隠し事にしようよ

本野汐梨 Honno Siori

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2人でランチ【蓮也】

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 その日の朝。俺は、早起きして簡単なお弁当を作った。

 塩むすびに、卵焼き、ベーコンのアスパラ巻き、ミートボール、きんぴらごぼう…

 唐揚げを作る自信がなくて、冷凍の唐揚げを温めてひとつずつ入れてみた。

 喜んでもらえるかな?

 お弁当を作り終えた頃に、有希くんが起きてきた。

「おはよう。」

「おはようございます。」

「よく眠れた?」

「はい、いっぱい寝ました…。」

 目を擦りながら、「顔洗ってきます。」と言って、洗面所に向かったのを見計らって、お弁当はカバンに詰めた。

 食パンを焼いて、ジャムとバターを塗って、2人で食べで、2人で登校した。
 穏やかな朝だった。

 *******


 そわそわしていた。

 いつも、2人で昼食を食べる。
 有希くんにご飯をご馳走するのは、初めてではない。
 でも、こんなに手作りしたのは初めてで、なんだか緊張した。

 午前中は、あっという間に終わった。

 いつも通り、生徒会室に向かう。
 有希くんはまだ来ていない。

 生徒会室の窓を開ける。
 雲のない空が綺麗だった。

「外でピクニックしたら気持ちいいかなぁ~」

 心の底からそう思った。外の風が頬にあたるのが気持ち良い。

「ピクニックするんですか?」

 そう言いながら有希くんが入ってきた。

「外、気持ちいいから。」

 ちょっと一瞬びっくりしつつ、そう答えた。

「今日は、天気いいですもんね。」

「うん、外で食べる?」

「外で?」

 別に、校内だったら外で食べても校則違反にはならない。

 現に大会前の運動部は、グラウンドで昼食を摂って、そのまま部活の昼練をしたりする。

「裏庭のソテツの下で食べようよ。」

「あ、えっと。わかりました。」

 生徒会室を出て、裏庭に向かった。

 ソテツの下に、2人で座る。
 有希くんにお弁当を広げて見せる。

「作ってきたの。食べよ。」

「え。いつのまに…。」

 有希くんは黙って弁当を見つめていた。

「もしかして、手作りとか嫌だった?嫌いなものあった?」

 もしかすると、手作り弁当とか嫌だったのかと思って尋ねた。
 有希くんは、首をブンブン横に振った。


「蓮也先輩…。本当にありがとう。こんなの、初めてです。」

 可愛い可愛い、有希くんを、今後俺の養いたい。
 まるで子犬の様に甘やかしたい。
 何があっても大切に、守りたい。

「有希くん、あのね。」

「はい?」

「俺、有希くんとなら結婚して死ぬまで、一生一緒にいたいな。」

 まあるい瞳をもっと丸くして、「僕も、です…。」

 と、返事をしてくれた有希くんの顔。
 脳裏に焼き付いて、その後一生忘れることはない、そう思った。

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