DAHLIA【完結】

本野汐梨 Honno Siori

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 Sさんのおかげで、店舗のNo. 1になることができたのは、入店から2年目が過ぎた頃だった。Sさんがお金を使って、なんでもない日に2000万円使ってくれたことがあった。その事が、一気に拡散されて、私は店の頂点へと、いや歌舞伎町の頂点へと上り詰めた。

 それ以降、Sさん以外にもお金を使ってくれる人が一気に増えた。


 高卒の底辺だった私が、人生逆転を決めた瞬間だった。


 たくさんお金を稼いでは、全て使い果たす日々を過ごした。

 まず、食べるものが変わった。それから、顔を変えた。

 
 あっという間に、20歳を過ぎた私は、日々お酒を飲み続け体調は悪化していた。その代わり、体調の悪化に比例する様に、売上は伸び続けていた。


伸びたのは売上だけではなく、店舗内での地位もどんどん上がっていった。


 本当のバースデーじゃないけど、適当に2月14日が誕生日って設定にしていた。この日付は私が決めたものだった。なんとなく、だけど。

 
 誕生日とバレンタインイベントが被る。

 イベントは、だからね、誕生日にはよくシャンパンタワーを二つ建ててもらった。

 私はナンバーワンだったから誕生日イベントは、1日では終わらず3日間続くこともあった。

 3日、私のためだけの総額一億円以上のシャンパンタワーが店の中に立ち並んだ。

 シャンパンタワーってね。専門の業者が設置してくれるの。

 私は、シャンパンタワーをしてもらう優越感に浸るのがあまりにも好きすぎて、業者の人たちがせっせと私の背よりずっと高いシャンパンタワーを設置する様子をよく眺めてた。

 不思議な感覚だった。

 こんなに私の誕生日を祝うためにお金を出してくれる人がいるなんて。
 
 両親は、家に居付かない人達だった。兄弟もいなかった。友達はいたけれど…


 私は、ナンバーに入り始めた頃から、憧れだったこの店のオーナー、つまり私がキャバ嬢を志す事のキッカケとなったインフルエンサーの女性と話す機会も多くなっていた。最近では、店舗内の週一の会議にも出席する事が多いので、少なくとも週一でそのインフルエンサーに会って話をしていた。

 いくら、No. 1になったからと言って私ではまだ程遠い存在だった。彼女は、一店舗のNo. 1ではない。
 彼女は、もっと上の存在。日本中、何万人もいるであろうキャバ嬢のトップなのだから。
 私の様にたかが30人の女の子の中のトップとは桁があまりにも違いすぎる。

 それに、彼女は元々商社を経営する父親の元に生まれた根っからのお嬢様。東京の郊外より更に外れた田舎の小さな市で生まれ育ち、高校まで暮らしていた様な私とは全く別次元の人間だったんだ。本当に、纏っているオーラが私とは別格なのだから仕方がないかもしれない。




 私の仕事は、彼女の手足となりお金を稼ぐことだった。

 だんだんそのことに気が付き始めたのはNo.1を取るようになってからだった。入店から長い時間が経っていた。



 ある日、Sさんに言われた。


 「茉莉奈まりなちゃんは、旬が終わったね。」


 まだ、店のナンバーワンの座についている頃だった。



 そこから私の人生は、再び逆転し始める。








 


























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