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未熟な冒険者のコルト

男戦士の走り書き:コルトちゃんの、こっち側の味方は俺だけか

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「ちょっといいか? 話をちらっと聞いたんだが、コルトちゃんを連れて帰るんだって?」
「おぅ。あの子に最初に声かけて仲間に入れたパーティだからな。やっぱその責任はとらねぇとな」

 何か自信満々って感じだなこいつら。
 この人馬族の男がリーダーなんだっけ?
 トレジャーハンターチームのフロンティア……確かそんな話だったな。
 にしても保護者のつもりか?
 ……あの子のあんなボロボロになった姿知らねぇだろ。
 しかも一人であの合流部屋で……。
 ダンジョンの中を探したかどうかは知らんが、問題は経緯じゃない。彼女を助けられたかどうかだ。
 そしてこいつらは助けられなかった。
 つまりはそういうことだ。

「あんたたちはここには初めて来たのか? 俺は……なんだかんだで六回くらい来てるかもしれん」

 彼ら五人は、俺の話よりコルトちゃんが気になってるようだ。
 コルトちゃんとコウジ、それに人馬族の女の子はこっちを気にする暇はなさそうだ。
 三人でおにぎりを配っている。
 こいつらは、彼女の仕事が終わったらすぐに連れ帰る算段でもつけてるのか?

「この部屋はさ、いろんな世界から冒険者達がやってくる部屋みたいなんだよな。窮地に陥った奴らの救いの神ってとこか。かく言う俺も、ここに来る前からそんな噂を聞いててな」

「俺達は『キュウセイシュ』の力を持つコルトを連れ戻しに来たんだよ」
「救世主がコルトちゃん? な、何を言ってるんだ?」
「何を……って……。お前は噂話を聞いてないのか?」

 初耳だぞ? そんな話は。

「噂……。あー……、お宅らは、ここがどういう部屋かは知ってるのか?」
「……コルトちゃんがいろんな冒険者を救ってる場所、だろ?」

 蝙蝠の亜人が答えて、みんなが頷いてる。
 コウジのことは全然知らないのか?

 俺がコルトちゃんを連れてきた時には、俺は既にこの部屋のことについては知っていた。
 俺はあの子をここに残して自分の世界に帰還した。
 そしてダンジョンから脱出した後は、町の預り所で預けた金を受け取って身支度を整えて、また新たに別の場所に向かってすぐに出発した。
 食糧はフィールドに住む野獣や魔獣の肉や、そこら辺に生えている野草なんかを調理してた。

 基本的には単独行動。
 道中出会う冒険者やチームと気が合えば、一緒に行動することもあった。

 だから仕事の合間に酒場に寄ることはなかった。
 コルトちゃんが救世主、なんて噂が俺の耳に入らなかったのはそのせいか。

 だが彼らは、救世主の渾名は元々はコウジのものだった、ということは知らなかったらしい。
 ここに関する噂を彼らが知ったのは、コルトちゃんが救世主と呼ばれるようになってから。
 その理由は、あの歌か。
 それが噂になった、というのは分かる気がする。
 だが、この五人はコルトちゃんが行方不明になったから探索し始めたんじゃない。
 はっきりと、この歌の効果の噂による、救世主の渾名を当てにしてやって来た。
 間違いない。

「あー、後出しみたいで悪いがな、俺、ここの手前の部屋でコルトちゃんと合流してな」
「え? それは……俺達とはぐれてからかな?」
「多分そうだと思う。装備とかがボロボロだったからな」
「それは迷惑かけてしまったな」
「なぁに。困ったときは互い様。それに……互いにダンジョンから抜けた後も言えるけどな」

 五人が互いに見合わした。
 やはりこの部屋のことについては全く何も知らないようだ。

「異世界の冒険者達も来るんだよ。今ここにいる連中は、ほとんどそれぞれ別の世界から来てるみたいだぞ?」
「マジか!」
「そうなの?」
「初めて聞いた!」
「……ってことは、あんたと俺達は……?」

 流石に分かるか。

「そ。同じ世界の住人同士ってことだ」

「それは心強いことだ」
「これからもよろしくな」

「よろしくしたいのはやまやまだが、ここへはどこから来た? 俺はレイナール王国ってとこからなんだが」
「あぁ、あそこか。俺達はホールス王国ってとこからだ」
「ホールスって、最近建国したんだよな? どっかの国の王の候補が二人いて……」
「そうそう。開拓が結構進んでな。山脈の麓にある洞窟が未開でさ。コルトがいると思われる場所へは、何か危険な目に遭うと行ける、みたいな噂が聞けてさ」

 コウジのことは知らなくても、ここに来る方法は知ってたってことか。
 コルト目当て……いや、おそらくあの娘が歌う力目当てだとしたら、その力を失ったらポイ捨てされるのか?

 ……不憫でならない。
 コルトちゃんが大声を出すのも分かる。
 立場上、彼女の味方になりたくてもなれないコウジの歯がゆさも分かる。
 あいつは冷静になってるつもりみたいだが、雰囲気が明らかに違う。
 その違いが分かるのは、何度もこの部屋を訪れた、せいぜい俺くらいなもんじゃないか?
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