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登校2【有希】
しおりを挟む先輩と僕は、並んで歩く。
低身長短足の僕に、多分先輩は歩幅を合わせてくれている。
だって、普段の先輩はキビキビ歩くのを知っている。
でも、僕の側を歩くときだけ、ゆっくり歩いてくれる。歩幅を合わせてくれる優しさに、胸がギュッとして熱くなった。
2人で登校するなんて、周りのみんなにどう思われているんだろうか。
人気者の先輩と、それとは真反対の僕。
属性が絶対に違う、生きる道が違う。相容れない様な存在同士。
先輩は、学校が近づくにつれて、周りの友達と思もわしき人達に「おはよう!」と声を掛けたり、掛けられたりしていた。
中には、女子がいてちょっと嫉妬したけど。
今、先輩の横を歩いているのは僕だ、と言い聞かせた。嫉妬する心を抑えて我慢していた。
先輩の笑顔が眩しすぎる…。
中には、生徒会役員の人たちもちょこちょこいるので、僕も一応挨拶して頭を下げた。
僕たちが、校門から学校の敷地内に入ろうとすると、「珍しい組み合わせだなぁ。1年か?」と僕は知らないガタイの良い男性教員に、先輩が話しかけられていた。
それに対して、「そうなんです、可愛い後輩ですよ~。生徒会に入ってくれたんです!」と嬉しそうに答えていた。
僕は、『可愛い』とか言われてちょっと嬉しくなっていた。
ガタイの良い男性教員は、「1年か?頑張れよ!」と、その体の大きさにぴったりな大きな声を出しながら、僕の肩をポンっと叩いた。
相変わらずコミュ症の僕は、「はい、頑張ります」と今出せる精一杯の声で返事をした。
2人で校門をくぐり、靴箱のある場所へ歩いて行く。
先輩は、「さっきのは、3年担当の数学の金田先生。ちょっとうるさいけど、すごく良い人だから。」とさっきのガタイの良い教員の説明をしてくれた。
「そうなんですね。てっきり、体育教師かと思いました。」
それは、僕の心の底からの感想だった。
あんなにデッカい数学教師がいるなんて。
数学教師なんて、みんなヒョロくて、ネチネチこうるさくて、それからメガネのイメージだ。
「鍛えてるらしいよ。野球部の副顧問もしてたんだよね。」
「そうだったんですね。だから、先輩と仲良かったんですね。」
あの教師は、僕の知らない先輩をたくさん知っているんだろうと思うと、ちょっと嫉妬した。
僕は、野球部だった先輩のことを知らないから。
嫉妬なんて感情、今まで持った事なかった。今は、すべての感情が全部先輩のせい。
ザクっ、ザクッと、2人で砂を踏み締めて歩く。
あっという間に靴箱にたどり着いた。
先輩のアパートを出る時は、結構遅刻ギリギリかもしれないと焦りも若干あったけれど、ほんの数分で到着した。
3年と、1年の靴箱は、同じ建物内だけど、別の場所にある。
僕は先輩に「また、あとで。」と声をかけて、立ち去ろうとした。
本当は、もっとちゃんと昨晩からのお礼をしたかったけれど、上手く話せなかった。
先輩は、「ちょっと待ってて、教室まで着いて行く!」と、焦っていた。
結局、動きの素早い先輩は、僕について来た。
「ちょっとでも離れたくない。」そう言ってくれた。
僕は、嬉しくって、顔が赤くなった。
「先輩、僕もずっと一緒に居たい。」
隣を歩く先輩にだけ聞こえる声量で話しかけた。
先輩は、優しい目で僕を見下ろして嬉しそうに微笑んだ。
僕の教室に辿り着くと、「生徒会がんばろうね!」と送り出してくれた。
そうだ、今日はいよいよ生徒会だ。
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