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未熟な冒険者のコルト
不審人物二人の正体は、あの二人
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日本に帰りたいってんなら、こっから出て行けば自宅に戻れるとは思う。
けど、相棒のエルフさんにはそれはできないだろうな。
この戸が見えないから。
でもこの男の方にはそんなつもりはなさそう……と見ていいよな?
ま、こっちはそっちにかまってられない。
流しにコンロ、掃除しとかにゃ。
「コウジさん、コウジさん」
プレハブ作った時にこれも挿げてもらったんだよな。
「コウジさん、コウジさんってばっ」
一年はまだ経ってないんだよな。
水滴の跡がなー……。
「コウジさんっ! わざと無視してるの分かってるんですからねっ!」
ちっ。
「何だよ、うるさいな」
「まったくもう……。さっきの二人、なんか変……なんですよね。この部屋の説明はしましたけど」
「ここに来る連中はみんな変だよ」
無理して命を危険に晒すんだから。
そうなる前に帰ればいいのに。
「何か、私に興味津々って感じして。またどこかの国からの偵察か何かかな」
「さぁな。誰が来たってやることは同じだろ? 食費が思いの外かからなくなったが、だからと言って俺の生活費はプラスにならねぇんだよ。 装備品作り、頼むぜ?」
「もぉ……。分かってますっ」
雑貨屋の品物よりも、異世界で活用される道具を展示品のような目的で売る方が売り上げが高い。
そもそも店に品物を並べても、買いに来る客の絶対数が少ない。
過疎化だもんなぁ。
※※※※※ ※※※※※
いつもの昼の歌の時間。
俺には効果が及ばないような工夫をしてくれている。
そしていつもの、コルトと二人の昼飯。
まぁ天たまうどんは俺も好きだけどさ。
ところが食べ終わってからがいつもの時間とは違ったんだよな。
「えーっと、コウジさん、ていうのか。あの子、いい歌聞かせてくれてうれしかったよ」
「……それは何よりです」
異世界から来た日本人が、親し気に声をかけてくる。
同じ日本人だから仲良くできるとは限らない。
何か下心ありそうだな。
「あぁ、俺は日本に戻るつもりはないし、ここを自分のいいように利用しようとするつもりもないから安心してくれ」
はい、警戒度をマックスにしようか。
「コルトー、けいかーい」
「はーい」
五秒もあれば、いや、五秒もかからず眠らせることができる。
自分の家に逃げ込む防衛策は、異世界人にしか通用しない。
まさか日本人がやって来るなんて誰が想像できようかっての。
「あぁ、そんな警戒しないでくれ。その歌に不思議な力があることは分かる。君はここにバイトに来てるの?」
自分の素性を明かさずに、相手をあれこれ詮索するのってどうよ?
怪しすぎるだろ、こいつ。
「テンシュ、あなたまだ自己紹介してないでしょ」
「あ、あぁ、そうだったな。すまん。俺は天流……じゃなかった。あれ? 今なんだっけ?」
「オルデン法国。ってなんで私の方が覚えてるのよ」
何なんだこの二人。
夫婦漫才か?
払う金はねぇぞ?
「オルデン法国……って。確かホールスの……」
コルトは心当たりがあるらしい。
盛り上がるんなら勝手にやってろ。
俺は知らん。
「そうそう。ライリーと兄弟だか従兄弟だかのホールスがその隣に国を作った……っつーか天流国内に作った?」
「あ、はい、知ってます。天流の名前も。私も……ホールスだから……」
「まぁ引っ越しはしたけど今もその国内で『法具店アマミ』の店主をさせられてる……」
「え?!」
「テンシュ! そーゆー言い方はないでしょっ!」
「し、知ってます! そこの店主さんは、宝石が絡んだ物作りはいい仕事するって聞いてます! かなりの変人だけど……あ……」
おぉう。
地雷踏みやがった。
「……客に変人が多いからな、あの店は」
「何で私を睨むのよ?」
面白いなー。
けどわざわざ話しかけに来る理由が分からんな。
「俺は別にコルトの保護者でも何でもねぇ。コルトと話が合うなら適当にそこらでしてたらいいんじゃね? 俺が耳挟んだって理解が追いつかねぇし、雑用もあるんでな」
「あ、あぁ、済まないな、コウジさん」
年上にさん付けされるのも落ち着かねぇな。
それはともかく……指輪の部屋から米袋持ってくるか。
……何であの部屋でお金増やせないんだろうなぁ……。
けど、相棒のエルフさんにはそれはできないだろうな。
この戸が見えないから。
でもこの男の方にはそんなつもりはなさそう……と見ていいよな?
ま、こっちはそっちにかまってられない。
流しにコンロ、掃除しとかにゃ。
「コウジさん、コウジさん」
プレハブ作った時にこれも挿げてもらったんだよな。
「コウジさん、コウジさんってばっ」
一年はまだ経ってないんだよな。
水滴の跡がなー……。
「コウジさんっ! わざと無視してるの分かってるんですからねっ!」
ちっ。
「何だよ、うるさいな」
「まったくもう……。さっきの二人、なんか変……なんですよね。この部屋の説明はしましたけど」
「ここに来る連中はみんな変だよ」
無理して命を危険に晒すんだから。
そうなる前に帰ればいいのに。
「何か、私に興味津々って感じして。またどこかの国からの偵察か何かかな」
「さぁな。誰が来たってやることは同じだろ? 食費が思いの外かからなくなったが、だからと言って俺の生活費はプラスにならねぇんだよ。 装備品作り、頼むぜ?」
「もぉ……。分かってますっ」
雑貨屋の品物よりも、異世界で活用される道具を展示品のような目的で売る方が売り上げが高い。
そもそも店に品物を並べても、買いに来る客の絶対数が少ない。
過疎化だもんなぁ。
※※※※※ ※※※※※
いつもの昼の歌の時間。
俺には効果が及ばないような工夫をしてくれている。
そしていつもの、コルトと二人の昼飯。
まぁ天たまうどんは俺も好きだけどさ。
ところが食べ終わってからがいつもの時間とは違ったんだよな。
「えーっと、コウジさん、ていうのか。あの子、いい歌聞かせてくれてうれしかったよ」
「……それは何よりです」
異世界から来た日本人が、親し気に声をかけてくる。
同じ日本人だから仲良くできるとは限らない。
何か下心ありそうだな。
「あぁ、俺は日本に戻るつもりはないし、ここを自分のいいように利用しようとするつもりもないから安心してくれ」
はい、警戒度をマックスにしようか。
「コルトー、けいかーい」
「はーい」
五秒もあれば、いや、五秒もかからず眠らせることができる。
自分の家に逃げ込む防衛策は、異世界人にしか通用しない。
まさか日本人がやって来るなんて誰が想像できようかっての。
「あぁ、そんな警戒しないでくれ。その歌に不思議な力があることは分かる。君はここにバイトに来てるの?」
自分の素性を明かさずに、相手をあれこれ詮索するのってどうよ?
怪しすぎるだろ、こいつ。
「テンシュ、あなたまだ自己紹介してないでしょ」
「あ、あぁ、そうだったな。すまん。俺は天流……じゃなかった。あれ? 今なんだっけ?」
「オルデン法国。ってなんで私の方が覚えてるのよ」
何なんだこの二人。
夫婦漫才か?
払う金はねぇぞ?
「オルデン法国……って。確かホールスの……」
コルトは心当たりがあるらしい。
盛り上がるんなら勝手にやってろ。
俺は知らん。
「そうそう。ライリーと兄弟だか従兄弟だかのホールスがその隣に国を作った……っつーか天流国内に作った?」
「あ、はい、知ってます。天流の名前も。私も……ホールスだから……」
「まぁ引っ越しはしたけど今もその国内で『法具店アマミ』の店主をさせられてる……」
「え?!」
「テンシュ! そーゆー言い方はないでしょっ!」
「し、知ってます! そこの店主さんは、宝石が絡んだ物作りはいい仕事するって聞いてます! かなりの変人だけど……あ……」
おぉう。
地雷踏みやがった。
「……客に変人が多いからな、あの店は」
「何で私を睨むのよ?」
面白いなー。
けどわざわざ話しかけに来る理由が分からんな。
「俺は別にコルトの保護者でも何でもねぇ。コルトと話が合うなら適当にそこらでしてたらいいんじゃね? 俺が耳挟んだって理解が追いつかねぇし、雑用もあるんでな」
「あ、あぁ、済まないな、コウジさん」
年上にさん付けされるのも落ち着かねぇな。
それはともかく……指輪の部屋から米袋持ってくるか。
……何であの部屋でお金増やせないんだろうなぁ……。
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