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王女シェイラ=ミラージュ
異変の原因 確信と証明
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「は? もう一回あんたに腹を立てる? 何言ってんの?」
「厳密にいえば違う。俺に腹を立てた時の俺への行動を、今起こしてみなってこと」
「……あんた、殴られるとうれしいの?」
んなわきゃあるか。
「魔法とやらをぶっ放そうとしたんだよな? しかも二回。で、母親に封じられて光るだけにとどまった」
嫌なことを思い出させられてんだろうな。
俺の指摘を忌々しそうに睨みながら聞いている。
「握り飯食った連中の感激するほどの反応は、昨日が初めてだったんだよ。で、お前が来たのも昨日。そこに理由があるとしか思えなくてな」
だが握り飯の変化の心当たりはこいつにはない。
当たり前だ。
意識はほとんど俺に向けられていたんだから。
となりゃ、米の異変は俺の巻き沿いを食らったということだ。
こいつの何のアクションに巻き込まれたか。
俺に向けられた、あの光しかないだろう。
一回目の時は、流しの陰に置かれてた位置。
だが光の先に置かれていた。
二回目は、後ずさった俺の後ろに米袋が置かれてた。
だからそれに足をとられて俺は転んだ。
俺と一緒に、そこにあった米袋すべても光を浴びたはずだ。
こいつは俺をどうするつもりで魔法を発動させようとしたかは知らん。
結局は俺を懲らしめたり痛い目に遭わせようとしたことは間違いないだろうがな。
いずれ、その効果は同じものじゃないだろうか。
「それをやって、お前が得することは何一つない。だから頭を下げてまでお願いしたって訳だ」
「……ふーん……。まぁやってもいいけど、それで、あんたの推理が当たったらどうするの?」
どうもしない。
ただ、そんな効果がある魔法が存在する、ということを知るだけのこと。
「……お前の母親に、あんたは自分の娘を見くびっている、と伝えとくくらいか」
……何だその変に崩れた顔は。
照れてんのか?
照れ隠しか?
こいつの心の内などどうでもいい。
助かる冒険者達の数が増えるかもしれないことを考えれば、ほんとにどうでもいい。
「し、仕方ないわねっ。や、やるわよっ!」
アホウ。
俺にかますな。米袋にやれ。
……うぉっ! まぶしいっ!
「……もういいわ。同じ力量を込めたから。ま、何も変化がなけりゃそれまでね」
「……まずは洗って、そして炊いてからだ」
初めて昼の時間に握り飯を出すことになるな。
※※※※※ ※※※※※
炊きあがったご飯は今までと同じ。
見た目も香りも、特に怪しいところはないし効果がありそうな感じもしない。
昼に握り飯を食わせて癖になられても困るし、それぞれの異世界で噂されても困るし。
それに時間もかけたくはない。
具のない、塩をまぶしただけの塩おにぎりにする。
そして冒険者全員に食わせた時に、最大の異変が起きた。
ここまでの俺とシェイラとのやり取りの流れは全員が見ていた。
だからこそ、口にした握り飯の効果は誰のおかげかということはみんな理解している。
誰もがシェイラに感謝の気持ちを表していた。
感激のあまり、シェイラの両手を握る者、シェイラの足元に跪く者、力いっぱい抱きしめようとする者もいた。
もっとも抱きしめようとした者は、シェイラにあっさりと躱され、逆に肘の関節を取られている。
この身長差でよくかませるものだ。
自衛手段として叩き込まれたんじゃねぇか?
シェイラは、まぁそれでも……うん、照れ隠しだな。
顔を真っ赤にして「べ、別にあんたのためにやったわけじゃないんだからねっ」という言葉が似合いそうな顔をしている。
ただちやほやされたことは数多くあっただろう。
だが、誰かの力になるような、誰かの役に立つようなことはしたことがなかったに違いない。
周りに大人達が群がる。
その顔はどちらも笑顔のはず。
しかし、その違いは明らかに分かってるんだろうな。だからこそ、戸惑いを隠せないでいるんだ。
米を研いでいる間、炊飯器で炊いている間、鼻に突くことばかり口にして、周りの大人を小馬鹿にするようなことばかり口にして、人を見下すような態度をとり続けていた。
周りの大人は当然うんざりする。
呆れるし、力量を見定められる大人達は、それでも彼女の言うことに一々従う反応を示すしかない。
誰が、そんな彼女が自分達の苦しい思いを取り除いてくれるなどと考えるだろう?
誰が、自分らの苦しい立場からそんな彼女が救ってくれると思えるというのか。
感謝を表した彼女の反応が、それまでの態度と打って変る。
可愛らしい、と思わない者はいないはずだ。
考えてみれば、俺は頭を下げて頼んだのは、こいつに得することはないからという理由だ。
それはシェイラに伝えている。
だが結果はどうだ。
彼女の得することばかりじゃないか。
逆に、俺の得することはほとんどないぞ?
避難者からの感謝を受け流し続けてきた俺が文句を言う筋合いじゃないだろうがな。
……で、こいつはこれからどうするんだろうな。
俺は、面倒くさい相手はしたくないんだが。
「厳密にいえば違う。俺に腹を立てた時の俺への行動を、今起こしてみなってこと」
「……あんた、殴られるとうれしいの?」
んなわきゃあるか。
「魔法とやらをぶっ放そうとしたんだよな? しかも二回。で、母親に封じられて光るだけにとどまった」
嫌なことを思い出させられてんだろうな。
俺の指摘を忌々しそうに睨みながら聞いている。
「握り飯食った連中の感激するほどの反応は、昨日が初めてだったんだよ。で、お前が来たのも昨日。そこに理由があるとしか思えなくてな」
だが握り飯の変化の心当たりはこいつにはない。
当たり前だ。
意識はほとんど俺に向けられていたんだから。
となりゃ、米の異変は俺の巻き沿いを食らったということだ。
こいつの何のアクションに巻き込まれたか。
俺に向けられた、あの光しかないだろう。
一回目の時は、流しの陰に置かれてた位置。
だが光の先に置かれていた。
二回目は、後ずさった俺の後ろに米袋が置かれてた。
だからそれに足をとられて俺は転んだ。
俺と一緒に、そこにあった米袋すべても光を浴びたはずだ。
こいつは俺をどうするつもりで魔法を発動させようとしたかは知らん。
結局は俺を懲らしめたり痛い目に遭わせようとしたことは間違いないだろうがな。
いずれ、その効果は同じものじゃないだろうか。
「それをやって、お前が得することは何一つない。だから頭を下げてまでお願いしたって訳だ」
「……ふーん……。まぁやってもいいけど、それで、あんたの推理が当たったらどうするの?」
どうもしない。
ただ、そんな効果がある魔法が存在する、ということを知るだけのこと。
「……お前の母親に、あんたは自分の娘を見くびっている、と伝えとくくらいか」
……何だその変に崩れた顔は。
照れてんのか?
照れ隠しか?
こいつの心の内などどうでもいい。
助かる冒険者達の数が増えるかもしれないことを考えれば、ほんとにどうでもいい。
「し、仕方ないわねっ。や、やるわよっ!」
アホウ。
俺にかますな。米袋にやれ。
……うぉっ! まぶしいっ!
「……もういいわ。同じ力量を込めたから。ま、何も変化がなけりゃそれまでね」
「……まずは洗って、そして炊いてからだ」
初めて昼の時間に握り飯を出すことになるな。
※※※※※ ※※※※※
炊きあがったご飯は今までと同じ。
見た目も香りも、特に怪しいところはないし効果がありそうな感じもしない。
昼に握り飯を食わせて癖になられても困るし、それぞれの異世界で噂されても困るし。
それに時間もかけたくはない。
具のない、塩をまぶしただけの塩おにぎりにする。
そして冒険者全員に食わせた時に、最大の異変が起きた。
ここまでの俺とシェイラとのやり取りの流れは全員が見ていた。
だからこそ、口にした握り飯の効果は誰のおかげかということはみんな理解している。
誰もがシェイラに感謝の気持ちを表していた。
感激のあまり、シェイラの両手を握る者、シェイラの足元に跪く者、力いっぱい抱きしめようとする者もいた。
もっとも抱きしめようとした者は、シェイラにあっさりと躱され、逆に肘の関節を取られている。
この身長差でよくかませるものだ。
自衛手段として叩き込まれたんじゃねぇか?
シェイラは、まぁそれでも……うん、照れ隠しだな。
顔を真っ赤にして「べ、別にあんたのためにやったわけじゃないんだからねっ」という言葉が似合いそうな顔をしている。
ただちやほやされたことは数多くあっただろう。
だが、誰かの力になるような、誰かの役に立つようなことはしたことがなかったに違いない。
周りに大人達が群がる。
その顔はどちらも笑顔のはず。
しかし、その違いは明らかに分かってるんだろうな。だからこそ、戸惑いを隠せないでいるんだ。
米を研いでいる間、炊飯器で炊いている間、鼻に突くことばかり口にして、周りの大人を小馬鹿にするようなことばかり口にして、人を見下すような態度をとり続けていた。
周りの大人は当然うんざりする。
呆れるし、力量を見定められる大人達は、それでも彼女の言うことに一々従う反応を示すしかない。
誰が、そんな彼女が自分達の苦しい思いを取り除いてくれるなどと考えるだろう?
誰が、自分らの苦しい立場からそんな彼女が救ってくれると思えるというのか。
感謝を表した彼女の反応が、それまでの態度と打って変る。
可愛らしい、と思わない者はいないはずだ。
考えてみれば、俺は頭を下げて頼んだのは、こいつに得することはないからという理由だ。
それはシェイラに伝えている。
だが結果はどうだ。
彼女の得することばかりじゃないか。
逆に、俺の得することはほとんどないぞ?
避難者からの感謝を受け流し続けてきた俺が文句を言う筋合いじゃないだろうがな。
……で、こいつはこれからどうするんだろうな。
俺は、面倒くさい相手はしたくないんだが。
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