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体育祭当日4【有希】
しおりを挟む久しぶりに過呼吸を起こしてしまった。
しかも、蓮也先輩の前で。
めんどくさいって思われたかな?
気持ち悪いとか、怖いって思われたかな?
僕は、蓮也先輩に嫌われていないか、もう会えないかもしれない、と1人で不安になっていた。
保健室の天井をぼんやり眺めていた。
外はかなり騒がしい。
声援や、ピストルの音がする。
蓮也先輩は、今何してるだろうか?
蓮也先輩の最後の体育祭なのに。
もっとちゃんと見たかったなぁ。
消毒の匂いがする。この独特の保健室の匂いが苦手だ。体が強くないから何度も保健室にはお世話になった事はある。
そして、その度に言われる。
「その傷どうしたの?」って。
保健室の先生はかなり傷に敏感だ。
僕がいじめられているもしくは、虐待されているのではないかと心配してくれる先生が多い。
その度に、嘘を付くのが辛いから、保健室は嫌いだ。
それに結局、助けてくれた人は今まで居なかった。
(なんか、保健室に居ると頭がおかしくなりそう…。早く蓮也先輩の顔が見たい…。)
保健室の天井をまっすぐ見つめていると、天井がどんどんこちらに迫ってくる様に感じた。怖い。
僕は、この世の何もかもが怖い。弱人間なんだ。
でもやがて、僕の意識は眠りへと誘われた。
気づけば、誰かに触れられていた。
僕の頭を撫でている、蓮也先輩が目に入る。
「有希くん、調子はどう?まだ具合悪い?」
「先輩…。もう平気。」
「よく眠ってたね。体育祭、終わったから一緒に帰ろうか。」
「うん。」
寝起きで声が掠れる。
ぼんやりする頭を持ち上げる。
「有希くんの荷物、持ってきたよ。今日はうちに泊まってね。」
ベッドを出て、個室に区切るカーテンを開ける。
「お世話になりました。」
僕は、保健室の先生に一言挨拶した。
「はい、お大事にね。ゆっくり休むのよ。」
優しい女性の声。
「先生、ありがとうございました。」
僕の後に蓮也先輩も保健室の先生に挨拶していた。
「有希くん、ごめんね。無理させて。」
ほんの数分の帰り道。
蓮也先輩は、始終申し訳なさそうにしていた。
「よくある事なので。気にしないでください。それに、先輩が居てくれて良かったです。」
「そう言って貰えると嬉しいよ。コンビニでご飯買って帰ろうか。」
途中、コンビニで今日の夜ご飯とデザートのシュークリーム、それと明日の朝ごはんのおにぎりを買ってくれた。
今日は、辛い苦しい時に、蓮也先輩が居てくれた。
帰りとちゃんと迎えにきてくれた。
嫌われてなくてホッとした。
蓮也先輩の優しさが沁みる。
帰るとすぐに、2人で一緒にシャワーを浴びた。
体をフワフワの泡で洗ってもらった。
それから、裸のまま、抱きしめられてキスをされた。肌と肌が触れ合う感触。こんなにも気持ちがいい。
シャワーを浴びて熱くなった体が、もっと熱くなった蓮也先輩に包まれる感触が気持ちが良かった。
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