隠し事にしようよ

本野汐梨 Honno Siori

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孤独[有希]

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 僕は友達がいない。

 それは、小学校の頃から変わりなかった。

 僕は、人間との関わりが不得意だ。

 そもそも、人と話す機会が少なかったので、何を話していいか分からなかった。


 記憶をいくら遡っても母親の記憶は無い。
 いや、たまに、ほんのり思い出す。

 どうして母親が家にいないのか僕は知らない。
 父親もあんまり家にいない。

 仕事が忙しいというわけでは無いようだが、パチンコと競馬は忙しいから家にあまりいない。

 3日に1回くらいは帰ってきて、僕を性欲の捌け口として扱う。それは、中学入学くらいから始まった。ほんの少し前までランドセルを背負って歩いていたくらい幼かった僕の口にペニスを咥えさせて何度も射精していた。元々よく殴られたり首を絞められたりしていたけど、そこまで激しい苦しみはなかったと思う。そこからどんどん父親の行動はエスカレートしていった。


 僕は、今も保育園に通っていた頃から変わらない。ある意味父の行動も。
 小さい頃の僕の特技はお留守番だった。そして、今は我慢が得意になった。我慢強いのは、僕の唯一の長所だと思う。



 愛されずに育ったことを悲観することもあるけれど、死にたいこともあるけれど、僕は頑張って生きていかなければ。

 僕は生きていくために、自転車でチラシのポスティングのアルバイトを始めた。曜日は決まっているけど、何時にしなければならないとか決まってない、時給ではなく出来高制だった。


僕は、アルバイトが忙しいので、生徒会に出席できないことも多かった。


 本当は、生徒会に出席しなければならない日もあったけれど、担任に事情を話して、4月の生徒会には一度も出席していなかった。顔合わせとかが多いから、部活で出席しない人も結構いるらしい。
 それに僕的には、人間と会話を減らすこともできてラッキーだったし。


 

 でも、いつまでも出席せずにいられるはずはなかった。

 気がつくと5月に入ってしまった。ゴールデンウィークが終わってアルバイトは減った。ゴールデンウィーク後はイベントが減って、今までイベント告知で配っていたチラシが無くなったのだろう。
月、木、土、日の週4日になった。一回2時間程度の出勤。

 生徒会は、毎週金曜日にあるらしいので両立できてしまう事になった。良いのか悪いのか…。


 それに、5月の末日に生徒総会が開催されるとのことで、僕たちは準備を行わなければならないらしい。担任にそのことを聞いたとき、気分が沈んだ。「死にたい」って思ってしまった。本当に死にたいわけでは無いのだけれど、考え方の癖で、嫌なことがあると死にたくなってしまう。




 5月の第一週、金曜日。連休が開けて、すぐに生徒会の集まりがあった。


 事前に、担任から話を聞いていた。今日は、生徒総会での役割分担を決めるそうだ。
 僕は、何もしたく無いけれど、断れない性格なのでそう簡単にはいかないんだろうな。


 放課後、重い足取りで生徒会室に向かう。


 思い引き戸を開ける。

 生徒会室には、まだ1人しか来ていなかった。
 
 その人物は、座っていてもわかるくらいの高身長で、いろんなことに疎い僕でも、きっと優しくて頭が良くって人気者だから生徒会に所属したんだろうってわかった。

 色白で、まつ毛が長くて、鼻筋が通っていた。
 イケメンってやつ。僕は、その人の顔をじっと見つめてしまっていた。

 僕があんまりじっと見てるから、その人物も僕のことを見ていた。

 必然的に、目があった。心臓がバクバクしていた。

 僕は、この感情は性欲の一部だって知っていた。汚い感情だって知っていた。




 「突っ立ってないで、そこに座りなよ。一年生だよね?」


 よく通る声で話しかけられた時、やっと僕は意識を取り戻したのだった。
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