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夏休みの過ごし方【蓮也】
しおりを挟む夏休み。
暑い日が続く。
有希くんは、うちに足繁く通ってくれた。と言うよりも、無理やり呼んで連れてきていた。
だって、携帯を持っていない有希くんとの連絡手段は無いし、そもそもこんな暑い中で放っておいたら、有希くんが熱中症とかになったら困る。
有希くんも、父親は彼女の家に泊まり続けており、もう1ヶ月半程帰宅して無いとのことだったので、安心してうちで過ごしていた。
かれこれ、有希くんは2週間ほど、うちで過ごしている。
その日も夕方から2人でダラダラと過ごしていた。
一応、2人とも課題をテーブルに広げているものの、あまり集中していない。
いや、有希くんは集中しているのかもしれないが、俺は有希くんの勉強する姿に釘付けで全然集中できない。
わからない問題を一生懸命、教科書を見ながら解こうとする姿にキュンとしています。なんて愛らしいのだろうか。
なんだかんだで、時間がどんどん過ぎていく。夏だからまだ、夕方でも明るい。
でも、12時前に昼食を食べてから水しか口にしていない。
「ね、そろそろお腹空かない?」
「ちょっと、空きました。」
夜ご飯にするには、早すぎる。
でも、この空腹には負けてしまう。
「何食べたい?」
「なんだろう…。」
有希くんは、食への執着が無い。
食べたいものを聞いても、ほとんど答えない。
「んー。とりあえずコンビニ行く?」
頬杖をついて、有希くんを見つめてみる。
数学の問題を解いていた彼は、顔がかなり疲れている。かなり苦戦していた様だ。頼ってくれたらいいのに。彼は、1人で頑張ろう頑張ろうと、いつももがいている。
目が合うと、にっこり笑って頷いた。
「んじゃ、行こ。」
財布と携帯だけ持って、玄関に向かう。
先に靴を履いた。
振り向くと、ピッタリ後ろに有希くんがくっついている。そのまま両手を広げて抱きしめてみた。
突然のことに驚いた様子で、体がピクリと動いたのを感じた。
「ごめん、びっくりした?」
「ちょっとびっくりしました…。」
とは言いつつ、腰に手を回して抱きしめ返してくれる。
「顔あげてみて。」
言われるがままに、顔をあげて目を合わせてくる。
今日はなんだかんだで、ずっと課題をしていたので有希くんに触れてなかった。
そっと唇に触れるだけのキスをした。
自然と顔が綻ぶ。
「ポテチと、夜ご飯買おうか?」
「そう、しましょっか。」
顔を赤くしたまま返事を返してくれる。
腕を解き、玄関からでる。
有希くんも後についてくる。
コンビニで、それぞれの夜ご飯のお弁当とポテチと、それから棒付きアイスを買った。
帰宅して、すぐにアイスを頬張った。同じアイスの風味違いを購入した。
暑いのに、くっついて座って食べた。
溶ける前に食べ切ろうと、ペロペロアイスを舐めている有希くんの姿を見ていると、有希くんのアイスが美味しそうに見えた。
「コーラ味も美味しそう。」
「よかったらどうぞ、と言うか、先輩のお金だし…。」
有希くんが食べかけのアイスを差し出してくる。
「じゃあ、ソーダ味もお裾分け。」
お互い食べかけのアイスを食べさせ合う。
なんて可愛らしいのだろうか。
有希くんの食べかけのアイス。
それだけで、何故かプレミア感があると言うかなんと言うか…。
「美味しすぎる。」
遠慮がちに俺が差し出したアイスをペロリと舐める。
その横顔がエロティックで。
急にムラムラしてきた。
アイスを食べた有希くんがこちらを見て微笑む。
「美味しすぎますね。本当に、ありがとうございます。いつもいつも。」
「俺がやりたくてやってるから。」
それが本音だから。
もう、有希くんに辛い思い、してほしくないから。
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