隠し事にしようよ

本野汐梨 Honno Siori

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2学期【蓮也】

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 2学期が始まった。

 なんだかんだで夏休みの間、ずっと有希君は俺の家に泊まり続けていた。
 一緒に長い時間を過ごした。

 楽しい夏休みはあっという間に終わってしまった。

 気づいたら2学期が始まってしまったのだ。
 夏休みが終わっても、有希くんはうちに泊まっている。

 このままずっと、一生俺と同じ家に住み続けたらいいのに、と思う。


「夜ご飯何食べたい?」

 1学期と同じように、昼休みは一緒に生徒会室で過ごす。

「えっと。この前の親子丼、美味しかったのでまた食べたいです。」

「おっけー。じゃあ、俺買い物して帰るね。」

 朝コンビニで、買った弁当を食べながら夜ご飯の話をする。有希くんは、遠慮しておにぎりしか買っていない。

「僕、今日バイトなので遅くなります。あの、よかったら僕買い物してきます。3年生、来週初めに模試ですよね?」

「そうそう。来週模試があるにはあるんだけど。俺、推薦だし。あんまり関係ないかも。」

 でも確かに、一応模試もあるし。

「じゃあ、買い物お願い。俺ちょっと勉強してるね。」

「はい、19時までには帰るので。」

「わかった。じゃあ、お金渡しておく。放課後に買うものリスト書いて渡すね。」

「いつもありがとうございます。僕も、来週は給料が入るので…。」

 俺も別に自分で稼いだお金ではない。
 親からの仕送りと、仕送りを貯金していた分でやりくりしているだけで。

 2人ぐらいになったからって、生活費が2倍になった訳でもないし。

「このまま、父親が帰らなかったら生活が困るので。バイトを変えようと思うんです。」

「生活は困らないんじゃない?うちに居ればいいわけで。」

 有希くんは、ちょっと嬉しそうな、申し訳なさそうな不思議な表情をした。

 俺も、そんな顔をされてちょっとなんとも言えない気持ちになる。

「父親が帰ってくるまで、いつになるか分からないのに、ずっと居候していいんでしょうか。」

「いいよ。いて欲しい。」

 続けて「こっち見て」と声をかけた。
 上目遣いの目がこちらを覗いている。
 触れるだけのキスをしてみた。

 有希くんの顔が赤くなった。

 ずっと俺と一緒に居たらいいのに。
 俺なら、有希くんを大事にするし、苦労させない。ましてや、傷なんか作らせない。


「また、週末には家に帰ってみます。」

「うん、最近全然帰ってなかったもんね。」

 ちょっと、心配になった。これで、父親が帰っていたら…。
 有希くんが、自分の元から離れてしまうかもしれない。俺が、自分の家に泊まらせていた事を知ったら、有希くんの父親はなんて言うのだろうか。

 不安は週末が近くなるごとに、大きくなった。
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