短い怖い話 （怖い話、ホラー、短編集）

蛹

　小学生の頃、学校の門の前に植えてあるプランターの花についていた、蝶の蛹を持ち帰った。


　虫籠に蛹を入れて飼っていた。


　1週間半くらい経つと、蛹の背中に亀裂が入った。


　僕はワクワクした。


　その日はたまたま学校が休みだったから蛹を見て過ごすことにした。


　虫籠から蛹を取り出して、ノートを破った白い紙の上に蛹を乗せた。


　少しずつ、背中の亀裂が大きくなる。


　ちょっとずつちょっとずつ、蛹の中身が外に露わになり始めた。



　薄茶色に緑が混じった様な液体が滲み出ている。見た感じヌルヌルしていた。

　触ったみたい衝動に駆られたが、今刺激を与えると死んでしまうかもしれないと思い、止まった。


　やがて、ヌルヌルの液体と共に肌色の肌が見えてきて、一気に両手両足が出てきた。


（…ニンゲン？）

　蛹から8センチくらいの小さい人間型の何かが出てきた。


　人間だと認識した時、あまりの気持ち悪さにヒィっと変な声をあげてしまった。


　その小さな人間は、ヌルヌルの液体に絡まれていて、うまく動けないのか手足をバタバタさせた。

　気持ちが悪くなった僕は、ティッシュでその人間を包んだ。



　そして…。





　ブチッ






　潰した。



　赤い液体がティッシュに滲んでダラダラと床に溢れた。


　慌ててティッシュを足した。



　そして家の裏の竹林に捨てた。




　潰した瞬間の「アギゃぁぁぁぁぁぁっ」と言う耳をつんざく叫び声が未だに忘れられない。