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近衛兵ギュールス=ボールド
所属と方針決定
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「まさか近衛兵師団の中でも『混族』に対する捉え方に温度差があるとは思わなかった」
ギュールスを待機室に案内した部下のケイナから報告を受けたロワーナは深刻な悩みを抱えることとなった。
近衛兵師団は、彼らの役割がいくつかあり、その役割は均等に割り振りはされていない。
オワサワール皇国全土の巡回警備、首都ライザラール全域の警備。皇居付近の警備に皇居内の警備。
日常の業務はそれだけだが、魔族討伐の時には拠点攻略や防衛、遊撃や偵察など多岐にわたる。
これらのすべての役割を万能に果たせる部隊はほとんどいない。相手を制圧するという結果だけで考えると、警備活動の場合は暴力事件は暴動を起こす者が相手となる。その場合は相手をなるべく無傷で制圧することを目的とするが、討伐となると魔族が相手になり、最低でも相手の行動不能。撃破や殲滅が最良の結果となる。
それぞれの役割に対し、近衛兵隊には向き不向きが必ず生じる。これは仕方がないことで、適応しやすい部隊を配置したり活動予定を組まれたりすることになる。
討伐目的の場合は、作戦に適した兵士を選別し部隊の編成が行われる。与えられる役割が偏りがちになる兵も少なくはない。
そんな日常の活動に勤しんでいくうちに、世間の風習や慣習に慣れる者もいれば、道義的な考えを純粋に貫く主義の者もいて、向き不向きよりも深刻な問題が知らないうちに生じ、それに気付かず放置したままであることをこの時点で知った近衛兵師団の団長ロワーナ。
「討伐活動中に不協和音を出されても困るな。かと言って我々の守備隊に配属するのもかなり不安だ」
ロワーナが王都内の巡回警備で遭遇した、魔族討伐本部付近で起きた暴動事件。
『混族』が原因で起きた暴動を見たのも、話は何度も聞いていたが『混族』という種族を実際に見たのも初めてだった。
「そのような扱いをされていたとはな。私には全く想像がつかなかった。市井との感覚のズレはあるとは思っていたがこれほどとは……」
『混族』が成長し、扱いはどうあれ社会の一員となるまで成長するケースは稀である。ひょっとしたらギュールスが初めてのケースかもしれない。
つまり、全身が青いと言うだけでそんな扱いを受ける存在はこれまではいなかったということである。
初めて社会に現れたその人物は、それでも国民全員からその存在すらいきなり非難される事実を、ロワーナは初めての体験で目の当たりにした。
しかし彼には戦力としての価値を見出した。彼女が頭を悩ませるのは当然だろう。
「提案があります」
「何だ? 言ってみろ」
「彼の能力を、周りの目を気にせず存分に発揮させられるなら、隊に編入する必要がないのではないかと愚考します」
実際に彼の能力を目にしたメイファだからこそ、団長の力添えになる自信が見える力ある発言。
「だが同士討ちや誤撃になるようなことは起きないかとも心配するが。『混族』だからという思い込みによるトラブルを防ぐための、彼の護衛が必要になるのではないか、とも思うのだが」
「いえ、護衛すら多分彼は拒否すると思います。近衛兵師団全員の生還を命ずれば、同じ地点に長く留まることはないでしょう。不快に思う者からの不意打ちする時間も与えることがないと思います」
ふむ、と椅子の背に重心をかけてロワーナは考え込む。
仲間と思われる者がいるから仲間割れが起きる。
仲間がいなければ背中から刺されることもない。
「誰かにそばに付き添わせておきたいが、足手まといなどと思われても癪だ。メイファの案を採用するか。よくぞ進言してくれた」
メイファの礼を受け、ロワーナは椅子から立ち上がった。
「彼への指示は私が直接伝えよう。出撃は明後日で受け持ちは第一から第三近衛兵団だったな?」
ロワーナは予定を確認すると、ギュールスがいる待機室に向かった。
ギュールスを待機室に案内した部下のケイナから報告を受けたロワーナは深刻な悩みを抱えることとなった。
近衛兵師団は、彼らの役割がいくつかあり、その役割は均等に割り振りはされていない。
オワサワール皇国全土の巡回警備、首都ライザラール全域の警備。皇居付近の警備に皇居内の警備。
日常の業務はそれだけだが、魔族討伐の時には拠点攻略や防衛、遊撃や偵察など多岐にわたる。
これらのすべての役割を万能に果たせる部隊はほとんどいない。相手を制圧するという結果だけで考えると、警備活動の場合は暴力事件は暴動を起こす者が相手となる。その場合は相手をなるべく無傷で制圧することを目的とするが、討伐となると魔族が相手になり、最低でも相手の行動不能。撃破や殲滅が最良の結果となる。
それぞれの役割に対し、近衛兵隊には向き不向きが必ず生じる。これは仕方がないことで、適応しやすい部隊を配置したり活動予定を組まれたりすることになる。
討伐目的の場合は、作戦に適した兵士を選別し部隊の編成が行われる。与えられる役割が偏りがちになる兵も少なくはない。
そんな日常の活動に勤しんでいくうちに、世間の風習や慣習に慣れる者もいれば、道義的な考えを純粋に貫く主義の者もいて、向き不向きよりも深刻な問題が知らないうちに生じ、それに気付かず放置したままであることをこの時点で知った近衛兵師団の団長ロワーナ。
「討伐活動中に不協和音を出されても困るな。かと言って我々の守備隊に配属するのもかなり不安だ」
ロワーナが王都内の巡回警備で遭遇した、魔族討伐本部付近で起きた暴動事件。
『混族』が原因で起きた暴動を見たのも、話は何度も聞いていたが『混族』という種族を実際に見たのも初めてだった。
「そのような扱いをされていたとはな。私には全く想像がつかなかった。市井との感覚のズレはあるとは思っていたがこれほどとは……」
『混族』が成長し、扱いはどうあれ社会の一員となるまで成長するケースは稀である。ひょっとしたらギュールスが初めてのケースかもしれない。
つまり、全身が青いと言うだけでそんな扱いを受ける存在はこれまではいなかったということである。
初めて社会に現れたその人物は、それでも国民全員からその存在すらいきなり非難される事実を、ロワーナは初めての体験で目の当たりにした。
しかし彼には戦力としての価値を見出した。彼女が頭を悩ませるのは当然だろう。
「提案があります」
「何だ? 言ってみろ」
「彼の能力を、周りの目を気にせず存分に発揮させられるなら、隊に編入する必要がないのではないかと愚考します」
実際に彼の能力を目にしたメイファだからこそ、団長の力添えになる自信が見える力ある発言。
「だが同士討ちや誤撃になるようなことは起きないかとも心配するが。『混族』だからという思い込みによるトラブルを防ぐための、彼の護衛が必要になるのではないか、とも思うのだが」
「いえ、護衛すら多分彼は拒否すると思います。近衛兵師団全員の生還を命ずれば、同じ地点に長く留まることはないでしょう。不快に思う者からの不意打ちする時間も与えることがないと思います」
ふむ、と椅子の背に重心をかけてロワーナは考え込む。
仲間と思われる者がいるから仲間割れが起きる。
仲間がいなければ背中から刺されることもない。
「誰かにそばに付き添わせておきたいが、足手まといなどと思われても癪だ。メイファの案を採用するか。よくぞ進言してくれた」
メイファの礼を受け、ロワーナは椅子から立ち上がった。
「彼への指示は私が直接伝えよう。出撃は明後日で受け持ちは第一から第三近衛兵団だったな?」
ロワーナは予定を確認すると、ギュールスがいる待機室に向かった。
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