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生徒総会[有希]
しおりを挟む午前中の授業を終えた。
昼休みを挟んでいよいよ生徒総会だ。
体育館に全校生徒が集まって、事前に準備している議題は10個。そのことについて、一議題に対して10分間話し合うとの事。トータル120分の予定。ちょっと無茶なスケジュールのような気がする。
先輩は忙しいだろうけれど、僕は昨日のうちに打ち合わせは終わっているので、今日は準備することはない。
特に僕は単なる書記係なので、本番でも体育館の端っこに座ってメモを適当に取ればいい。
なんなら、録音もしているので、焦って全部メモすることはないらしい。
誰かがチェックを入れるわけではないし、後から書き直しもするから、要点をまとめとけばそれでいいよって先輩には言われている。どうやら、形だけ、文書を残すと言う事らしい。
人前に出ることもなく、ただ座っておくだけなんてとっても楽な仕事だ。
これで給料がもらえたらいいのに、なんてケチくさいことを考えていた。
午前中の授業の後、一旦、昼休みを挟んで、全校生徒は生徒総会に参加するために大移動を始めた。
僕もその波に乗って途中まで歩いた。
僕は、記録用のノートを生徒会室に取りに行かなくてはいけない。
駆け足で生徒会室に向かう。
生徒会室の扉の窓から、先輩が生徒会室に座っているのが見えた。
なんかノートに書いてるみたい。あれが書記のノート?
一応、ノックしてみる。
先輩がすぐに顔を上げた。僕と目があってすぐに先輩の口角が上がった。
少し、昨日のことを思い出して、顔が熱くなる。
「山田くん、ノート取りにきたんでしょ?」
「はい、そうです。取りにきました。」
僕も先輩に釣られて、笑顔になっていると思う。
「ここにあるよ。」
先輩は、『生徒総会』とデカデカと書かれたノートを手渡してくれた。
先輩はどうやら数学の勉強をしていたようだった。きっと、昨日僕と遊んでいたから、今日はずっと勉強していたんだろうと思った。
「山田くん、そこに座ってくれる?」
先輩は床を指さして言う。
床?とは思いつつ、僕は言われるがまま体育座りで座った。
両手を広げた先輩が僕に覆い被さってくる。
フワッと優しく抱きしめてくれた。
「生徒総会、頑張ろうね。」
耳元で囁かれる。
「頑張りましょうね。」
先輩の腕の力が強くなった。
僕も負けじと腕に力を込めた。
「山田くん、またうちに来てくれる?」
「もちろんですよ。本当は毎日でも行きたいです。」
「山田くん、大好き。」
「僕も大好きです。」
多分、3分くらい抱き合っていたと思う。
暖かい、先輩の腕に包まれて心臓はバクバクしているのに、安心する。寝てしまいた、このまま、昨日のように。
「いい加減、体育館に向かわなきゃね。」
「そうですよ。生徒会長がいないと話になりません。」
先輩に手を引かれて立ち上がった。
先輩の手、今日も暖かい…。
自然な流れで、僕と先輩は一緒に体育館に向かった。
僕は、書紀だから教室の隅っこに用意された机にスタンバイ。
もちろん、先輩は体育館の真ん中で会を取り仕切る。
マイクを持って堂々と、会を進める先輩の姿を見ると顔がにやけるのが、自分でもわかった。
目の前のノートに全く集中できない。
一応、これにちゃんと記録しなきゃいけないのに…。
先輩に見惚れてばっかりで、筆が進まない。
先輩。
大好きな先輩。
ああ、何てかっこいい立ち姿なんだろう。
よく通る声も、頭の回転が速いのも全て素敵だ。
僕はもちろん先輩にウットリ見惚れているが、何人かの女子も見惚れているのがわかる。
先輩を見ていると、ちょいちょい頭をよぎることがあった。
もちろん、昨日の夜のこと…。
先輩の体温…。
今の先輩は、ハキハキしてて、昨日の優しい雰囲気とはちょっと違う。
先輩のギャップにドキドキした。
次は、いつ先輩と一緒に眠れるかな?
今日は、金曜の夜だから必ず父は帰ってくる。
多分、昨日の夜居なかったから説教されると思う。
その代わり、多分、土曜と日曜の夜は多分、先輩と一緒に居られる。もちろん先輩の都合次第だけど…。
頭の中、先輩の事でいっぱいになっている。
2時間なんて本当にあっという間で、生徒総会は終わってしまった。
僕は、生まれて初めて、学校の行事が楽しかった。
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