隠し事にしようよ

本野汐梨 Honno Siori

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我慢[蓮也]

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 俺は、我慢強い。


 今日はもう、これ以上手を出さない。

 そう決めて、さっさとお風呂を済ませる。

 一瞬のシャワーだったのに、のぼせてしまった。


(有希くんが可愛すぎて…。)


 お腹いっぱいで、満足げな顔をした有希くんの顔が頭から離れない。


 お互いの体を洗いっこした。
 有希くんの体を洗っている間も、洗ってもらう間も、ずっと顔がニヤけていたと思う。

 有希くんに変な奴って思われてなきゃいいけど。


「有希くん、背中拭いてくれる?」


 ぼんやりしている有希くんに甘えてみる。
 多分、顔が赤くなってる。
 今、この顔を見られるのは恥ずかしい。


 有希くんは、素直に背中を拭いてくれる。
 背の低い有希くんが、吹きやすいようにちょっと背を縮めた。


 タオルで撫でるように優しく背中を拭いてくれる。

「もう、いいよ…。」

 丁寧に何度も拭いてくれるのはいいけど、それすらなんだかエッチな気がしてきた。
 変な気を起こしてしまう前に、有希くんの手を制した。

「もういいんですか?」

「うん…。」


 手早く着替えて、有希くんにも自分の適当な服を着せる。
 小柄な彼にはサイズが大きすぎるらしい。
 ダボダボの服を着た姿がまた可愛くって仕方がなかった。

 思わず抱きしめる。

 そのまま持ち上げて、有希くんをベッドまで連れて行った。


「あの…。僕、帰らなきゃ…。」

 申し訳なさそうに言う有希くんの顔をみて、我を取り戻した。

「そうか…。もう遅いもんね。」


 有希くんは、俺の腕からスルリと抜け出して、自分の荷物をまとめて部屋を後にした。

 なんだか急に孤独になった。
 心がギュッと締め付けられて寂しくてたまらなくなった。
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