俺の店の屋根裏がいろんな異世界ダンジョンの安全地帯らしいから、握り飯を差し入れてる。

網野ホウ

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未熟な冒険者のコルト

堂々とさせた、コルトの技術

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 夜の握り飯タイムが終わる。
 俺はいつものように後片付け。
 そしてコルトはいつものように歌を歌う。
 もちろん冒険者達の導眠のために。

 って……お……おい……。
 俺を巻き添えに……。
 って……。

 部屋中に歌声が流れる。
 そして冒険者達はうつらうつらと首が前後左右に揺らめく。
 あるいは壁に寄り掛かり、またある者は床の上に寝そべりながら、誰もが瞼を閉じていく。
 なのに……。

 俺は普通に後片付けをしている。
 いや、後片付けの仕事が進んでいる、と言った方が正しいな。

 待て。
 今のところ、俺には睡魔が来る気配は全くない。
 この作業を終わらせるなら今の内だ。

 ※※※※※ ※※※※※

「……で、眠らせる力の調節は、ターゲットに向けることができたり、ターゲットを除外することも?」
「もちろん! すごいでしょ?」

 自信を持つことはいいことだ。
 過剰や過少にならなければな。

 それにしても、いつの間にそこまで精練させてたんだ、こいつ。

「私、これしかできることないですからね……」

 聞けば自分の部屋で、寝る前にいろいろ試してみたんだと。
 研究熱心なのはいいことだ。
 自分を知る、という意味でもな。
 まぁいいんじゃねぇの?

「みんなに喜んでもらえたりうれしい思いをしてほしいですからね」
「……いい心がけだ。だがまず、あの兵士達、何とかせにゃなぁ……」
「問題ありませんよ。対策は既に考えてます」
「へぇ。お手並み拝見、と気楽に構えていいのかな?」
「はい。お任せくださいっ」

 ほう。
 じゃ、頼りにしてみるか。

 ※※※※※ ※※※※※

 翌朝、プレハブに行くと、兵士達に向かってコルトが何やら言い聞かせている様子。
 ほんとに頼もしくなりつつある。
 けど、何となく、このままでいいはずはないとも思う。

「あ、おはようございます、コウジさん。今この人達にいろいろ説明してたところでした」
「おう、おはよう。朝からずいぶんやる気が出てるな。何してた?」
「はい、四六時中この部屋にはいろんな方が出入りしてますから、その様子を見ていただいてました」

 なるほどな。
 自分が見える扉が開かないのに、人の出入りがある。
 それを目にすれば、ここは普通の場所じゃないことを理解してもらえるってわけか。
 それにしては、なんか俺の方を忌々しそうに見てるんだが?

「何か気に食わなさそうだな。ここは俺の住む家の一部……って、そう言えば説明してなかったな」
「まぁコウジさんが散々何度もいろんな人に説明してきたから、説明に飽きたって気持ちも分らなくはないですけどね……」

 で、コルトは自分の能力を明かした。
 その気になったら永遠に睡眠をとらせることができる、と言う。
 文字通り永眠って訳だ。
 どこまで鍛えたんだこの女エルフは。

 続けてコルトは、俺ばかりじゃなく、ここに来る者みんな、自分の住んでいる世界とは異なる世界に転移することもできない旨を説明した。
 この兵士達は、やはりコルトの能力に注目したらしい。
 傲慢というか何と言うか。

 まぁ結局、コルトの永眠という言葉に、自分らだけじゃなく敵にも通用するようだということで、いくらか落ち着いたようだが。

「……ということで、できればお帰り願います」

 はっきり言っちゃったな、こいつ。
 人の不調は本人以外に分からないから、追い出すようなことはあまり言いたくはない。
 もっとも本音は、どう頑張ったって物理的に追い出すことはできないからなんだけど。
 できもしないことをすると言い張ってもな。
 それを悟られたときに鼻で笑われるのも癪だ。

 しかしこの兵士五人は、朝の握り飯の準備している間に帰っていったようだ。
 団体行動を乱すこともまずいんだろうな。

 ま、何事もなく追い返せたことは何よりだ。

 今日は予定日じゃなかったが、昼飯はカレーうどんだな。
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