。
そう言えば、コウジはアール君の名前知らないのよね。
教えようとしても拒否するし。
「異世界と往復できないんだから、そんなのを知ったところで意味がない」
とか言うし。
でも考えてみれば、私だって時々屋根裏部屋の扉が開いて誰かが入って来るのを何度か見たことはある。
けど、プレハブの壁から通り抜ける人ってコウジしかいないのよね。
「俺の世界じゃお前らみたいな種族を受け入れられる奴はほとんどいないと思うぞ? そう言うのが出てくる物語やアニメとかはたくさんあるけどな」
なんてこと言ってた。
だから誰もこの部屋に入れないようにしてるんだって。
「本当は、友達どころか知り合い、一人もいないんじゃない?」
私だって、表面上かもしれないけど友達の一人や二人……どころじゃないわね。
話しかけてくる人達は庶民の中にもいたもの。
からかい半分で聞いてみた。
けど、もしここに異世界の人達が誰も来なくなったら、この人はその後どうするつもりなんだろ?
「余計なお世話だ」
まぁ私もそう思うんだけどね。
でも私達の世話ばかりしてるようにしか見えないんだよね。
それが、私達が来なくなったら、私達が世話していた時間って無駄になっちゃうんじゃないのかなーってさ。
そのこと、この人気付いてんのかな?
ま、好き好きだろうけどさ。
「でもあれだよな。コルトちゃんの歌もよかったけど、シェイラちゃんの術も有り難いよな」
「重体でも、握り飯一個で五割は治るって感じだもんな」
そうだ。
人のこと構ってられない。
私は、私の出来ることがどこまで通用するか。
自分の力を確信できるようになるまで、使いこなせるようになりたい。
おにぎりにこの術をかけた初めの頃は、人の役に立ちたいって思うようになった。
おにぎりの力だけじゃなく、私の力のことも、たくさんの人から認められるようになってからは、私のそんな目的が、さらに上のレベルに上がった感じになった。
「シェイラちゃんに付きまとってるあの子供も、なかなか甲斐甲斐しいじゃねぇか」
「でもコウジは全く会話しようとしてないよな? 部屋も作ってもらってないようだし……。コウジの相棒って訳じゃないのか」
「コウジの孫弟子って感じがしない? もちろんシェイラちゃんがコウジの直弟子……弟子?」
弟子って……。
錬金術の導師についてるアール君じゃあるまいし。
「シェイラお姉ちゃん、ノートのストックもそろそろなくなりそうなんだけど」
っとと、そのアール君からお呼びがかかったか。
って、ノートのストックもないの?!
「アール君、あなた、ノートにいろいろ書き過ぎじゃないの?」
「そんなことないよ。話聞いたら、前よりも部屋の出入りが激しくなったみたいだから、ノートに書く人も増えたんじゃないかって言われたよ?」
自分が書こうとしたらいつの間にかページが埋まってて、知らないうちにストックまで使われてたんだって。
「コウジに直接言えばいいじゃない」
「言ったよ? でも聞こうとしないもん」
しょうがないな。
毛嫌いしてるのかしら?
とりあえず、全部埋まったノート全部コウジに持ってくか。
一、二、三……十冊?
三十ページのノートか。
ページ数の多いノート用意してもらった方がいいんじゃないかな?
「シェイラお姉ちゃん、一冊落としたよ」
「……アール君。他にすることないなら手伝うくらいしたら?」
会話はまともにするようになったけど、こういう場面で気が回らないのも気になるわよね。
表紙だけつまんで持ち上げたノート。
中身が一部ちらっと見えたけど……見たことがある文字で文章が書かれてる。
私の国の文字じゃないけど……見たことも言ったこともない異世界の文字にしては、見覚えのある文字の並び順もあるから、外国の文字かも。
しかも結構書かれてるわね。
あれ?
その割には、屋根裏部屋の扉が開くのをもっと見てもいいはずなのに……。
ま、気にするほどじゃないか。
今すべきは、ノートの交換よね。
私の前の、コウジの相棒を助けたことがある男の戦士とか、かれー? がどうのこうの喚いてた女の魔術師さんとか、そうそう、アール君の話し相手になってくれた弓戦士の仲間の槍の戦士の人とか……いろんな人から話しかけられた。
そう言えば、コウジはアール君の名前知らないのよね。
教えようとしても拒否するし。
「異世界と往復できないんだから、そんなのを知ったところで意味がない」
とか言うし。
でも考えてみれば、私だって時々屋根裏部屋の扉が開いて誰かが入って来るのを何度か見たことはある。
けど、プレハブの壁から通り抜ける人ってコウジしかいないのよね。
「俺の世界じゃお前らみたいな種族を受け入れられる奴はほとんどいないと思うぞ? そう言うのが出てくる物語やアニメとかはたくさんあるけどな」
なんてこと言ってた。
だから誰もこの部屋に入れないようにしてるんだって。
「本当は、友達どころか知り合い、一人もいないんじゃない?」
私だって、表面上かもしれないけど友達の一人や二人……どころじゃないわね。
話しかけてくる人達は庶民の中にもいたもの。
からかい半分で聞いてみた。
けど、もしここに異世界の人達が誰も来なくなったら、この人はその後どうするつもりなんだろ?
「余計なお世話だ」
まぁ私もそう思うんだけどね。
でも私達の世話ばかりしてるようにしか見えないんだよね。
それが、私達が来なくなったら、私達が世話していた時間って無駄になっちゃうんじゃないのかなーってさ。
そのこと、この人気付いてんのかな?
ま、好き好きだろうけどさ。
「でもあれだよな。コルトちゃんの歌もよかったけど、シェイラちゃんの術も有り難いよな」
「重体でも、握り飯一個で五割は治るって感じだもんな」
そうだ。
人のこと構ってられない。
私は、私の出来ることがどこまで通用するか。
自分の力を確信できるようになるまで、使いこなせるようになりたい。
おにぎりにこの術をかけた初めの頃は、人の役に立ちたいって思うようになった。
おにぎりの力だけじゃなく、私の力のことも、たくさんの人から認められるようになってからは、私のそんな目的が、さらに上のレベルに上がった感じになった。
「シェイラちゃんに付きまとってるあの子供も、なかなか甲斐甲斐しいじゃねぇか」
「でもコウジは全く会話しようとしてないよな? 部屋も作ってもらってないようだし……。コウジの相棒って訳じゃないのか」
「コウジの孫弟子って感じがしない? もちろんシェイラちゃんがコウジの直弟子……弟子?」
弟子って……。
錬金術の導師についてるアール君じゃあるまいし。
「シェイラお姉ちゃん、ノートのストックもそろそろなくなりそうなんだけど」
っとと、そのアール君からお呼びがかかったか。
って、ノートのストックもないの?!
「アール君、あなた、ノートにいろいろ書き過ぎじゃないの?」
「そんなことないよ。話聞いたら、前よりも部屋の出入りが激しくなったみたいだから、ノートに書く人も増えたんじゃないかって言われたよ?」
自分が書こうとしたらいつの間にかページが埋まってて、知らないうちにストックまで使われてたんだって。
「コウジに直接言えばいいじゃない」
「言ったよ? でも聞こうとしないもん」
しょうがないな。
毛嫌いしてるのかしら?
とりあえず、全部埋まったノート全部コウジに持ってくか。
一、二、三……十冊?
三十ページのノートか。
ページ数の多いノート用意してもらった方がいいんじゃないかな?
「シェイラお姉ちゃん、一冊落としたよ」
「……アール君。他にすることないなら手伝うくらいしたら?」
会話はまともにするようになったけど、こういう場面で気が回らないのも気になるわよね。
表紙だけつまんで持ち上げたノート。
中身が一部ちらっと見えたけど……見たことがある文字で文章が書かれてる。
私の国の文字じゃないけど……見たことも言ったこともない異世界の文字にしては、見覚えのある文字の並び順もあるから、外国の文字かも。
しかも結構書かれてるわね。
あれ?
その割には、屋根裏部屋の扉が開くのをもっと見てもいいはずなのに……。
ま、気にするほどじゃないか。
今すべきは、ノートの交換よね。
0
お気に入りに追加
435
あなたにおすすめの小説
異世界に転移したからモンスターと気ままに暮らします
ねこねこ大好き
ファンタジー
新庄麗夜は身長160cmと小柄な高校生、クラスメイトから酷いいじめを受けている。
彼は修学旅行の時、突然クラスメイト全員と異世界へ召喚される。
転移した先で王に開口一番、魔軍と戦い人類を救ってくれとお願いされる。
召喚された勇者は強力なギフト(ユニークスキル)を持っているから大丈夫とのこと。
言葉通り、クラスメイトは、獲得経験値×10万や魔力無限、レベル100から、無限製造スキルなど
チートが山盛りだった。
対して麗夜のユニークスキルはただ一つ、「モンスターと会話できる」
それ以外はステータス補正も無い最弱状態。
クラスメイトには笑われ、王からも役立たずと見なされ追放されてしまう。
酷いものだと思いながら日銭を稼ごうとモンスターを狩ろうとする。
「ことばわかる?」
言葉の分かるスキルにより、麗夜とモンスターは一瞬で意気投合する。
「モンスターのほうが優しいし、こうなったらモンスターと一緒に暮らそう! どうせ役立たずだし!」
そうして麗夜はモンスターたちと気ままな生活を送る。
それが成長チートや生産チート、魔力チートなどあらゆるチートも凌駕するチートかも分からずに。
これはモンスターと会話できる。そんなチートを得た少年の気ままな日常である。
------------------------------
第12回ファンタジー小説大賞に応募しております!
よろしければ投票ボタンを押していただけると嬉しいです!
→結果は8位! 最終選考まで進めました!
皆さま応援ありがとうございます!
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
追放シーフの成り上がり
白銀六花
ファンタジー
王都のギルドでSS級まで上り詰めた冒険者パーティー【オリオン】の一員として日々活躍するディーノ。
前衛のシーフとしてモンスターを翻弄し、回避しながらダメージを蓄積させていき、最後はパーティー全員でトドメを刺す。
これがディーノの所属するオリオンの戦い方だ。
ところが、SS級モンスター相手に命がけで戦うディーノに対し、ほぼ無傷で戦闘を終えるパーティーメンバー。
ディーノのスキル【ギフト】によってパーティーメンバーのステータスを上昇させ、パーティー内でも誰よりも戦闘に貢献していたはずなのに……
「お前、俺達の実力についてこれなくなってるんじゃねぇの?」とパーティーを追放される。
ディーノを追放し、新たな仲間とパーティーを再結成した元仲間達。
新生パーティー【ブレイブ】でクエストに出るも、以前とは違い命がけの戦闘を繰り広げ、クエストには失敗を繰り返す。
理由もわからず怒りに震え、新入りを役立たずと怒鳴りちらす元仲間達。
そしてソロの冒険者として活動し始めるとディーノは、自分のスキルを見直す事となり、S級冒険者として活躍していく事となる。
ディーノもまさか、パーティーに所属していた事で弱くなっていたなどと気付く事もなかったのだ。
それと同じく、自分がパーティーに所属していた事で仲間を弱いままにしてしまった事にも気付いてしまう。
自由気ままなソロ冒険者生活を楽しむディーノ。
そこに元仲間が会いに来て「戻って来い」?
戻る気などさらさら無いディーノはあっさりと断り、一人自由な生活を……と、思えば何故かブレイブの新人が頼って来た。
【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】
一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。
追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。
無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。
そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード!
異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。
【諸注意】
以前投稿した同名の短編の連載版になります。
連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。
なんでも大丈夫な方向けです。
小説の形をしていないので、読む人を選びます。
以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。
disりに見えてしまう表現があります。
以上の点から気分を害されても責任は負えません。
閲覧は自己責任でお願いします。
小説家になろう、pixivでも投稿しています。
異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~
夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。
が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。
それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。
漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。
生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。
タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。
*カクヨム先行公開
やっと買ったマイホームの半分だけ異世界に転移してしまった
ぽてゆき
ファンタジー
涼坂直樹は可愛い妻と2人の子供のため、頑張って働いた結果ついにマイホームを手に入れた。
しかし、まさかその半分が異世界に転移してしまうとは……。
リビングの窓を開けて外に飛び出せば、そこはもう魔法やダンジョンが存在するファンタジーな異世界。
現代のごくありふれた4人(+猫1匹)家族と、異世界の住人との交流を描いたハートフルアドベンチャー物語!
俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。
妻が女神になりまして!?~異世界転移から始まる、なんちゃってスローライフ~
玉響なつめ
ファンタジー
吉田ヨシヤ、四十歳。
ある日仕事から帰ると妻が待っていた。
「離婚するか、異世界に一緒に行くか、選んで!!」
妻の唐突な発言に目を白黒させつつも、愛する女と別れるなんて論外だ!
だがまさか妻の『異世界』発言が本物で、しかも彼女は女神になった?
夫として神の眷属となったヨシヤに求められているのは、信者獲得!?
与えられた『神域』は信者獲得でレベルアップした妻により、どんどん住みよくなっていく。
これはヨシヤが異世界で手に入れた、夢の自給自足生活(っぽいもの)の物語……のはずである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる