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來帝

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被験体とVSS

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「今の我々が使っている実験型移民船の光子AIは32年前に完成した第2.5世代型のものです。そして、移民船本艦隊に使用されている光子AIは第2世代型のものではるこはご承知かと。そして、更なる高速AIを作るには現段階では100年以上はかかると専門家の意見も一致しています。」

ユキは負けまいと更に続ける。

「そこで、この極秘プロジェクトの根本となる「V・S・S」のクラウドネットワークと"人"の脳の処理能力をマルチタスクに並列処理することで従来の光子AIの何百倍以上の処理能力と計算結果その他諸々の恩恵を得ようとした訳です。しかし、ここで問題となってくるのが脳に蓄積された人の"記憶"です。記憶の詳細は省くとしますが、この中でも"エピソード記憶"と"意味記憶"の二つに分けられることができ、我々が残したいのは"意味記憶"つまり知識的な記憶は保持したまま、"エピソード記憶"つまりストーリー性を含む記憶の消去(デリート)をして擬似的なAIを創造し、「VSS」のクラウドネットワークを接続して軍事転用・運用することがプロジェクトの最終段階に当たります。」

「そのため移民船本艦隊で被験者(モルモット)となりうる人物を100人選定しこの隔離施設でのデリート作業及びピコマシンの投薬(注入)作業をしておりましたがピコマシンの投薬後の拒絶反応が見られたのがNo.36の被験体であったという訳です。」
ピコマシンとはナノマシンよりも小さく高性能なロボットである。

「なるほど、プロジェクトの詳細説明とNo.36の関連性は理解できたが・・・なぜピコマシンの拒絶反応が見られたのだね?」
黒服はさも知らなかったような態度でユキに再度説明を求める。

「ピコマシン注入目的の説明から入ることになりますがよろしいでしょうか?」

「かまわん、頼めるかな」
黒服は説明を受け入れることにした。

「ピコマシンを注入し、脳の神経細胞とピコマシンを結合させ、脳細胞全体と脊髄の一部を金属生命体へ変革させることでより高効率な電気信号のやり取りをすることが可能となります。金属生命体へ造り変わった脳全体と脊髄の一部を取り出し"脳殻(のうかく)"へ入れることで外部のネットワークへの高速アクセスと光子AIに代わる第四の新たなAIを造り出すのです。が、No.36はこの金属生命体へ変革させる時に何らかの原因でエピソード記憶の一部が混在してしまうという異例の事態が起こりました。このままでは実験段階で終わる危険性もあったので従来投薬する予定の約16倍以上のピコマシンを注入し、エピソード記憶関連の情報を消去したという経緯に至ります。変革は成功し脳殻への移植も順調に進んでおります。」

「報告ご苦労。人の脳を別の物へと造り変えるか--VSSと脳殻と接続するのは被験体100体で滞りなく実験は進んでいるという認識でよいのだね?これ以上の遅れと予算を増やすことはできないのだからそこらへんははっきりしてくれ。」
黒服は冷たく言い放つ。人を人とも思わぬ精神の持ち主。

「実験及び次のシークエンスは無事に進んでおります。主任からも許可は頂いておりますので・・・。」
ユキはこの黒服が大嫌いであったしかし、後戻りはできない。だから今は耐え忍ぶしかないのだ。

被験体100体の脳殻とV・S・Sのクラウドネットワーク接続のテスト実験が始まっていく。
のちにこのテスト実験は大きな事故を起こすことなく収め擬似AI(脳殻)とVSSの「汎用性多目的攻撃・支援統合ネットワーク兵装システム」の基礎開発と基幹システム構築は大成功に終わった。

光子脳殻AIと兵装システムを搭載したハイブリットのアンドロイドの登場となる。

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