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体育祭当日1 【有希】
しおりを挟む体育祭の朝。
僕は、早めに家を出た。
生徒会の仕事で当日の設営準備があるからだ。
準備といっても殆ど昨日のうちに終わってるので、今日は最終チェックと、機材の電源を入れたりするくらい。
学校には、もう蓮也先輩が到着していた。
蓮也先輩は、生徒会長なので選手宣誓をするらしい。
電源の入っていないマイクスタンドに向かってその練習をしていた。
僕を見つけると、選手宣誓の練習をしながらこちらに向かって手を振っている。
僕も振り返した。
「有希くんもリレー、頑張ろうね!!」
遠くから大きな響く声で呼びかけてくる。
周りに他の生徒会の人なんかもいるもんだから僕は恥ずかしくって小さく手を振りかえした。
荷物を置いて、ちょっとした撮影の手伝いをする。
体育祭の実況を任されている放送部の機材運びを手伝った。
何が何だか分からないので、放送部の3年生に言われたことを言われた通りにだけやった。
あっという間に時間が経って、いよいよ体育祭が始まる。
高校の体育祭は、小中学校に比べると簡易的なものだった。
行進で入場すると、短めの開会式が始まった。
開会式なんて興味ないけど、蓮也先輩の選手宣誓だけ食い入るように見た。
堂々と選手宣誓を行う先輩
それを見た女子の「生徒会長ってイケメンだね」なんて言葉にムッとしつつ、その通りだと思った。
でも、先輩は僕だけのもの…。
いつの間に欲深くなった自分に驚きつつ、開会式を終えた。
僕が参加するリレーは、午前中最後の種目。
それまで僕は、テントの中のパイプ椅子に座っていた。
時々、グラウンドの蓮也先輩が見える。
結構いろんな種目に出場しているみたい。
人気の生徒会長だもんな、と先輩が遠くに感じた。
僕は、必死に蓮也先輩のかっこいい体操着姿を目に焼き付けた。
携帯があったら写真撮れるのに。
あいにく、僕には携帯なんて文明の力の持ち合わせがなかった。
リレーの練習、もうできないのか。
リレーなんて嫌で仕方なかったけど。
蓮也先輩とのひと時、楽しかったな。
やがて、リレーの練習とバイト、家の家事に追われていた僕を眠気が襲った。
*****
時間がどのくらい経ったのか。
「有希くん、もう出番だよ。起きて。」
どこからか優しい蓮也先輩の声。
ハッとする僕。
パイプ椅子に座ったまま寝ていたみたい。
「目が覚めたかな?」
「あ、寝てました…。」
「あのね、もう整列の時間だから、迎えにきたよ。一緒に行こう。」
「あ、行きます!」
もうそんな時間だったのか。
慌てて僕は、座っていたパイプ椅子から立ち上がった。
蓮也先輩に連れられて、リレーの集合場所に向かって整列する。
もちろん、蓮也先輩の後ろに並んだ。蓮也先輩の大きな背中が目の前にあるだけで安心する。
抱きついてしまいたい。
「有希くん、頑張ろうね。」
振り向いて声をかけてくれる先輩の優しさに心がムズムズした。
「僕、頑張ります。」
そして、とうとうリレーが始まった。
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