隠し事にしようよ

本野汐梨 Honno Siori

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入学式[有希]

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 僕は、山田 有希やまだ ゆうき
 今日から、高校生になるだけの人間。
 家から一番近かった普通科の共学高校に入学した。

 特に、やりたい事も無ければ、できる事も無い僕は親の勧めに従うしかなかった。
 特別偏差値が高いわけではない、自称進学校ってやつ。

 早速クラス発表。すぐに、人混みに紛れて掲示を覗く。
 家から近い高校ということもあって、同じ中学だった人たちの名前も多々見受けられた。
 しかし、僕は引っ込み思案なので、友達がいなかった中学時代を送っていたため、知ってた名前があったからといって、関係ない。


 入学式は、ぼんやりしていたら終わっていた。

 続いては、クラスの顔合わせ。ついでに、クラスの係や委員会、生徒会のメンバーをクラスから出さないといけないので、話し合いをするらしい。

 こういのって、なかなか決まらないよね。案の定、僕らのクラスもなかなか決まらなかった。

 委員会なんかは、ひとまず1学期のみの役だということで、あっさり決まったけれど、生徒会は一年間の役ということで、なかなかやりたがる人がいないので、決まらずにいた。

 そこで、担任の女性教員が「推薦したい人とかいないですか?やってくれそうな人を候補にあげてもらっても良いです。」と訳の分からないことを言い始めた。

 もちろん、そんなことを言われたって、仲間を売るようなことする人なんてそうそう居ないに決まっている。

 しかし、このクラスは違った。


 「山田くんなら、やってくれるんじゃないでしょうか?中学の時も、同じシチュエーションで、生徒会を引き受けてくれましたよ。」

 1人の女子が、僕を指さして言った。僕には関係のないことだと勝手に考えて高みの見物気分だったので、急に名前を呼ばれて驚く。その女子には見覚えがある。実際に知ってる。中学の3年間同じクラスだった人だ。関わったことないけれど。女子の突然の声に反応した担任の女性教員が、僕を見た。
 

 まさか…


 「山田くん、ぜひお願いできますか?」


 突然のことに、僕は反応ができなかった。
 
 いや、断ったらクラスの空気が悪くなるかもしれないとか、この不毛な時間が永遠に続くかもしれない、みんなに嫌われるかもしれない、迷惑をかける事になるかもしれない…

 いろんな考えが僕の頭を一気によぎった。



 僕は、生徒会になることを肯定した。
 「やります。」
 小さな声で、そういうことしかできなかった。



 でも、この最悪の地獄のような出来事が、僕の人生を一転させることになるのだった。
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