隠し事にしようよ

本野汐梨 Honno Siori

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生徒総会の前には[有希]

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 生徒総会は、いよいよ明日になった。


 あれ以降、先輩と少しだけ話す機会があった。
 先輩は、離島の出身だから近くのアパートに一人暮らしらしい。

 高校生で一人暮らしなんて、なんて贅沢なんだろう!
 僕は、羨ましくて仕方がなかった。
 
 父親から離れたいのに離れられない僕からしたら、極楽浄土に先輩は居るみたいに見えた。

 それから、先輩は元野球部らしい。高身長と色白の肌、端正な顔立ちと明るい性格から、なんとなくバスケ部とかかなって思っていたから意外だった。
 でも、肩を怪我して2年生の時に退部したそう。

 悲しそうな目で、野球部時代の話をしてくれた先輩の姿にときめいてしまった。
 いつからこんな自分になっていたのだろうか?


 先輩とは、たくさんお話をした。
 先輩はとても優しい人だと言うことがよくわかった。

 いつも元気がない僕のことを心配してくれた。元気になるように遊びに誘ってくれたこともあった。勇気がないから断ってしまったけれど。



 初めの頃は、生徒会に入らないといけないなんて、そんな地獄に耐えられるのかと心配していた。


 それがまさか、こんなに幸せな時間を過ごせるなんて…。



 生徒総会の前の打ち合わせなんかに呼ばれる度に、先輩に会えるって思うと胸が高鳴った。自分らしくないと思った。

 そんな日々も終わってしまう。

 これから、先輩と一緒に居られる時間は少なくなっていくんだろうな。
 そもそも、先輩は先に卒業してしまうわけだし。




 放課後になり、僕は生徒会室に向かった。
 明日の準備のためだ。

 明日の段取りを生徒会長から生徒会役員達に説明されるらしい。

 僕は、早く先輩に会いたくって足早に生徒会室に向かった。

 生徒会室のドアを開けると、まだ先輩しかきてなかった。

「お疲れ!」

 元気のいい挨拶をしてくれる。本当は、後輩の僕から挨拶するべきなのに…

「突然なんだけど、今日うちに泊まりにこない?」

 本当に、唐突すぎてびっくりしてしまった。まだ僕は挨拶も返していない。

 いつもなら、頭がこんがらがりそうだけど僕の本能は僕よりしっかりしていたみたい。

 こくり、と頷いた。それを見た先輩が優しく微笑んでくれた。

 先輩の家に行くなんて、夢か?

 僕の頭の中はいつも先輩でいっぱいだから、夢かもしれない、先輩が好きすぎて妄想とか幻聴かもしれない、と思った。




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