43 / 66
体育祭練習2【有希】
しおりを挟む
やがて、放課後になった。
「蓮也先輩…。本当に、僕、足が遅いんです。」
僕は、不安を蓮也先輩にぶつける。
走行順で校庭の真ん中に僕たちは並んだ。
1番走者だけがスタート位置についている。
ついにリレーの練習が始まったのだ。
初練習だが、本番まで時間がないので少しピリついた雰囲気だ。
「大丈夫。俺も実はそんなに早くない。野球部だったし。」
「え?本当ですか?野球部って足早そうだけど…。でも、2回走るんですよね?」
「うん…。俺、ほんとは走るの苦手。実は、ちょっと失敗したかなって思ってるよ。普通に陸上部現役の2年生とかに頼めばよかった。」
蓮也先輩が僕から目を逸らした。
「え…。」
「それに、生徒会がリレーをする事で体育祭を盛り上げることが目的だから、勝つことはそんなに重要じゃない。」
「えっと…。じゃあ、何が重要ですか?」
「有希くんと走った記憶を作ること。」
遠くを見つめる先輩は、どこか寂しそうだ。
「記憶…。ですか…。」
「そう。だって、もうそのうち、卒業だし。こうやって、学校で有希くんと会えなくなる。」
「そ、うですね。」
そうだ。2個違いの先輩と僕はもう数ヶ月後には、お別れの時が来てしまう。
今まで、この事を考えていなかったわけでは無い。
でも、なんだか実感が湧かなくて、この問題から僕は逃げ続けていた。
だって、蓮也先輩が居ない世界でどうやって生きていけばいい?
先輩がそばにしていくれるから、今生きてるだけ。もしも、離れ離れになってしまったら…。
僕は、もう生きていく事をやめるだろう。
「せんぱい…」
「ん?どうしたの?」
僕の覇気の無い小さなことでも蓮也先輩は聞き取ってくれる。
「ずっと一緒にいる事ってできないですか?」
僕の願望。
そして、ワガママ。
「あのね。有希くん。」
小さい子供に話しかけるような優しい声。
「俺が、卒業して、大学に入って、そしたら、一緒に暮らそう。」
「え…??」
唐突な話に僕は困惑した。
「最近、有希くんが辛く無い人生を送る為の方法を考えてたんだよね。それで、思いついたの。俺が一生懸命、有希くんの事を幸せにするから、俺と一緒に暮らして欲しいなって。ずっと一緒の人生を送りたいなって。」
僕は、先輩を見上げた。
自然に視線が絡み合う。
「有希くん、俺と一生、一緒に居てね。」
僕は、溢れる涙を必死に堪えながら頷いた。
「でもね、学生時代の思い出って今しか作れないでしょ。だから、楽しい思い出、作ろうね。」
太陽に照らされた蓮也先輩の笑顔が眩しい。
「さて、もう俺の番だ。」
そう言って、蓮也先輩がスタート位置に着く。
僕も、蓮也先輩の為に頑張らねば。
先輩の嬉しい告白が、僕に勇気をくれた。
なんだか、体育祭が、そしてこれからの未来が楽しみになってきた気がした。
「蓮也先輩…。本当に、僕、足が遅いんです。」
僕は、不安を蓮也先輩にぶつける。
走行順で校庭の真ん中に僕たちは並んだ。
1番走者だけがスタート位置についている。
ついにリレーの練習が始まったのだ。
初練習だが、本番まで時間がないので少しピリついた雰囲気だ。
「大丈夫。俺も実はそんなに早くない。野球部だったし。」
「え?本当ですか?野球部って足早そうだけど…。でも、2回走るんですよね?」
「うん…。俺、ほんとは走るの苦手。実は、ちょっと失敗したかなって思ってるよ。普通に陸上部現役の2年生とかに頼めばよかった。」
蓮也先輩が僕から目を逸らした。
「え…。」
「それに、生徒会がリレーをする事で体育祭を盛り上げることが目的だから、勝つことはそんなに重要じゃない。」
「えっと…。じゃあ、何が重要ですか?」
「有希くんと走った記憶を作ること。」
遠くを見つめる先輩は、どこか寂しそうだ。
「記憶…。ですか…。」
「そう。だって、もうそのうち、卒業だし。こうやって、学校で有希くんと会えなくなる。」
「そ、うですね。」
そうだ。2個違いの先輩と僕はもう数ヶ月後には、お別れの時が来てしまう。
今まで、この事を考えていなかったわけでは無い。
でも、なんだか実感が湧かなくて、この問題から僕は逃げ続けていた。
だって、蓮也先輩が居ない世界でどうやって生きていけばいい?
先輩がそばにしていくれるから、今生きてるだけ。もしも、離れ離れになってしまったら…。
僕は、もう生きていく事をやめるだろう。
「せんぱい…」
「ん?どうしたの?」
僕の覇気の無い小さなことでも蓮也先輩は聞き取ってくれる。
「ずっと一緒にいる事ってできないですか?」
僕の願望。
そして、ワガママ。
「あのね。有希くん。」
小さい子供に話しかけるような優しい声。
「俺が、卒業して、大学に入って、そしたら、一緒に暮らそう。」
「え…??」
唐突な話に僕は困惑した。
「最近、有希くんが辛く無い人生を送る為の方法を考えてたんだよね。それで、思いついたの。俺が一生懸命、有希くんの事を幸せにするから、俺と一緒に暮らして欲しいなって。ずっと一緒の人生を送りたいなって。」
僕は、先輩を見上げた。
自然に視線が絡み合う。
「有希くん、俺と一生、一緒に居てね。」
僕は、溢れる涙を必死に堪えながら頷いた。
「でもね、学生時代の思い出って今しか作れないでしょ。だから、楽しい思い出、作ろうね。」
太陽に照らされた蓮也先輩の笑顔が眩しい。
「さて、もう俺の番だ。」
そう言って、蓮也先輩がスタート位置に着く。
僕も、蓮也先輩の為に頑張らねば。
先輩の嬉しい告白が、僕に勇気をくれた。
なんだか、体育祭が、そしてこれからの未来が楽しみになってきた気がした。
1
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
私の事を調べないで!
さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と
桜華の白龍としての姿をもつ
咲夜 バレないように過ごすが
転校生が来てから騒がしくなり
みんなが私の事を調べだして…
表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓
https://picrew.me/image_maker/625951

傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい
椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。
その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。
婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!!
婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。
攻めズ
ノーマルなクール王子
ドMぶりっ子
ドS従者
×
Sムーブに悩むツッコミぼっち受け
作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる