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本野汐梨 Honno Siori

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夏は終わりが早い

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 夏は終わるのがとても早いと思う。
特に高校に入学してからは、夏休みの間も最初の3週間ほど補講期間で実質学校に通っているのでとても短く感じてしまう。

 そして、今日は8月31日。本当に夏休みが終わる日となった。

あっという間に過ぎていく夏に焦りを感じながら、日々を過ごした。
 夏休みなんて人生であと何回来るんだろうか?

 僕は、どちらかと言うと夏休みの課題は溜めるタイプだ。そして、31日に涙目になりながら必死にやる。小学生の頃からそうだった。追い込まれないとやる気が起きない。そんなタイプなんだ。(きっとみんな共感してくれるはず…)
 しかし、今日は前々から出掛ける予定があったので昨日のうちに課題を終わらせた。こんな事、人生で初めてだ。


 早起きだけは得意な僕は、今日は6時に目覚めた。

 9時には家を出て、電車に乗り10時半には駅前のなんかよくわからない地元の偉人の銅像の前で先生と合流して出掛ける予定だ。どこに出掛けるかは決まっていない。先生は、しっかり者だけれど気分屋だからいつも行き当たりばったりで出掛ける。

 そういえば、先生とデートに行くのはいつぶりなんだろう?
そもそも顔を合わせるのはいつぶりだろうか?
 去年は、僕のクラスの副担任だった先生だけど今年は僕のクラスの授業の受け持ちさえないものだから同じ校内に居るはずなのに姿を見ない日が殆どになっていた。


 今日は一体どこに行くつもりだろう。


 
 先生と合流した。

 先生は、動物園に行きたいらしい。
いつもの僕ならこんなクソ暑い日に動物園なんて…と愚痴を吐いているだろう。僕は動物は嫌いじゃないが動物園は嫌いだ。檻の中の動物を見て楽しいか?臭くてたまらないし。
可愛くない僕は、いつもそんなことを思っている。


 でも、先生が居るとなると話が変わる。動物園が、いつもより誰と行くより輝く場所に思える。


 先生と合流して、すぐに先生の助手席に乗り込んだ。窮屈なユーノスロードスターは、エアコンが効きすぎている。普段は、古くてエアコンなんかないに等しいのに。エアコンの修理でもしたのだろうか?先生は、動物園に向けて1時間くらい車を走らせた。
 先生とたわいもない会話をしていたらあっという間に到着していた。
 目一杯、大人っぽい服を着た僕とTシャツにジーパンにリュックの超絶ラフな先生。これでなんとか釣り合っているだろうか?それともまだまだ?早く大人になりたい。


 動物園は、正直なところ対して大きくないので1時間半で回り終わった。しかも、夏休み最後の日なのにとても人が少なかった。猛暑だからかな?平日だからかな?
 今日のハイライトは、ふれあい広場で先生がヤギに追い回されていた事。本当に面白かった。いつもクールな先生がヤギに追い回されて、焦って派手に転んだ。僕は腹筋が裂けそうなくらい爆笑した。転んだ先生を助けに行くと「早く助けてよ…」と怒りの視線を向けられた。その表情が可愛くて、僕はまた笑った。

 僕は、汗がダラダラと滝のように流れたけれど、先生はとても涼しい顔をしていた。汗っかきの僕にはとても信じられないくらい汗をかいていない先生。(でも転んだのでジーパンの膝の自分がちょっと白くなっている。怪我はなかったようだ。)
 
 そして、またたわいもない話をしていたらお別れの場所に着いた。
 汗臭くないか気が気ではなかった。
 途中でコンビニに寄って車を停めたまま10分くらい喋っていた。先生の無意識にシフトノブを持つ手の上に自分の手を重ねた。ただでさえ暑いのに顔だけ以上に暑くなった。


 明日からは、また日常が戻る。
早く新学期になってほしくてたまらなかった。少しでも先生の近くにいたいから。

 帰ってお風呂に入って、ご飯を食べて明日の準備をした。今日の写真を見返しながら寝た。新学期は、もっと先生の顔を見られますように。そう念じながら僕は目を閉じて、やがて眠りについた。

 
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