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未熟な冒険者のコルト
神官二人をお見送り
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「帰るのか」
「はい。体力も魔力も回復しました」
「二人一緒に幸運の加護の術をかければ、出口までほぼ無傷で辿り着くことができますので」
パーティからはぐれる前からかけたら、そんな事態にならずに済んだんじゃねぇの? って聞いたら、退却や脱出時に高い効果を発揮するんだそうだ。
「あの時はダンジョンの奥に進もうとしてました。そこでかけたら、効果が切れる頃には魔物に囲まれてる可能性が高かったので」
「それにかかる対象人数も、五人以上になると効果が薄くなるんですよ。なので、術者のみにかけることが多いんですよね」
大人数で移動する時に使用すると、逆に魔力の無駄遣いになるわけだ。
「それにしてもここは不思議な場所ですね。体を休めるだけでも気力は回復していくようでした」
「昨夜と今朝、おにぎりとやらを一個ずつ食べただけなのに、体はほぼ完調に近いです」
それはこっちも聞きてぇよ。
「あの、あの四人の子供達によろしくお伝えください。敢えて名前は聞きません。それが、ここに来る人達を平等に労わることに繋がると思いますので」
そんなことわざわざ口にするほどのことじゃねぇよ。
けど贔屓しないって意味では正しいのかもな。
ま、俺の場合は、次にいつ来るか、そもそも来るかどうか分からない奴の名前まで覚えてらんねぇって気持ちしかないんだが。
「はい、コルトさん。お騒がせしました。えっと……そちらの方も」
そちら呼ばわりだよおい。
まあ知らなきゃ知らないままでいいが。
「そちらの男の方が、救世主様だったのですね……」
様までついちゃったよおい。
コルトに擦り付けるつもりが、とんでもないおまけまでついてきちゃったよおいっ!
「んな大仰なことでもねぇよ。ここから出て行った者のその後日談は見聞きすることはできねぇ。だからあんたらが無事に帰れるように祈ってはおくよ。なんせ滅多に聞くことのねぇそんな話を聞かせてくれたからな」
この部屋から出て行った者の行く末は、正直少しばかりは気になる。
握り飯、無駄にしたんじゃねぇだろうな? ってな。
ましてや寿命までまだまだ長いと思われる年齢の子供らのその後の話だ。
……聞かされてうれしいとは思ったよ。
少しだけな?
こうして神官二人は自分の世界に帰っていった。
いい土産話ができたろうよ。
そしてこっちは、またいつもの毎日がやってくる。
「……コウジさん」
「ん? あ、昨日のアレは勘弁してくれ……」
「その話はもういいですっ。うどんの日、増やしてくださいね?」
うん、詳しくは言いたくない。
理路整然と責め立てられるのが、あんなにきついとは思わなかった……。
お兄さん、ちょっと涙目になっちゃったよ?
「それはともかく……どうしてコウジさん、あの二人に話さなかったんです?」
「ん? 何をだ? 大概喋っただろ」
思い出せん。
あの二人に話ししなきゃならんことなんかないだろ。
「あの子供達四人に、いろいろお話ししてたじゃないですか」
「ん? ……あ、あぁ、忘れてた」
いや、マジで。
俺にとっちゃ昔のことだし、そんなことより目の前にうじゃうじゃいる連中の相手をする今の時間の方が大事だしな。
……大事なのは、今という時間だからな?
目の前にいる連中のことじゃないからな?
それに、俺が感じて、考えて、俺に当てはまった持論だ。
俺以外の誰かが参考にできると思えんし、そんなもんを振り回して人に聞かせる柄でもねぇよ。
「それでも、あの子達の目つきは変わったわよね。ここに来た時と出る時。おとーちゃんのおかげよねぇ?」
「うるせえっ!」
まだいたか、この女魔導師っ!
「ん? 何? おとーちゃんって」
「何でもねぇよ!」
こいつ、夜中のことも見てたのか!
コルトも余計なこと聞こうとすんじゃねぇ!
いらねぇ渾名が増えちまうだろうが!
「コウジの顔つきも変わったわよね」
「え? あぁ、そう言えばちょっとかっこよく見えますね」
何言ってんだ、コルトは。
昨日さんざん言い詰め寄っといてよぉ。
「ううん。かなりやつれてるわよ? 昨日のコルトちゃんの言葉攻めの効果ね。見てて面白かったわぁ」
うるせぇ!
てめぇにゃ握り飯の具、茄子の花ずし丸ごと一個埋め込んでやるから覚悟しろぃ!
「はい。体力も魔力も回復しました」
「二人一緒に幸運の加護の術をかければ、出口までほぼ無傷で辿り着くことができますので」
パーティからはぐれる前からかけたら、そんな事態にならずに済んだんじゃねぇの? って聞いたら、退却や脱出時に高い効果を発揮するんだそうだ。
「あの時はダンジョンの奥に進もうとしてました。そこでかけたら、効果が切れる頃には魔物に囲まれてる可能性が高かったので」
「それにかかる対象人数も、五人以上になると効果が薄くなるんですよ。なので、術者のみにかけることが多いんですよね」
大人数で移動する時に使用すると、逆に魔力の無駄遣いになるわけだ。
「それにしてもここは不思議な場所ですね。体を休めるだけでも気力は回復していくようでした」
「昨夜と今朝、おにぎりとやらを一個ずつ食べただけなのに、体はほぼ完調に近いです」
それはこっちも聞きてぇよ。
「あの、あの四人の子供達によろしくお伝えください。敢えて名前は聞きません。それが、ここに来る人達を平等に労わることに繋がると思いますので」
そんなことわざわざ口にするほどのことじゃねぇよ。
けど贔屓しないって意味では正しいのかもな。
ま、俺の場合は、次にいつ来るか、そもそも来るかどうか分からない奴の名前まで覚えてらんねぇって気持ちしかないんだが。
「はい、コルトさん。お騒がせしました。えっと……そちらの方も」
そちら呼ばわりだよおい。
まあ知らなきゃ知らないままでいいが。
「そちらの男の方が、救世主様だったのですね……」
様までついちゃったよおい。
コルトに擦り付けるつもりが、とんでもないおまけまでついてきちゃったよおいっ!
「んな大仰なことでもねぇよ。ここから出て行った者のその後日談は見聞きすることはできねぇ。だからあんたらが無事に帰れるように祈ってはおくよ。なんせ滅多に聞くことのねぇそんな話を聞かせてくれたからな」
この部屋から出て行った者の行く末は、正直少しばかりは気になる。
握り飯、無駄にしたんじゃねぇだろうな? ってな。
ましてや寿命までまだまだ長いと思われる年齢の子供らのその後の話だ。
……聞かされてうれしいとは思ったよ。
少しだけな?
こうして神官二人は自分の世界に帰っていった。
いい土産話ができたろうよ。
そしてこっちは、またいつもの毎日がやってくる。
「……コウジさん」
「ん? あ、昨日のアレは勘弁してくれ……」
「その話はもういいですっ。うどんの日、増やしてくださいね?」
うん、詳しくは言いたくない。
理路整然と責め立てられるのが、あんなにきついとは思わなかった……。
お兄さん、ちょっと涙目になっちゃったよ?
「それはともかく……どうしてコウジさん、あの二人に話さなかったんです?」
「ん? 何をだ? 大概喋っただろ」
思い出せん。
あの二人に話ししなきゃならんことなんかないだろ。
「あの子供達四人に、いろいろお話ししてたじゃないですか」
「ん? ……あ、あぁ、忘れてた」
いや、マジで。
俺にとっちゃ昔のことだし、そんなことより目の前にうじゃうじゃいる連中の相手をする今の時間の方が大事だしな。
……大事なのは、今という時間だからな?
目の前にいる連中のことじゃないからな?
それに、俺が感じて、考えて、俺に当てはまった持論だ。
俺以外の誰かが参考にできると思えんし、そんなもんを振り回して人に聞かせる柄でもねぇよ。
「それでも、あの子達の目つきは変わったわよね。ここに来た時と出る時。おとーちゃんのおかげよねぇ?」
「うるせえっ!」
まだいたか、この女魔導師っ!
「ん? 何? おとーちゃんって」
「何でもねぇよ!」
こいつ、夜中のことも見てたのか!
コルトも余計なこと聞こうとすんじゃねぇ!
いらねぇ渾名が増えちまうだろうが!
「コウジの顔つきも変わったわよね」
「え? あぁ、そう言えばちょっとかっこよく見えますね」
何言ってんだ、コルトは。
昨日さんざん言い詰め寄っといてよぉ。
「ううん。かなりやつれてるわよ? 昨日のコルトちゃんの言葉攻めの効果ね。見てて面白かったわぁ」
うるせぇ!
てめぇにゃ握り飯の具、茄子の花ずし丸ごと一個埋め込んでやるから覚悟しろぃ!
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