短い怖い話 （怖い話、ホラー、短編集）

女の持っていたもの

　街中で飲んだ帰り。
　飲み屋が立ち並ぶ通りを、抜けて裏通りに出た。

　こちらもチラホラ飲み屋はあるけど、表の通りに比べたら静かだ。

　俺は、ここから家が近いので飲み仲間と解散して1人、歩いて帰っていた。


　俺と同じく飲み帰りの人々がチラホラ歩いている中に、女性が歩道の真ん中に1人座り込んでいた。


　長い髪で顔付近は見えないが、裸足で足は汚れているのが飲み屋の明かりで見えた。

　酔っ払いか？と思いつつ、ほんの少しだけ覗き込むと、何かをブツブツと言っているのが聞こえる。

　それに、白い大きめのバスタオルみたいなのをクルクル巻いてあるのを大事に胸に抱えている。

「りょうちゃん、りょうちゃん、かわいいりょうちゃん」

　女性は、バスタオルを、まるで赤ん坊の頭を撫でる様に触りながら、そう、呟いていた。