隠し事にしようよ

本野汐梨 Honno Siori

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次のイベントは?[有希]

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 初めて、こんなに気持ちいい行為をした。


 本当は全く痛くない訳じゃない。

 でも、愛情が伝わってくる。

 先輩はまだ、名残惜しいのか、また家に誘われてしまった。

 後から父親に勘付かれるのが怖かったけど、今更、戻りたいなんて言えない。
 もし、父親の何かされたら…。
 幸せの代償だからそれも仕方ない。
 もういっその事、死んでしまいたい…。




 結局僕は、蓮也先輩の家にシャワーだけ浴びに行くことになった。


 荷物を取りに行くために、解散して再び校門で落ち合うことになった。


 シャワーだけ、シャワーだけ、念じる。
 本当はずっと一緒に居たいけれど。

 僕は、駆け足で教室に向かい、荷物を取ると校門に向かった。

 あれだけ急いだはずなのに!

 蓮也先輩は、もう既に校門で待っていた。

 そして、誰か男の人と話している。
 あれは、先輩の友達だろうか。

「有希くん!」

 僕に気が付いた蓮也先輩が、こちらに手を振っている。

 僕はちょっと恥ずかしい。

 だって、さっきまであんな事してたんだ。
それも学校の中で。


「すみません、遅くなりました。」

「そんなことないよ、んじゃ、帰ろ。」

「へー、川中って、1年と仲良いんだな。」

「まあ、生徒会の子なんだ。」

「ふーん。確かに真面目そう…。川中とは大違い。」

「俺もめっちゃ真面目だから。」

 ふざけて笑い合う2人。
 僕はちょっと気まずい。

 でも、さっと話を切り上げて、僕を連れて蓮也先輩は歩き出した。


 蓮也先輩の住むアパートまでほんの数分。


 2人でくっついて歩く。

「有希くんは、体育祭何に出るの?」

「体育祭…、ですか?」

「うん、来月体育祭だよ。」

「え?6月にあるんですか?」

「そー。もう応援団は決まって練習してるでしょ?俺らはとりあえず、生徒会役員でリレーするじゃん。あとは、何するの?」


(そう言えば…。応援団決めとかやったなぁ。体育祭の話し合いがクラスであったにはあったけど、あれって10月くらいの話かと思ってた。来月の話だったんだ。)

「応援団、ではないです。」

「だろーね。柄じゃないし、応援団ならこんなに暇じゃない。今頃、練習で俺となんか一緒にいられないもん。」


「競技はまだ決まってないです。と言うか、生徒会はリレーするんですか?」


「うん。部活動対抗リレーでね。生徒会役員枠があるの。15人で走らなきゃ。」


「15人!?多くないですか…?そんなに生徒会って人数いましたっけ?」

「いないよ。だから、ひとり2回くらい走る。」

「僕、あんまり走るの早くないし、人前に出るのはちょっと…。あと、生徒会って7人しかいない…。」

「バレたか。ひとり2回走っても一周足りないんだよね。」

「はい。僕、一番年下で生意気いって申し訳ないんですが、グラウンド3周なんて絶対走れないです。」

 僕は、絶対に走りたくない。
 一周たりとも走りたくない。

「でも、生徒会でリレーに出れば、他の競技には出なくっていいんだよ?」

 僕が全力拒否するのを察して先輩が引き止める。

(本当は、体育祭の日は休むつもりなんだよな。)

 僕は、中学の頃から体育祭と文化祭、遠足、修学旅行などの行事ごとは全て欠席してきた。

 今更、体育祭に出るなんて考えられない。

「ね?有希くん、体育祭、来てくれるよね?」

 蓮也先輩が圧強めに尋ねてくる。

 大好きな蓮也先輩には逆らえない。

 でも、体育祭なんか出たくな…。
 体育祭は、出たくない。
 運動苦手だし、人がたくさん集まるのは困る。

「ちょっと考えさせてください。」

 僕は、”いやです”と喉まで出かかっていたが、なんとか堪えて、応えた。

 蓮也先輩は、ちょっと悲しそうな顔になった。

 蓮也先輩に申し訳ない。

「考えてはくれるんだもんね?」

「はい…。」


 体育祭の話をしているとすぐに、先輩の家が見えてきた。

 一旦は、体育祭の話から逃げ切れそうだ。
そう思ってホッとしてしまった。

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